新しい平和学にむけた学際的研究拠点の形成:ポスト紛争地域における和解志向ガバナンスと持続可能な平和構築の研究 | 学問分野を越えて「持続可能な平和を創る」という課題に向き合う。

21世紀の「内戦型」紛争を解決に導く統合型のアプローチ

アフリカ各国で続発する内戦、中東の国々の国家破綻、アジア各国で繰り広げられる分離独立運動、中南米で恒常化する反政府武装勢力の活動…。21世紀に入った現代でも、世界各地で武力紛争は後を絶ちません。その多くは「内戦型」と呼ばれる紛争です。従来のように政治やイデオロギーの対立を直接の原因とする紛争だけではなく、宗教や民族の違い、植民地経験などの歴史的要因、グローバル化に伴う兵器拡散や社会格差と貧困の深刻化、さらには資源の枯渇や環境問題など、さまざまな要因が複合的に絡み合った現代の紛争があります。

紛争を解決し、持続可能な平和の構築を導くためには、紛争地特有の社会・生態に則した治安政策と社会経済開発を有機的に進め、さらにはそこに住む人々が主体となって国づくりを進めていくプロセスが不可欠です。こうした課題に対し、国際関係学や平和学、開発経済学、政治学といった単独の学問領域だけでは、もはや効果的な政策的知見を導き出すことはできません。政治、経済、文化、民族、環境など多様な学問領域の英知を結集し、総合的にアプローチすることが求められています。

多様な学術分野が結集し実践可能な平和構築のモデルをつくる

本プロジェクトでは、現代の紛争の背後にある諸問題の複合関係を分析して各地域の特性に適した平和構築のあり方を探り、実践に適応可能なモデルに結晶させること、さらにはそれを「新しい平和学」というパラダイムに発展させることを目標としています。世界各地のポスト紛争国を対象に政治、社会・文化、経済、開発、宗教、環境、ジェンダーなどさまざまな視点から研究するメンバーが集う立命館大学国際関係学部を拠点として、「平和を創る」という共通の課題に向き合い、学術横断的に研究を進める体制を整えているところに、私たちの強みがあります。

まずはアフリカ、中東、南アジア、東南アジア、南米の5地域にあるポスト紛争国を対象に、主として政治社会構造、社会経済開発(紛争以前)、紛争被害、治安システム、国際支援の5つの視点から住民和解と社会復興プロセスの実態を調査します。次いで各事例を集めたプラットフォームを構築した後、比較分析を通してポスト紛争国の和解・復興の実態を政治、経済、社会文化の3つの側面から明らかにし、「和解と復興の持続可能性」という視点からベスト・プラクティスを見出すことを目指します。

研究は、最適事例の抽出だけに留まりません。さらに各地域の固有条件に応じて「現地化」できるよう適応可能性を探るとともに、現地のNGOやシンクタンク、国際機関や研究機関といった外部パートナーと協力し、平和協力の政策提言も検討します。その成果は、国内外に発信していく予定です。

新しい平和の発信

マルチディシプリンの視点を持ち平和構築に貢献する人材を育成

私が主に研究対象としているのは、東南アジアです。東南アジアの各国で政治的不安定をもたらす原因の一つに、犯罪勢力の非合法活動があります。グローバル化が進む現代においては、犯罪の脅威が国境を越え、東南アジア全域、さらには我が国を含めた世界にまで及びます。こういった問題は非伝統的安全保障と呼ばれ、東南アジアの市民社会を脅かしています。この実態と、対策のあり方について研究しています。

本プロジェクトでは、「新しい平和学」の担い手となる若い研究者の実地調査や国際的な研究発信も促進します。地域研究とマルチディシプリンの視点、そして治安と開発の有機性を重視し、政策提言型の研究や活動を通して平和構築に貢献する新たな研究者を輩出することが、本プロジェクトの願いでもあります。

平和学、国際協力、紛争、和解志向ガバナンス、持続可能な平和構築

本名 純 教授

本名 純 教授

1999年 オーストラリア国立大学博士課程修了。Ph.D (政治学)取得。'00年 立命館大学国際関係学部専任講師、'03年 国際協力事業団インドネシア事務所JICA専門家、'03年 立命館大学国際関係学部助教授、'09年 同教授、'09年から JICA研究所客員研究員、'09年 からインドネシア大学連携教授、'09年 京都大学東南アジア研究所客員教授、現在に至る。日本政治学会、日本国際政治学会、日本比較政治学会に所属。

研究者の詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース:本名 純

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