知ることが大切 ~HIVへの偏見~
沈 志炫さん(国際関係学部2回生)
「AIDS文化フォーラムin京都」運営委員
昨年、地域社会での問題解決活動へ参加しながら単位を取得できる立命館大学のサービスラーニング科目「ボランティアコーディネーター養成プログラム」を受講し、2012年10月6日(土)、7日(日)に同志社大学で開催された「AIDS文化フォーラムin京都」の運営に従事しました。ボランティアコーディネーターとは、ボランティア活動を推進する団体や施設で、ボランティア活動推進のための企画、情報収集・提供、相談・支援など総合的にコーディネートする人材を指します。
「AIDS文化フォーラム」では、HIVを医療や福祉の問題だけでなく、関わる人々の心のケアの問題として捉え、医療・教育・予防・セクシャリティ等、様々なテーマで講演会やワークショップなどを行います。
私の担当は事務局委員としては主に運営委員会への参加と資料の準備、そしてテレビ出演とボランティアのサポートスタッフの募集などといったフォーラムの広報活動でした。10月の本番に先駆けて、8月に横浜で同じ企画があったので、私は、事前に学習するため、横浜へ足を運びました。そこで、ある日本人女性にお話を伺うことができました。
彼女は、結婚後、出産前にHIVに感染していたことが判明しました。特に心当たりがなく、時間をかけて振り返ると、独身時代に日本で安価なタトゥーを施術したことを思い出しました。その翌日、高熱が2、3日続きましたが、すぐに回復したので、風邪だと勘違いして、そのまま暮らしていたそうです。旦那さんや赤ちゃんが感染していないかという恐怖を抱えていたようですが、帝王切開で出産し、赤ちゃんは感染せず、無事に生まれてきました。ご主人にも感染はなかったそうです。彼女は、「子どもに自分の命を助けられました。感染をきっかけに『いのちの大事さ』に気付くことができました。この病気にかかったからこそ、今の自分があると思えます。」と話してくれました。この女性のように、AIDS患者の多くが、HIVという病気と向き合いつづけ、受け入れながら、強く生きている姿を知りました。私はそれまで、AIDS患者の方は絶望の中で生きる気力を失っているのだと決めつけていたので、その“先入観”そのものが、“偏見”であると気付くことができたのです。
これらの多くの気づきを他の学生にも伝えたい、京都での開催にはもっと多くの人に来てもらいたいと思い、フォーラムのサポートスタッフのボランティアを積極的に呼びかけたところ、11名のボランティアを募ることができました。「シンのお陰で、素晴らしい話が聞けてよかった」と言ってもらえたことは、本当に嬉しかったです。
同時に人と人をつなぐ難しさを知り、コーディネーターとしてボランティア活動に関わる責任を学びました。
このプログラムを通じて、お金に代えられない喜びを得ることができました。それは、人からもらう「ありがとう」の一言です。どんなに忙しくても、その一言で体の中からパワーが湧いてきます。留学した日本で活躍できること、人のために生きることの魅力をとても感じています。将来は、ボランティアコーディネーターとしてのスキルを身につけたいと思っています。参加者と運営側双方が「よかった」と思ってもらえるように、人と人、人と組織をつなぐ取り組みを続けていきたいです。