• 796 -  パラリンピックを目指すランナーと伴走者。「走ること」を通じて強まる絆。

    パラリンピックを目指すランナーと伴走者。「走ること」を通じて強まる絆。

  • 795 -  「エッジコンペ2016」で賞を逃したことを機に、さらに結束、アイデア実現に挑戦し続ける

    「エッジコンペ2016」で賞を逃したことを機に、さらに結束、アイデア実現に挑戦し続ける

  • 794 -  文武両道で西園寺育英奨学金を受給。サッカーにかける思い

    文武両道で西園寺育英奨学金を受給。サッカーにかける思い

  • 793 -  薬の正しい知識と付き合い方を知ってもらいたい、 薬物乱用防止キャンペーンを各地で実施

    薬の正しい知識と付き合い方を知ってもらいたい、 薬物乱用防止キャンペーンを各地で実施

  • 792 -  「減災・防災を意識するきっかけに」 災害時用の笛を5000個製作

    「減災・防災を意識するきっかけに」 災害時用の笛を5000個製作

+Rな人記事一覧

659 -  バレエは私の選ぶ道 ~迷いながらも自分を信じて~

バレエは私の選ぶ道 ~迷いながらも自分を信じて~

木田真理子さん(2007年産業社会学部卒)
バレエ界のアカデミー賞「ブノワ賞」を受賞

  • No.659
  • 2014年9月2日更新
世界の権威あるバレエ賞の一つ「ブノワ賞」を日本人で初めて受賞した木田真理子さん(20073月産業社会学部卒)。同賞は「バレエ界のアカデミー賞」ともいわれ、世界中の上演作品を対象に、毎年、前年に最も活躍したバレエのダンサーや振付家に贈られる。 木田さんは受賞作となった「ジュリエットとロミオ」でジュリエット役を演じた。


「自分の受賞が信じられず、実感がないまま受け取ったトロフィーのずっしりした感触を覚えています」と受賞式を振り返る。今年5月、モスクワで開催された授賞式ではロシア語が使われたため、司会者に呼ばれるまで、発表されたのが自分の名前だと気付かなかった。木田さんの快挙に喜ぶバレエ関係者や友人の反応をうけて、ようやく実感が湧いてきたという。


受賞に至るまでの木田さんの道のりは、まさにバレエ一筋だったと言える。4歳からバレエを始め、中学時代から全国コンクールに出場するようになり2度優勝。高校1年のときにはローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞を受賞し、同賞の奨学金により高校2年夏からサンフランシスコ・バレエスクールに留学した。立命館大学に入学を決めたのも「社会のことを広く学び、今後の人生、踊りに活かしたい」という想いからだった。大学在学中からカナダのバレエ団で活躍し、この頃スウェーデンの振付家であるマッツ・エック氏の作品に出会った。「世界一流の振付家と作品づくりをしたい」と思い立ち、大学卒業後の2009年にスウェーデンのヨーテボリ・バレエ団に移籍し、現在はスウェーデン王立バレエに所属。
 


学生時代、小澤亘ゼミ(産業社会学部)のメンバーと。2列目一番左が木田さん


今回の受賞作品となったのも、マッツ・エック氏の17年ぶりの新作「ジュリエットとロミオ」だった。憧れだったマッツ氏の期待作、その主役を自分が演じるということは、光栄でもあり、恐ろしい程のプレッシャーでもあった。創作期間は8ヶ月。「マッツさんの解釈するジュリエット像を演じきれるか・・、自分に理解できるのか・・・」。不安と焦りから過度の練習を重ね、稽古のたびに身も心もガタガタになっていった。ついには限界が近づき、初演を5ヶ月後に迫った201212月に、大怪我をしてしまう。直後の1週間は寝たきりに近い状態だった。 

「もちろん落ち込みました。復帰しても、どれだけ良い踊りができるか分かりません。周りにも負担を掛けてしまいました」、と当時を振り返る。「けれどあの怪我がなければ、今の自分はなかったと思います」と木田さん。「何かをずっと続けていると、その環境が当たり前になって、何のために続けているのかを忘れてしまいます。怪我をして踊れなくなったからこそ、改めて『私はこれだけダンスが好きだったんだ』という熱い気持ちを思い出しました」。マッツ氏の「戻って来て欲しい。ジュリエットはあなたじゃないとできない」という言葉が何よりの支えになった。何がなんでも復帰してやろう、そう心に決めた。


Fotograf Gert Weigelt Motiv Mariko Kida - Julia, Anthony Lomuljo - Romeo

“ジュリエットとロミオ”でジュリエット役の木田真理子さん(写真左)


その後、懸命なリハビリにより怪我を乗り越え、気持ちを新たに舞台に復帰した木田さん。迎えた20135月の初演では“真っ白な状態になって楽しむこと”だけを意識したという。「準備さえすれば体は覚えているので、後はメンタルです。演技が伝わらない時は、あれこれ考えすぎている。ここまで来たら、邪魔な考えを削ぎ落として自然体で舞台に上がるしかありません」。ゼロの状態で挑むために「どれだけ捨てられるか」どうかで違いが生まれると、木田さんは力強く話した。後は自分を信じるだけ、と。 

木田さんのバレエにかける想い、鬼気迫る復帰談に、すっかり引き込まれた取材班。「バレエ以外の人生を考えたことは?」と聞いてみた。「ありますよ。今でもよく迷います。迷いっぱなし。けれど、いつもここまで続けてきたんだからと思ったところで、迷いが晴れます。嫌なことを含めても、これだけ情熱を持てることなんて、他には無かった。自分の選ぶ道だったんだと思います」。迷い、立ち止まり、それでも覚悟を決めて、自分の道を突き進んできた木田さんの眼は、力強く優しかった。
 




<記者コメント> 
正しく伝えることは難しい。会話の流れに飲まれたり、良く思われようとしたりして、心にもないことを言ってしまう…自分には良くあることだが、木田さんは違った。じっくりと言葉を選び、噛みしめるようにして、ポツリ、ポツリと話す。「本当のことを言っている」そう確信できるだけの“言葉のパワー”のようなものを感じた。受賞後も変わらない謙虚な姿勢を見て、言葉を聞いて、木田さんが周りから信頼される理由が分かった気がする。




※木田真理子さんは、ブノワ賞以外にも、批評家たちによって選ばれるイタリアの「レオニード・マシーン賞」と、その年のブノワ賞受賞者から選ばれる新設の「ブノワ・マシーン モスクワ・ポジターノ賞」に選ばれました。

  • 取材・文
  • 山内 快(経営学部4回生)

最近の記事

  • 何かに熱中する 学生生活を 手に入れろ 2016年度クラブ・サークル紹介

    何かに熱中する 学生生活を 手に入れろ 2016年度クラブ・サークル紹介

  • 駅伝に新たな歴史をつくる 女子陸上競技部

    駅伝に新たな歴史をつくる 女子陸上競技部

  • 戦後70年 第62回「不戦のつどい」

    戦後70年 第62回「不戦のつどい」

  • アメフト日本一を手に入れろ! RITSUMEIKAN PANTHERS 2015

    アメフト日本一を手に入れろ! RITSUMEIKAN PANTHERS 2015

  • タバタトレーニング

    タバタトレーニング