「障害者武道教室」で生徒たちと共に成長する
笠原巧巳さん(経済学部3回生)
「障害者武道」とは、空手・古武道・その他の武道の動きを取り入れ、障がい者のリハビリに繋がるようにアレンジされた独自の武道だ。
中学から陸上競技をはじめた笠原さんは、高校生の頃は800mで徳島県の県記録をつくり、日本ユース選手権大会では全国優勝もした。大学入学後も毎日陸上の練習に明け暮れていたが、2回生の終わりごろ、大きな故障のため走れなくなってしまった。
歩くことや座ることさえままならず、いつ治るのかもわからない状態が続く。「陸上部の練習に参加して懸命にリハビリするものの、不安や焦り、チームメイトへの後ろめたさなどが混ざった複雑な気持ちでした。その気持ちは今でも続いています」。しかし、競技ができなくなったことを「時間に少し余裕ができた」と前向きにとらえるよう努めた。以前から興味があったボランティア活動をしてみようと、サービスラーニングセンターに足を運んだ。もともと武道や古武道の「力に頼らない重心移動」などを陸上競技の参考にしていたこともあり、多くの活動の中から障害者武道教室に興味を持ち、支援者として参加してみることにした。
教室の生徒たちには発達障害、ダウン症など知的障害がある人や、肢体障害で車椅子の人などいろいろな人がいる。年齢も幼児から60代までさまざまだ。「それぞれができることに制限はありますが、効率のいい動きで技がかけられるように指導者がサポートします」。麻痺がある部分を動かすことで可動域が広がったり、コミュニケーションが苦手な子が「間合い」を通じて人との距離感をとれるようになったりといった効果があるという。
「はじめのうちは武道の相手もできず、子ども達をまとめたり足の不自由な子のサポートをしたりしていました」。実技を練習して試験を受け、指導者になってからは、直接武道の相手をしている。「直接指導することで、障害ではなくその人を見るようになりました。生徒はみんな明るく純粋で、こちらのやる気や手加減をすぐに感じ取られてしまいます。常に相手を意識し、自分らしく接することを心がけたことで、自分自身を見つめなおすことができたと思います」。生徒が必要としていることを考えて行動することで、積極的にもなれたのだそう。武道の動きは自分のリハビリにもなり、この活動で心身ともに成長できたと話す。
どんなバックグラウンドの人でも、笑顔で楽しめるのが障害者武道。「自分もここで居場所を一つ見つけ成長できましたし、これからも生徒たちの成長やコミュニテイ作りのお手伝いをしていきたいと思います」。みんなと自分の笑顔のために、笠原さんの活動は続く。