発光分光

○ 概要

発光分光とは物質に光をあて、物質から出てくる光を測定する手法です。 これにより、化合物中の電子の各元素がつくる部分状態密度がわかります。

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○原理

高いエネルギーの放射光を物質に照射すると、 内殻電子を励起させることができます。内殻軌道にホールを持つ原子はきわめて不安定なので、 フェムト秒スケールの短時間にオージェ電子放出または、X線放出といった脱励起過程が起こります。 このうち放出される軟X線を分光するのが軟X線発光分光です。 内殻正孔を価電子が埋める際の放出軟X線のエネルギー( )を測定すると、 内殻準位の束縛エネルギー(Ecore)と放出軟X線のエネルギー差(Ecore- )が 価電子準位の束縛エネルギー(EB)に相当します。(下図参照)

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発光強度は内殻準位と価電子状態の波動関数の重なりが大きい場合に大きくなります。 また、光学遷移であるので、内殻準位が 軌道からなる場合、 軌道からの発光のみが遷移確率をもつなど、対称性に関して選択則があります。 このようなことを利用して、選択した元素の部分状態密度を調べることができます。

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発光分光の大きな利点は、バルク敏感な手法だという点です。物質中では、電子に比べて光の方がずっと散乱されにくいので、 発光の方が光電子より固体のずっと中の方から飛び出してくることができます。 つまり、固体の中身(バルク)の情報が得られるという点では、発光分光は光電子分光より優れているわけです。