実験方法

スピン物性分光研究室では、様々な実験を行っています。ここではその実験方法について紹介します。

○光電子分光

光を試料に当てることにより、試料から電子が放出される現象を光電効果と言います。 この現象を用いて、飛び出した電子(光電子)の運動エネルギーを検出することにより、試料の電子状態を直接観測できます。 光電子分光で観測した「電子状態」と他の様々な実験手法で明らかになった「物性」を比較することによって、 物性が生じる仕組みを見つけ出すことを目指しています。

○角度分解光電子分光

特定のエネルギーをもつ光を物質に当てて出てきた電子を観測することで物質中の電子のエネルギー分布がわかるのが光電子分光ですが、 角度分解光電子分光ではさらに電子の出てきた角度も測定することにより運動量もわかります。つまり物性の鍵とも言える、 「 バンド分散」を直接観測できるのが「角度分解光電子分光」です。

○光電子顕微鏡

光電子顕微鏡(Photoemission Electron Microscope 以下PEEM)とは、 光電子を観測する電子顕微鏡です。PEEMはその視野が広くリアルタイムに 顕微鏡像を得られるのが特徴です。

○発光分光

発光分光とは物質に光をあて、物質から出てくる光を測定する手法です。 これにより、化合物中の電子の各元素がつくる部分状態密度がわかります。

○X線吸収分光法

物 質内の内殻準位とフェルミ準位以上の非占有状態のエネルギー差に相当するエネルギーを持った光(X線)をあてると、 内殻電子はその光のエネルギーを吸収し非占有状態に遷移します。 光の吸収率を光エネルギーを変えながら観測することで非占有状態の電子状態密度を調べることができます。

○磁気円二色性

X 線磁気円二色性(X-ray Magnetic Circular Dichroism XMCD)とはX線吸収分光を応用したもので、 磁性体試料に円偏光させたX線を照射したとき、吸収スペクトルが試料の磁化方向と円偏光の光スピンの方向に依存して異なる現象のことをいいます。 この現象を利用して実験を行うことで、磁性体の研究を行うことができます。