国民体育大会が地域社会に及ぼす影響に関する調査合宿

Posted on 2014.12.02

スポーツ社会専攻の権ゼミでは、10月12日から13日にかけて、
「国民体育大会が地域社会に及ぼす影響」の調査として、
2014年度の国体開催地である長崎を訪れ、フィールドワーク
を行いました。
国民体育大会(以下国体)とは、全国規模の日本最大のスポ
ーツ・イベントとして、その長い歴史の中で、スポーツ人口
の増大や底辺の拡大、施設の整備・拡充、選手強化など、日
本の体育・スポーツの普及・振興に大きく貢献してきた歴史
がありますが、現在では、開催地が莫大な財政的負担を負う
ことや、全国的な注目度の低下、大会のマンネリ化など、大
会存続への疑問が投げかけられています。そこで私達は国体
を実際に訪れ、なぜ前述したような役割を持ちながら、しば
しば批判的に取り上げられるのか、地域社会とどのような関
係を持ち、影響を及ぼすのか、などを調査することにしまし
た。
今回の調査では、3班に分かれ国体関連の施設や聞き取り調査
を行うことで、より幅広い視点から国体を考察しようとしま
した。
主な訪問場所として、国体の開会式会場である長崎県立総合
運動公園陸上競技場(諫早市)や、国体に関連してのイベン
ト見学として長崎駅・長崎空港、国体に際しての文化プログ
ラム事業見学として、長崎歴史文化博物館の「長崎スポーツ
博覧会」などを訪れました。





各班の活動として、1班は長崎県庁国体競技式典課の方に国体
の現状をお聴きし、今回の長崎国体が競技施設に極力既存の
競技場を利用することで、費用削減に取り組み、やむを得ず
新設する際には必要最低限に留めるか、多様な種目に利用で
きるようにすることで、国体後も活発に施設利用が行われる
ような配慮がなされていることがわかりました。
2班が聴き取りを行った長崎県教職員組合の方には、国体が教
育現場に及ぼす影響の具体例として、開会式で行うマスゲー
ムに地元の小学生が動員され、その練習によって夏休みに補
習を行わざるを得ない場合があることなどをお話して頂きま
した。
また、3班は諫早市議会議員の方々に国体における諫早市
(開催地)が担う役割について聴き取りを行い、開催地とし
ては、国体開催に際して会場周辺の道路整備を行ったことや、
また開会式会場である長崎県立総合運動公園陸上競技場の大
規模改修の理由の一つに、国体後、Jリーグのクラブである
「Vファーレン長崎」のホームスタジアムとして利用すること
も考慮されたことなどをお聴きすることが出来ました。



今回のフィールドワークについて、参加者の一人である菅洋介
さんは、「今回の調査を通して、国内大会としては最大級であ
る国民体育大会が、スポーツだけでなく日本社会の発展に寄与
してきた反面、地域社会に悪影響を及ぼすことがあることを現
実として見ることができました。私がお話を聴かせていただい
た長崎県教職員組合の方は、国体またはスポーツをとても良い
ものだと評価しつつも、生徒を応援やマスゲームに動員するこ
とや、引率や指導・運営に携わる教職員の負担増加など学校教
育に大きく影響を与えること、また、それに対しての運営側の
対応などが不十分である事を疑問視されていました。」と感想
を述べたことからも、国体が地域社会に一定の貢献をしつつも、
大きく影響を及ぼしているということが伺えました。



戦後日本の歴史の中で一定の役割を果たしてきた国体が、単発
のスポーツイベントではなく、これからの地域や日本社会にと
ってどのような役割を担っていくのか、これからも注目してい
きたいと思います。

文責:スポーツ社会専攻 3回生 田渕伸也

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