<取材報告>

〜「総合オリジナリティーコース」〜


  • 講師

    河森正治(映像作家)

    プロフィール

    1960年2月20日生まれ。スタジオぬえに入社し、数々の作品のメカデザインを手がける。代表作は「超時空要塞マクロス」の「バルキリー」。この変形は、その後の多くのロボット作品に大きな影響を与えた。「超時空要塞マクロス」で演出家としてデビュー。映画版「マクロス 愛・おぼえていますか」では監督をつとめた。最近は、ゲームの企画、デザインも手がけ、プレイステーションの「MACROSS DIGITAL MISSION VF-X」、「ARMORED CORE」等がある。

  • 受講者

    私を含めて、全7名。私のような大学生ぐらい、もしくは中学・高校生ぐらいの受講者ばかりかと思っていたが、映像関係の専門学校で講師をされている方や、広告代理店に勤めておられる方もいた。


ワークショップ体験レポート

 私が参加したこの「総合オリジナリティーコース」は、一般から希望者を募り、受講希望者にアニメーションの企画書を書かせて応募させてそれを講師の河守氏がチェックする、という募集形式をとっていた。企画書には決まったフォーマットが設けられておらず、その段階から審査が始まっているといえる。幸いにも、応募した私の企画書が河森氏の目に留まりこのコースを受講することが出来た。
 そしていよいよ、ワークショップは11月24日の午前9時から向かい合わせたテーブルを囲む形で始まった。

講師の河森正治氏。
とても気さくな方で、私達受講者と同じ目線で話をして下さいました。

 このコースは、名前にもあるように作品の「オリジナリティー」について受講者が応募した企画書を例に取り、全員で議論を交わし、あるいは先生からレクチャーを受ける、という形で行われた。
 河森氏(以下、先生)は、まず始めに「オリジナリティーとはどういうことだと思いますか?」という質問を受講者に投げかけ、受講者それぞれが考える「オリジナリティー」像を浮き彫りにさせることから始められた。そして、「水滴」を例に挙げて、そこからどれだけのことを発想できるか、またその発想をどれだけ広げていくことが出来るか、という一種の連想ゲームのようなことを私達にさせることによって
、ある物事を見たり感じたりしたときにどれだけ他人とは異なった感性で受け止めることが出来るか、そういったところから「オリジナリティー」が生まれてくるのだ、と教えて下さった。また、そういった感性はその人個人の「パーソナリティー」と密接な関係があり、そういった意味では「オリジナリティー」と「パーソナリティー」には深い繋がりがあるあるということを先生から教えていただいた。
 そういった準備運動の後、いよいよメインとなる受講者の企画書を用いたブレインストームへと入っていった。
 ブレインストームとはKJ法などと並ぶ発想法の一種であるが、その特徴として「人のアイデアを批判しない」、「人の発言を遮らない」というルールがある。先生は、
「概してオリジナリティーなんてものは、『そんなバカな話が』なんてところから産まれたりするものなんですよ」
 とおっしゃられて、企画を考えたりするときのポイントは
「ためらわないこと」だと受講者にアドバイスをされていた。

テーブルを囲んでブレインストームを行う河森氏と受講者達。
作品の「オリジナリティー」について真剣な議論が交わされていた。

 何人かの受講者の企画書を元にブレインストーミングを進める中で、その企画の優れた点や、問題点などが浮かび上がり、またその中で企画書を書くコツやポイントなどといったテクニックに関する話も出てきたりと、受講者にとっては大変ためになる話題が続出した。
 時には、
「これ、オフレコだからね」
 なんて言いながら、アニメーション制作の裏側や、業界の裏話なども交え、受講者を飽きさせない内容のワークショップとなった。
 中でも印象に残った話に、
僕が劇場版の『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の監督をしたのは21歳の時。まだ学生だった僕がいきなり監督をやれたのは、周りの環境が良かったというのもあるけど『僕がやります』と自分からかって出たから。何か出来るチャンスが回ってきて、ちょっとがんばれば自分でも出来ると思ったらとりあえず手を挙げてみることが大事。『僕出来ません』、なんて言っていると二度とチャンスが回ってこなくなる」
 という、先生自身の体験談があった。
 その後、先生と受講者全員で楽しく少し長めの昼食をとり、午後から引き続きブレインストーミングが行われた。結局、先生の特別な計らいで時間を延長してブレインストーミングやQ&Aが行われたが、午後6時頃、私達の長いようで短かったワークショップは終了した。私達にとっては、あまりに楽しい夢のような時間であった。
 最後に、
「これで終わるのはもったいない。また先生に会えますか?」
 という受講者達の質問に先生は、
「そうですね。みなさんが今度は企画書ではなくてシナリオを書いてきたら、考えましょう」
 という暖かい答えを返され、私達にやる気と希望を与えて下さった。

 余談ではあるが、私はこのワークショップの後、受講者の幾人かと話をして
「シナリオを書き上げてなんとかもう一度河森先生と会おう!」
 と誓い合い、その目標に向かって気合いを入れて執筆中である。

 

受講の記念に、とサインをお願いしたところ、河森氏がデザインされた『ヴァルキリー』のイラストまで描いて下さいました。
本当にいい方で、ワークショップは終始一貫して和気あいあいとしたアットホームな雰囲気で行われました。

文責・写真:溝口達洋


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