活動報告

2024/11/10

立命館大学 事業継承塾 2024年度秋学期第2回講演会を開催しました


立命館大学経営学部のある大阪府茨木市の北部、千提寺で江戸時代から続く農法の事業継承をされた中井さんご夫妻にお越しいただいて、今年度最後の事業継承塾講演会を行いました。

 

 

継承してみてわかった「これは、やばいやつ」。

 

これまでの3回の講演会でお話いただいた事業継承とは少し趣が異なりました。師匠から継承したのは江戸時代から続く農法で育てる「三島独活(うど)」。中井さんは日本で唯一のこの農法の継承者ですが、この三島独活は想像以上の手間と感覚による作業が多く、教わった通りに育てても収穫できるとは限らない、理不尽さの中で育てる希少性の高い野菜。

天候やその時の状況によってやり方は柔軟に変化させないと、結果にはつながらない。自然を相手にしつつ、その上で収益化を図るという過酷な状況を、まるごと楽しんでおられるように見えるのがとても印象的で、前回講演会でバーテックの末松社長が強調されていた「理念を持つこと」を、とても自然に、全身で体現されている感じでした。

 


過酷な経験を通じて、伝えていただいたこと

 

素朴で親しみやすい雰囲気で、中井さんご夫婦はニコニコしながらこちらの価値観を揺るがす、どきりとすることを、さらりと言われます。

 

 

▶︎事業は「自分たちを表現するもの」で「その人の器につく」

やりたくないことはやりません。けれど、まちがえちゃいけないのは、特に農業は自分たちだけの経営だけを考えていても、うまくいかないということ。地域のためになるなら、たとえそれがやりたくないことだったとしても、どんどんやります。

大事にしている考え方や持っている技術などで、2代目の器は先代とは良くも悪くも違うので、自分の器に合わせた事業を自分で作っていくことが大事だと思っています。私たちは師匠と同じ器ではやっていません。最初から起業するつもりで!

 

▶︎自然に支配されて、あきらめがついた

自分のコントロールできないものに支配されることで、平穏をたもっている。自然は無常で誰にでも平等。だからこそ、精神的には安定。自然には支配されているけど、お金に支配されているわけではないので、精神的に自由になりました。たいていのものは自分で作れるし、そっちのほうがおもしろい。

 

自然界は多様性に向かうのが原則

AIによる効率化や農薬による省力化の技術が進んでいます。本当においしいものが作れる、長い期間で培われた先人の知恵と技術が急速に失われていることは大きな問題だと感じています。AIや農薬を否定しているわけではなくて、AIや化学肥料・農薬のような近代的な農法に頼った栽培方法「しか」できなくなっている状態、違う選択肢を選べない多様性がないのが一番怖いです。

 

▶︎アナログを残すというロマンにかけたい

農業の場合、うまくいかないときはAIを導入したらという意見があります。否定はしないけど、ときめかん。おもんない。わけわからんほうが、おもしろいし。ちなみにデータはとっています。結果わからんな・・・になるけれど。試行錯誤するのが、おもしろいよね。失敗っていいなと思っていて、失敗できる権利が認められている、失敗させてもらえるのが、人の幸せにおいては大事ですよね。

 

秋学期第2回講演会4-3 


●独活(うど)は人のこころを満たす手段

 

「独活は『人は独りでは活きられない』ことを強烈に感じさせてくれる作物」としてお話された内容は、伝統農法の事業継承だけにとどまらず、独活(うど)を通じて見えてくる気候温暖化と農家としての向き合いかた、国内外の農業政策や、地域の活性化とライフライン、ファンマーケティングに関するお話まで広くて、深く、自分の頭は揺さぶられっぱなしでした。

 

あっというまに過ぎてしまった90分。揺さぶられ続ける頭の中でぼんやり感じていたのは、

「きっと『かっこいい』っていうのは、こういうことなんだ」、ということでした。

中井さんご夫妻、素敵なお話をありがとうございました。 

事業継承塾 事務局担当