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I Wayan Yuuki さん(博士課程前期課程2回生)の研究論文が国際学術誌「Physiology & Behavior」に掲載されました。
本学スポーツ健康科学研究科博士課程前期課程2回生で、公益財団法人かめのり財団大学院留学アジア奨学生の I Wayan Yuukiさんが、スポーツ健康科学部教授の 橋本 健志先生、早稲田大学スポーツ科学学術院講師の 塚本 敏人先生らと共同で取り組んだ研究論文が、国際学術誌に原著論文として掲載されました。
研究の概要
忙しくて十分な運動時間を確保することが難しい現代社会において、日常生活の中で取り入れやすい「食事」による健康づくりは重要な課題です。学業や仕事、スポーツなどでは、集中して考えたり、素早く判断したりする力が求められます。こうした力は、抑制、記憶、判断といった高次脳機能から成る「認知機能」としてまとめて捉えられ、日常生活の質に大きな影響を与えます。運動が認知機能の向上に有効であることは、「Exercise is Medicine」という概念のもと、これまで多くの研究によって示されてきました。一方、現代社会においては、時間的制約などの理由から、十分な運動を継続することが難しい場合も少なくありません。そこで本研究では、日常生活の中で比較的取り入れやすい介入方法として「食事」に着目し、三大栄養素の一つである脂質の摂取が認知機能に及ぼす影響について検討しました。
本研究では、若年成人36名を対象に、ランダム化比較試験※1を実施しました。一般的な脂質である長鎖脂肪酸(LCT)油※2を対照とし、中鎖脂肪酸(MCT)油※3の効果を検証しました。効果検証は、単回摂取(1回の摂取による即時的な認知機能の変化)と、4週間の継続摂取(継続摂取による安静時の認知機能の変化)という2つの時間軸で行われました。
結果として、MCT油を単回摂取した場合、LCT油と比較して、認知機能の中でも抑制機能※4の向上が認められました。また、4週間にわたって継続的に摂取した場合には、摂取直後でなくとも、安静時における認知機能の一つである作業記憶※5の向上が確認されました。さらに、MCT油を単回摂取した際に認知機能の向上がみられた対象者は、4週間継続して摂取した場合にも、認知機能が向上する傾向が示されました。
本研究は、成人に対する運動や身体活動が認知機能に有益であるとする世界保健機関(WHO)の提言と並び、食事(栄養)が認知機能に影響を及ぼす可能性を示した研究の一つといえます。特に、若年者において、すでに健常で顕著な低下の認められない認知機能においても、一定の変化が認められた点は注目に値します。本研究成果は、学生や働き世代の人々にとって、時間的・身体的負担を伴わず、日常生活の中で取り入れやすい介入方法として、今後の検討に資する知見を提供するものと考えられます。
用語説明
※1 ランダム化比較試験
対象者をランダムに群に分け、介入の効果を比較する研究方法。
※2 長鎖脂肪酸(LCT)油
一般的な食用油に多く含まれる脂質。本研究では比較対象として使用された。
※3 中鎖脂肪酸(MCT)油
消化・吸収が速い脂質。脳の働きに関わるエネルギー代謝との関連が注目されている。
※4 抑制機能
不要な行動や衝動を抑え、適切な行動を選ぶための認知機能。
※5 作業記憶
情報を一時的に保持しながら処理する認知機能。
論文情報
雑誌名:Physiology & Behavior
論文名:Both a single dose and a 4-week daily regimen of medium-chain triglycerides boost certain aspects of cognitive function in young adults: a randomized controlled trial
執筆者名(所属機関名):I Wayan Yuuki(立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科)、道羅絢斗(立命館大学総合科学技術研究機構)、松村哲平(立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科)、福澤和志(立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科)、村上嘉野(立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科)、橋本海斗(立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科)、塚本敏人(早稲田大学スポーツ科学学術院)、橋本健志(立命館大学スポーツ健康科学部)
掲載日時(現地時間):2025年12月22日

