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国際シンポジウム「北欧福祉モデルは2020年代において大きな揺らぎの時期に直面しているのか?北欧と日本の対話」が開催されました。

20241128日(木)に立命館大学大学院政策科学研究科において国際シンポジウム「北欧福祉モデルは2020年代において大きな揺らぎの時期に直面しているのか?北欧と日本の対話」が英語のみで開催されました。このイベントでは、特に政治学的な視点から、高齢化、経済的圧力、ポピュリズムの台頭など、福祉国家が現在直面している主な課題に焦点が当てられました。

シンポジウムでは、2名のゲストスピーカーが各々の見解を述べました。ノルウェーのベルゲン大学およびベルリンのヘルティ・スクールのスタイン・クーンレ教授は、北欧福祉モデルにおける「普遍主義」が強固な福祉制度を構築する重要な要素であると歴史的経緯から説明しました。高齢化や世界的な不確実性といった課題は存在するものの、COVID-19などの危機はしばしば短期的なものであり、継続的な改善と革新によって克服できるため、北欧福祉モデルは適応性があり効果的であると強調しました。

一方、本研究科の上久保誠人教授は、欧州ではポピュリズムが広がっているものの、日本ではその影響が限定的である理由について問題提起しました。与党がさまざまな政治グループのアイデアを取り入れることで、政策決定に柔軟性をもたせ、包括性を確保することが、ポピュリズムを抑制する鍵であると分析しました。

ディスカッサントである本研究科の成田大起准教授は、福祉国家が経済的・政治的安定と道徳的・規範的基盤のバランスを取る際のジレンマについて言及し、緊縮財政や福祉削減が失業や不平等を増加させ、それが反動的なポピュリズムを煽る可能性があることを強調しました。個人に責任を負わせることのない包括性の促進という点で、ベーシックインカムがその解決策となり得るかどうかを問いかけました。

別のディスカッサントである本研究科の大塚陽子教授は、福祉国家の持続可能性のためには国際協力と段階的な緩やかな変化への移行が不可欠であると述べました。北欧諸国が長期的な協力と共有されたアイデンティティにより、課題への適応を可能にしていることを強調しました。また、各国が再び福祉よりも防衛費を優先する傾向がうかがえる現状にも触れました。最後に、選挙でしばしば利用される日本の普遍主義的色合いをもつ公約は、多様性や複雑性を受け入れるつもりがないために、結果的に選別主義となり、これが社会的包摂を妨げているという疑問を投げかけました。

本イベントは、各国の学生たちが自国の立場から意見を述べたり質問をしたりする興味深い質疑応答セッションで幕を閉じました。 ディスカッションでは、福祉国家が現在直面している課題の解決策を見つけようとする強い関心が示されました。 全体として、このシンポジウムは、参加者がアイデアを交換し、福祉制度がグローバルな問題に適応する方法について考える素晴らしい機会となりました。                                  

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