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#3 経営学研究科 劉 莉 さん
#5 経済学研究科 中川賢司 さん
#6 政策科学研究科 藤井えりの さん
#7 国際関係研究科 佐伯廣謙さん
#8 文学研究科 石川ちひろ さん
#9 情報理工学部 野口尚吾 さん
RS Webアンケート
社会学研究科 博士課程前期課程1回生
池田さおりさん
2003年、2004年、2005年 飯田哲也教授 ゼミ生

私は、高校生のとき、マスコミ関連の業種に興味や関心があったので、附属校である立命館高等学校から産業社会学部へ進学しました。はじめは、情報メディア学系に進もうと考えていましたが、マスコミ業界に就職して何かを伝えようとするときに、社会をどう見るかという視点が大切だと思い、現代社会学系に進むことにしました。しかしその後も、進路に関しては、いろいろ悩みました。

入学して最も興味や関心を持った授業は、「現代と社会」という産業社会学部におけるコア科目の1つでした。その「現代と社会」の授業において、「家族」に関するテーマのなかで、「パラサイトシングル」などについての講義がありました。これが、ゼミ選択に影響を与え、その後の卒業研究のテーマ決定にも影響を与えた要因の1つです。

2回生の前期には後期に向けてのゼミ選択がありました。ゼミ選択にあたっては、先生の紹介やそのゼミで扱うテーマが書かれているゼミ紹介の冊子を参考にしました。私が選んだゼミは飯田哲也先生のゼミで、「豊かな生活を求めて―学校・地域・家族―」をテーマに、生活の豊かさについて考えるゼミでした。当時、私は「家族」に関する研究がどのようなものかよくは分かっていなかったのですが、「家族」という言葉に興味や関心があったことから、このゼミを選択しました。

2回生の後期からはじまるゼミに備え、夏休みに宿題が課されました。その宿題とは、『新・人間性の危機と再生』という飯田先生が編集に関わられた本を読んで、自由にレポートを書くというものでした。また2回生の後期の授業では、その本をゼミで輪読しました。この『新・人間性の危機と再生』とは、現代社会における問題について、労働・家族・子ども・愛と性・高齢者というテーマと関わらせながら、人間性、「人間の絆」の再生の方向性について具体的に示すという内容のものでした。この本の中で私が特に興味を持ったのは「高齢者」の章でした。この「高齢者」の章は、産業社会学部の高橋正人先生が執筆されたもので、「老い」ということについて赤瀬川源平氏の「老人力」と関わらせながら書かれていました。私が「高齢者」の章について興味を持ったのは、私の家が3世代家族であったということや、高齢者の方と関わりの多い接骨院でアルバイトしていたことが影響しています。私の場合はそうでしたが、どんなことに興味が向くかは人それぞれです。研究テーマを決めるときに重要になるのは、自分の「価値観」だと思います。普段から自分がどんなことに興味があるのか、何が好きで何が嫌いかなど、感性のアンテナを敏感にしていることが大切なのではないかと思います。

3回生ではゼミ全体のテーマを踏まえながら、個別でテーマを設定し、3回生終了時にレポートを作成します。そこで、もともと興味や関心のある「家族」というテーマの中でも、「高齢者と家族」に絞って研究を進めようと決めました。これが私の卒業研究の出発点となりました。

しかし、学んでいくうちに「高齢者と家族」の「家族」というテーマだけでは、いろいろな家族形態があるため、この「高齢者が豊かに生きるということを家族と関わらせながら考える」というテーマには限界を感じてきました。そこで、「地域」というのもテーマにしてみようと考えました。そして、「高齢者」が豊かに生きるということを「地域」という人間関係のなかで考えていこうと、改めて卒業研究のテーマに設定しました。新たな卒業研究のテーマは、高齢者が豊かに生きるということを、地域における世代間交流を手がかりに考えてみようというものでした。ゼミナール大会の報告タイトルは「高齢者が豊かに生きる〜城陽市の「幼老同居」を手がかりに」でした。

3回生の12月に行われるゼミナール大会に向けて、京都府城陽市の世代間交流事業を2つの施設で調査しました。具体的には、老人福祉センターと保育園が同じ敷地内にある(つまり、老人福祉センターと保育園が「同居」しているという状況なので、「幼老同居」と呼ばれている)ケースについてです。この事業について調査することが、高齢者の豊かな生活を考える手がかりになると考え、研究対象として選択し、そこで行われている事業を質問用紙(アンケート)によるものではなく、聞き取り調査や参与観察という手法で調査を行いました。調査した結果分かったこの交流事業の利点は、「同居」という状況を活用しているため、交流が1回限りの「行事」で終わらず、「継続性」があることです。このことにより、高齢者が主体的に交流に参加することができていると思います。例えば、「前回は行けなかったけど今回は参加してみようかな」、「きまぐれに来てみたけど、ちょっと交流の様子をのぞいてみようかな」という状況が考えられます。

この研究テーマが決まると自ずとやることが見えてきました。先生から文献については本の内容を鵜呑みにしすぎず、本を批判的に読むこと。また調査に関しては、調査という堅い感じで話を聞くのではなく、雑談する気持ちで聞いた方が、相手も本音が語りやすいというアドバイスをもらいました。実際、調査に行って高齢者の方との会話の中から得られることは多かったですね。

4回生のときには、ゼミ合宿(卒論合宿)が行われ、卒業論文の構成(章立て・見出し)を発表し合いました。そこで、飯田先生やTAの方からは、「章立てや見出しがおかしい」ということや「この部分は必要ない」、「結論が飛躍しすぎている」などというアドバイスを受けました。そのような指導があったおかげで、よりよい卒業論文を仕上げることができました。

また、先生や院生の方の調査に同行し学んだことも、よりよい卒業研究へつながった大きな要素の1つです。

学部での研究では、「地域」という視点で研究を進めてきました。大学院では、学部の卒業研究テーマとすることができなかった「家族」についての視点から研究を進めていきたいと思います。将来は、研究者を目指しており、「老年学」というものを確立したいと考えています。「日本は経済的には豊かだが精神的には貧しい」といわれています。しかし、「精神的には貧しい」とはどういうことなのかが具体的ではなく、「豊かに生きる」ということを、「生活を多面的に捉える」という視点を大事にして、追求していきたいです。そういった方向で研究を進め、将来的には「老年学」の構築を目指したいと考えています。研究を通じて、社会に貢献してくことができればと思います。

卒業研究が完成するまで―池田さんの場合

回生 授業スタイルと研究方法キーワード
1回生 前期は、男女共同参画社会についてディベートを行いました。
後期は、それぞれ調べたいテーマをレポートにまとめて、テーマが似ている学生同士でグループを作り、プレゼンテーションを行いました。
キーワード ex) 現代と社会
ジェンダー論
母性愛神話(三歳児神話)
パラサイトシングル
男女共同参画社会
…etc.
2回生 前期はゼミがなく、後期からは、『新・人間性の危機と再生』という本をについて、2〜3人ずつで輪読・報告しました。
論点について、ディスカッションを行いました。
キーワード ex) ゼミ選び
『新・人間性の危機と再生』
…etc.
3回生 前期は、『現代日本家族論』という本について、1章分を2〜3人で輪読・報告しました。
後期は、先生から紹介された岩波新書を2〜3人で輪読・報告しました。
論点について、ディスカッションを行いました。
キーワード ex) ゼミナール大会
『現代日本家族論』
岩波新書
…etc.
4回生 就職活動のため月1回のゼミ
ゼミ合宿(卒論合宿)
キーワード ex) 大学院の早期履修制度
ゼミ合宿
担当教員・TAのアドバイス
…etc.

研究成功の秘訣
―よりハイレベルな卒業研究のために

 

飯田哲也 教授

私のゼミでは「豊かな生活を求めて」をメインテーマにしています。特に、豊かな時間・人間関係・空間(環境)の使い方・築き方に着目し、このテーマを元にそれぞれが具体的にテーマを設定し、研究しています。

池田さんは私のゼミの副ゼミ長で、中心的なメンバーの1人でした。討論のときなどは積極的にメンバーをリードして、討論に参加していたのが印象に残っています。また、池田さんは自分で卒業論文に必要な調査地を開拓し、かなりの文献を読んでいました。そのような池田さんの地道な努力が、2005年度父母教育後援会 産業社会学部長優秀賞受賞というすばらしい結果につながったのだと思います。

私はゼミの中で、卒業論文を書くにあたり、3つのことをアドバイスしてきました。
1.自分の書きたいことをハッキリさせる
2.必要な材料をしっかり集める(調査をする、文献を読むなど)
3.先生を積極的に活用する
卒業論文を作成する学生は、基本的なこの3つのことを参考にしてもらいたいと思います。

また、学生全般に言えることですが、私は「最高を目指して欲しい」と思います。私が思う最高とは「それぞれの置かれている位置・未来」においての最高を意味します。例えば、卒業論文を書く学生なら、最高の論文作成を目指す。課外活動を頑張りたい学生ならば、日本で誰にも負けない選手を目指すなど、それぞれの最高を目指して、有意義な学生生活を送って欲しいと思います。

取材・文 皆木孝夫(政策科学部2回生)
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