2026年度第1回研究会「子ども・若者ケアラーの現状と支援の課題」のご報告
2026年6月29日、立命館大学地域健康社会学研究センター主催の研究会「子ども・若者ケアラーの現状と支援の課題」が、ハイブリッド形式で開催されました。 報告は斎藤真緒氏(立命館大学産業社会学部教授)、司会は当センター・センター長松田亮三氏(同学部教授)が務めました。
斎藤氏はまず、男性介護者研究から出発したご自身の研究歴を振り返り、主介護者の続柄の変化、高齢者虐待の相談・通報件数の増加、 介護殺人や介護・看病疲れによる自殺の高止まりといったケアに関わる諸問題を示し、 ケアを家族に依存する構造がこうした問題を背景として生じている点を指摘されました。 さらに、少子高齢化や世帯の小規模化を背景に、「すべての人が人生のいずれかの段階でケアにかかわる時代」が到来している中で、 ヤングケアラー、ダブルケア、多重ケア、ワーキングケアラーなど、家族ケアとそれに関わる問題が多様化しているとされました。
そのうえで 、 子ども・若者ケアラー支援について、 2024年にその法的根拠が明確化されてからも、学校とつながらない子どもの不可視化、 18歳以上の若者への切れ目ない支援の遅れ、当事者の認識と権利意識の低さといった問題を指摘し、ケア行為の負担軽減に焦点化したケアラー支援には限界がある、と論じられました。 ケアの長期性とその境界の不鮮明さ、生活時間・生活空間の制約を考慮し、ケアラー自身のライフチャンスを保障する包括的支援の必要性が強調されました
さらに、イギリスのケアラー法制化とケアラー運動の経験を参照しつつ、「京都市ケアラー支援条例」(2024年11月制定)の当事者参画型の制定過程が紹介されました。 多様なケアラー団体をつなぐ京都ケアラーネットの公開学習会が「ケアを語る公的空間」として機能したことを述べられ、ケアラー支援条例の拡大などを含めたケアを社会の基礎的条件として尊重する「ケアリング・ソサエティ」の構想と、経験知に根差した自治の可能性が展望されました。 討論では、学校での取り組みのあり方、大学におけるケアラー支援の組織化など、さまざまな論点をめぐり活発な意見交換が行われました。
(文責:松田亮三)