2013年2月18日更新
福島原発で深刻な事故が発生してから、再生可能エネルギーによる発電への期待が高まっている。再生可能エネルギーとは風力や波力、地熱など自然によるパワーを意味しており(対義語は「枯渇エネルギー」)、中でも太陽光発電はすでに普及途上にあるようだが、「市場で主流となっている太陽電池の材料はシリコンで、コストの低減には限界があります」と峯元高志は語る。
シリコンを使った太陽電池は理論の限界に近いほど高い発電効率に達しているが、製造・発電にかかるコストは、未だ従来の電力に比べて高いという。既存のソーラーパネルを集めて大規模に敷き詰めさえすれば、脱原発や電力問題が解決するというわけにはいかないのである。
「そこで1975年には、シリコンではない材料の太陽電池が発表されました。銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の4元素によるCIGS薄膜です。レアメタルのインジウムを除けば、一般的な材料なのでコストは格段に安い。しかもシリコン結晶の約百倍という優れた光吸収力を持っています」
ただし、この材料で高純度の薄膜を作る真空蒸着には大量の電力が必要。このため、セレンを食べてナノ化(微小化)する微生物の働きを応用した仰天の発想による薄膜合成も研究中だが(※下記参照)、峯元自身は新しい原材料に取り組んでいる。
「自然界にもっと豊富にある元素でできないかということで、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、硫黄(S)の4元素にトライしています。レアメタルは一切ないので、価格も安定しており、調達もまったく心配ありません。現段階ではCIGS薄膜の半分程度の発電能力ですが、向上できる可能性はあります。CIGSと似た性格を持つので、これまでの経験を活用できることもメリットです」
太陽電池はタービンや風車などを使う工学的な発電方法とは根本的に異なるため、見近な電力源にできるなど様々な可能性を秘めている。
「太陽光は無限のエネルギー源ですから、これからもライフワークとして活用の可能性を追求していきたい。発電効率がもっと高まれば、私たちの生活を大きく変えることもあり得るでしょう」
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