2013年2月18日更新

従来の電力を凌ぐローコストで高効率な太陽電池の開発に挑む

峯元 高志
立命館大学理工学部准教授
峯元 高志(立命館大学理工学部准教授)
博士(工学)。1976年神戸生まれ。1992年立命館大学理工学部卒業。2001年同大学大学院理工学研究科総合理工学専攻博士課程後期課程修了。2001~02年アメリカ・デラウェア大学エネルギー変換研究所ポスドク研究員。2003年から立命館大学。研究員、講師を経て2011年から現職。立命館大学在学中から太陽電池の研究に没頭。それがライフワークに。光さえあればいつでもどこでも利用できるユビキタス電源や、ウェアラブル(着用可能)太陽電池など独創的な応用方法も研究中。最近はランニングを趣味にしており、今年中にフルマラソンに挑戦予定。「ヒマが少しでもあればジムのランニングマシンで練習しています。あくまでも目標は完走です」
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福島原発で深刻な事故が発生してから、再生可能エネルギーによる発電への期待が高まっている。再生可能エネルギーとは風力や波力、地熱など自然によるパワーを意味しており(対義語は「枯渇エネルギー」)、中でも太陽光発電はすでに普及途上にあるようだが、「市場で主流となっている太陽電池の材料はシリコンで、コストの低減には限界があります」と峯元高志は語る。

シリコンを使った太陽電池は理論の限界に近いほど高い発電効率に達しているが、製造・発電にかかるコストは、未だ従来の電力に比べて高いという。既存のソーラーパネルを集めて大規模に敷き詰めさえすれば、脱原発や電力問題が解決するというわけにはいかないのである。

「そこで1975年には、シリコンではない材料の太陽電池が発表されました。銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の4元素によるCIGS薄膜です。レアメタルのインジウムを除けば、一般的な材料なのでコストは格段に安い。しかもシリコン結晶の約百倍という優れた光吸収力を持っています」

ただし、この材料で高純度の薄膜を作る真空蒸着には大量の電力が必要。このため、セレンを食べてナノ化(微小化)する微生物の働きを応用した仰天の発想による薄膜合成も研究中だが(※下記参照)、峯元自身は新しい原材料に取り組んでいる。
「自然界にもっと豊富にある元素でできないかということで、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、硫黄(S)の4元素にトライしています。レアメタルは一切ないので、価格も安定しており、調達もまったく心配ありません。現段階ではCIGS薄膜の半分程度の発電能力ですが、向上できる可能性はあります。CIGSと似た性格を持つので、これまでの経験を活用できることもメリットです」

太陽電池はタービンや風車などを使う工学的な発電方法とは根本的に異なるため、見近な電力源にできるなど様々な可能性を秘めている。
「太陽光は無限のエネルギー源ですから、これからもライフワークとして活用の可能性を追求していきたい。発電効率がもっと高まれば、私たちの生活を大きく変えることもあり得るでしょう」

「微生物の力で太陽電池の発電効率を高める。」

AERA 2013年2月18日発売号掲載 (朝日新聞出版)

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