みなさん、「六次産業」という言葉を聞いたことがありますか？六次産業とは、第一次産業従事者が、生産（第一次産業）だけでなく食品加工（第二次産業）や流通・販売（第三次産業）にも総合的に携わる事業形態を指します。私たちは六次産業の実践を通じた地域資源の発掘と地域へのエンパワメントとを目的に、昨年4月から京都市右京区京北地域で産学民連携プロジェクト「日本酒プロジェクト」に取り組んでいる自主ゼミ団体です。このプロジェクトは産業社会学部「京北プロジェクト」の一環で、深刻な過疎化が進む京北地域の再生と活性化を目指しています。昨年度の日本酒プロジェクトで考えた「エンパワメント」とは、過疎化に悩む地域のみなさんに地元のすばらしい資源に気づいてもらうことと、若者との関わりを通じて元気をだしてもらうことでした。今年4月、約１年間の活動を経て、京北唯一の酒蔵である羽田酒造の方々や農家のみなさんとともに、100％京北産の日本酒「和祝（わいわい）切符」を完成させました。


地元農家から農地を借りた酒米「祝」の栽培や収穫（第一次産業）、京北の唯一の酒蔵で米冷ましや麹づくり、瓶詰め（第二次産業）をおこなう中で地元の方々から京北の風土や自然、歴史、お酒の醸造について教わりました。単に製造過程を体験しただけでなく、商品のコンセプトや味、ネーミング、ラベルにアイデアも出しました。活動を通じて私たちが感じたことは、京北の人々の温もり。「泊まっていってよ！」と私たちを気にかけてくれる人々の親しみやすさ。その上で「酒も人付き合いも濃い方がいい！」というコンセプトを提案しました。今後、京北のPRや販売活動（第三次産業）に取り組んでいくこととなっています。

お酒造りの工程にいろんな人が関わっていること、農家、酒蔵の人の想いが一つのものに詰まっていることを肌で感じて、商品を見る視点が変わり、地域の人にも愛されるお酒を造りたいという強い想いを持ちました。またプロジェクトを進めるためには、大学で学んだ様々な分野や事柄について横断的に考える思考が必要だということに気づき、個々の知識や思考をどのように活かすかを考える力がついたと思います。


このプロジェクトでは課題も残りました。お酒造りの作業に追われて、地域課題の検討、エンパワメントの意味の詰めやコンセプト創り、ラベルのデザインなど製造面、そしてチームビルディングにおいても手探りで進めたので、「もっといいお酒が造れたのではないか」と反省するばかりです。

この活動を通じて、「地域おこしはひとづくりだ」との考えに、私たちなりに至りました。未熟で不安になることもありますが、京北地域の活性化を実現するため、昨年度の課題の解決を目指しつつ、今年度もお酒づくりに取り組みます。京北とお酒を手に取ってくれた方とをつなげる日本酒プロジェクトは、まだ始まったばかりです。