「実学」で薬学部生の好奇心を引き出す
池谷幸信 特別任用教授 (薬学部)
「なに、頭が痛い?冷え症?じゃあこれだね!」と、本棚から次々に本を取り出し、ページをめくりながら漢方薬について教えてくれる。写真ではおっとりした方という印象だったが、身振り手振りを交えながらの説明は情熱的でそのギャップに驚いた。
漢方の専門家として、株式会社ツムラで商品開発研究所所長も務めた池谷先生。立命館大学に着任したのは2008年。2014年度まで薬草園と生薬標本室の責任者として整備を進めた。薬草園には、薬剤師国家試験に出題されるものを中心に96種の植物が植えられた。「責任者の頃は週1回は雑草を取ったり、夏休みも水やりや様子を見に来たりしましたね」。

完成直後の薬草園
薬草園は、薬学部の生薬学実習などで利用される。「教科書のイラストだけではわからない部分もあります。生えている様子を見て、手にとって、においをかいだりすれば、記憶にも残るし興味が湧きますよね」。授業外にも自主的に見学したいと申し出る学生もいたという。生薬標本室には199種の標本をそろえ、珍しい生薬もできるだけもともとの形を学生に見せるようにしてきた。
一つひとつの生薬の特徴や効能を覚えるだけでも大変なのに、それらを調合した漢方薬について覚えていくのは簡単ではない。できるだけ実物に触れさせ、実際の症状について話すことで、学生たちの理解を深めるように工夫してきた。「具体的な話をすれば、『私はどのタイプ』とか『うちのお母さんこのタイプだ』とか、興味が湧くでしょ」。先生は嬉しそうな顔で、今までの学生からの質問カードを見せてくれた。「学生が自分でもよく調べていると感じる質問が多いですね。一つひとつ返事をするようにしています」。

完成から3年後の様子
漢方薬は、冷え症・食欲不振・イライラ・体がだるいなど、はっきりと病名が特定できない場合でも、「症状」に対して処方できるのだそうだ。最近では、西洋薬が効きにくい疾患に漢方薬が有効だという事例も見つかり、世の中に貢献する薬として見直されてきている。
「病院で薬を処方するのは医師ですが、薬局では薬剤師が薬を選定しなくてはなりません。また、漢方薬については医学部でも学びますが、原料である生薬について学ぶのは薬学部だけです。患者さんに薬について説明する立場の薬剤師は、生薬について深く知っておくことが必要です。」
先生は、自身のツムラでの経験をもとに、患者さんの症状や体質に合わせた薬を提供できる薬剤師の育成を続けている。工夫は専門分野だけにとどまらない。「文章を読み解く力」や「論証力」、そして基礎的な「アカデミック・ライティング」の力の育成を目的とした「日本語表現法」の授業では、専門実習のレポート、論文、就職活動のエントリーシート、社会人になってからの報告書などの作成に、理系の学生にもいかに重要になってくるかを話すのだそう。「何の役に立つのかがわかれば、授業への取り組み方が違ってきますよね」。先生の授業は、漢方と学生への情熱にあふれている。
漢方の専門家として、株式会社ツムラで商品開発研究所所長も務めた池谷先生。立命館大学に着任したのは2008年。2014年度まで薬草園と生薬標本室の責任者として整備を進めた。薬草園には、薬剤師国家試験に出題されるものを中心に96種の植物が植えられた。「責任者の頃は週1回は雑草を取ったり、夏休みも水やりや様子を見に来たりしましたね」。
完成直後の薬草園
薬草園は、薬学部の生薬学実習などで利用される。「教科書のイラストだけではわからない部分もあります。生えている様子を見て、手にとって、においをかいだりすれば、記憶にも残るし興味が湧きますよね」。授業外にも自主的に見学したいと申し出る学生もいたという。生薬標本室には199種の標本をそろえ、珍しい生薬もできるだけもともとの形を学生に見せるようにしてきた。
一つひとつの生薬の特徴や効能を覚えるだけでも大変なのに、それらを調合した漢方薬について覚えていくのは簡単ではない。できるだけ実物に触れさせ、実際の症状について話すことで、学生たちの理解を深めるように工夫してきた。「具体的な話をすれば、『私はどのタイプ』とか『うちのお母さんこのタイプだ』とか、興味が湧くでしょ」。先生は嬉しそうな顔で、今までの学生からの質問カードを見せてくれた。「学生が自分でもよく調べていると感じる質問が多いですね。一つひとつ返事をするようにしています」。
完成から3年後の様子
漢方薬は、冷え症・食欲不振・イライラ・体がだるいなど、はっきりと病名が特定できない場合でも、「症状」に対して処方できるのだそうだ。最近では、西洋薬が効きにくい疾患に漢方薬が有効だという事例も見つかり、世の中に貢献する薬として見直されてきている。
「病院で薬を処方するのは医師ですが、薬局では薬剤師が薬を選定しなくてはなりません。また、漢方薬については医学部でも学びますが、原料である生薬について学ぶのは薬学部だけです。患者さんに薬について説明する立場の薬剤師は、生薬について深く知っておくことが必要です。」
先生は、自身のツムラでの経験をもとに、患者さんの症状や体質に合わせた薬を提供できる薬剤師の育成を続けている。工夫は専門分野だけにとどまらない。「文章を読み解く力」や「論証力」、そして基礎的な「アカデミック・ライティング」の力の育成を目的とした「日本語表現法」の授業では、専門実習のレポート、論文、就職活動のエントリーシート、社会人になってからの報告書などの作成に、理系の学生にもいかに重要になってくるかを話すのだそう。「何の役に立つのかがわかれば、授業への取り組み方が違ってきますよね」。先生の授業は、漢方と学生への情熱にあふれている。