Profile
大学院では金属疲労破壊の研究に取組む。大学院修了後は、エンジニアとして最高峰の仕事ができる環境を求め職場を選択。現在はレーシングカーとプレジャーボートの強度・流体解析を行う。
理工学研究科 物質理工学専攻修了
株式会社シグマオートモーティブ所属小田 綾子
- 大学ではどんな研究をされていましたか?
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金属疲労破壊の研究をしていました。
例えばクリップの針金を曲げると何回かで折れてしまいます。これが疲労破壊です。しかし、とても小さな力なら何回かけても針金は曲がらないし折れることもありません。
これまでも力を数百万回かける実験はされており、これ以下なら大丈夫という力の値は分かっていました。それを基に機械構造物は設計されていたのですが、何十年と使われる中で壊れる事例が出てきた。これはおかしい。更に多くの回数がかかると破壊するのではないかと始まった研究テーマです。
まず実験で疲労破壊を再現することから研究はスタートします。実際なら何十年もかかる現象を短い時間で再現するのは至難の業です。それを研究室オリジナルの高速試験機で約半年で実現。疲労破壊をした金属の表面を走査型顕微鏡でくまなく観察します。1μm単位まで調べたところ、この疲労破壊は通常の疲労破壊のメカニズムとは異なる現象であることが解明されました。 - なぜ、現在の職場を選ばれたのですか?
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エンジニアとして最高峰の仕事が出来ると確信したからです。
学生時代も最先端の研究をさせて頂いていたので、社会人として更に高いレベルで活躍したいと考えていました。日本には世界トップクラスの実力を持つ企業はたくさんあります。その中で決め手になったのは「初」というキーワードでした。
私の会社はモータースポーツの世界で日本初を成し遂げた歴史の持ち主です。既存の技術を向上させてNo.1になることは非常に魅力的です。でも「初」というのは後にも先にも一つしかありません。
レースは最先端の技術でNo.1を目指すもの。そして更に次の時代の風を読んで「初」を創っていくDNA。この両方を兼ね備える社風が、負けず嫌いの私にマッチしました。 - 今のお仕事の内容は?
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レーシングカーとプレジャーボートの強度・流体解析です。
解析というのは、コンピューターでシミュレーションし設計検討を行う業務です。
従来は製品を試作し実験しながら設計検討されていましたが、自動車や船は特に試作することも実験も大がかりで、毎回それをしていては多大な時間と費用がかかります。
スマホにしても何でもですが、次から次へと新製品が発売されています。世の中の製品開発のスピードは日増しに速くなっていて、他社よりいいものを速く作ろうとすると従来の方法では追いつかなくなってきています。最近はコンピューターの性能も非常に向上し、複雑なシミュレーションでも短時間で結果が得られます。
私の業務は、シミュレーションで試作や実験をする手間やコストを大幅に削減しています。 - 仕事をしていてやりがいを感じたことは?
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社内の新規事業の立ち上げを成功させ、軌道に乗せたことです。
現在携わっている解析事業は、私一人で始まりました。私は解析の経験もなく、社内に教えてくれる先輩もいません。あったのはコンピューターの端末と解析ソフトだけ。何から手を付けたらいいのか、それすら分かりませんでした。
まず会社にあったコンピューターを数台つなげて、大量の解析計算をより短時間で行える環境作りから始まりました。それから解析ソフトの使い方を調べ、社外の方から教わるなどあらゆる方法を取りながらマスターし、やっと業務が出来る状態になりました。自社製品の解析を実施し結果が得られ、その後さまざまな企業から解析依頼が寄せられ、事業として成り立ちました。
ゼロからのスタートで新米の私にはとても重責でしたが、解析技術者としても企業人としても仕事を成し遂げた、「社内初」が達成できたと非常にやりがいを感じました。 - 今後の目標は?
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プロジェクトリーダーになることです。
解析の事業も拡大したいですし、世界で戦っていく技術力をもっと高め会社を大きくしたいと考えています。そうすることでこれまで手を出せなかったことにもチャレンジでき、より多くの喜びや楽しみを皆さんに届けることが可能になります。それと同時に、エンジニアとしてのやりがいや醍醐味も増していくという理想的な循環が生まれます。誰かがやってくれるだろうと思っていては何も起こりません。
そういう状況を作るためには、強い意志を持ってプロジェクトを引っ張っていくリーダーが必要です。私がその存在になって実現させたいです。必ずそうなると信じて日々努力していますが、一日でも早く実現できるように更にスピード感を持って成長していきたいです。 -
男性が大多数を占めている理系分野ですが、女性だから肩身が狭いとか上手くやっていけないということは全くありません。知識と目標を持っていれば誰でも一流の技術者になれます。それらを大学で存分に身に付けて下さい。安心して自分の目指す分野にチャレンジし続けてください。私は先輩として、皆さんをエンジニアの世界で待っています。