3つの点が人の顔に見えるのはなぜ?
2024.02.15
なぜこの研究をしているの? どんなところが面白いの? 研究の源である「探究心」について先生に聞きました。
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高橋 康介 教授
立命館大学 総合心理学部
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- 先生が研究している「パレイドリア」って、どんな現象なんですか?
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- たとえば壁にコンセントがあるでしょう。あれをじっと見ていると「顔」に見えてきませんか?

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- 上の2つの穴が目で、その下の穴が口。コンセントの穴が口を開けてる人の顔に見えます!
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- 見える見える!不思議だなあ。コンセントの穴なんだけど、これはおどろいてる人の顔だ。一体何が起こってるんだろう?
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- 本当はただのコンセントなのに、一度でも「これは顔みたいだ」と納得すると、顔にしか見えなくなってしまう。しかも口の開き具合から、この人は少しびっくりしているんじゃないか、と思ったりもしますよね。
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- これって見まちがい?
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- 見まちがいとパレイドリアは違います。たとえば歯磨き粉のチューブと洗顔フォームのチューブは、同じような形をしているから見まちがったりしますね。でも、一度まちがえても、どっちが歯磨き粉かわかったら、次に見たときにはまちがったりしないはずです。パレイドリアはそうじゃない。コンセントを一度「人の顔みたい」と思ったら、ずーっと顔に見えてしまう。
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- うーん、なんだか変な現象だなあ。
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- 先生はどうしてパレイドリア現象を研究しようと思ったのですか?
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- もとは知覚(ちかく)に関心があって研究の世界に入りました。知覚研究では、たとえば人がものをどう見ているのか、あるいは音をどう聞いているのかを考えます。
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- どう見ているか……。どういうことだろう? たとえば目の前に赤いリンゴがあったら、それは誰が見ても「赤いリンゴ」ですよね。
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- 本当にみんなが同じように見ていると思いますか?
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- えっ⁉ 違うのかな? いま私の目の前には先生がいるけれど、私が見ている先生とハテナさんが見ている先生は違うの???
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- ミライさんと同じ場所から先生を見ているわけじゃないから、ビミョ〜に違う……ってこと……かなあ。
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- たとえば食べ物の味はその人の好みによって違いますよね。同じものを食べても「おいしい」と感じる人がいれば、「それほどでもない」と感じる人もいる。見るのも同じで、みんな違っていて当たり前なのです。
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- だとすると、さっきのコンセントも顔に見えてはいるけれど、ハテナさんに見えている顔と私の見ている顔が同じというわけではないんだ。そうなると、ハテナさんにはどう見えているのかを知りたくなるなあ。
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- そうですね。ところが、他人にどのように見えているのかを知るのは、そう簡単ではありません。というか、正直なところわからないのです。
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- そっか、わからないのか。だから先生は研究をしてるんですね。
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- わからない何かをわかるようになりたい。これが研究の面白さですからね。研究をしていると、他人がどんな風にもの見ているのかを知りたすぎて、人の頭の中をのぞき込めるマシンはないのか……!と思うことがあります(笑)いろいろな実験をしたり、脳の動きを測る機械を使うこともありますが、それだけではパレイドリア現象のなぞは解けない。だからこそ、おもしろいし、もっと知りたい。単に「見る」だけなのに、わからないことだらけなんだから、探究はやめられないです。
