なぜ戦争はなくならないの?

2024.08.09

なぜこの研究をしているの? どんなところが面白いの? 研究の源である「探究心」について先生に聞きました。

  • 足立 研機 教授
    立命館大学 国際関係学部
先生の専門分野「国際政治学」って、一体どんな研究をするんですか?
ひと言で説明するなら「戦争を起こさないためにはどうすればよいか」を研究しています。
戦争って、今まさにウクライナとロシアの間で起きてますよね。
イスラエルでもユダヤ教徒とイスラム教徒の争いで、大勢の人が本当にひどい目にあってるって、毎日ニュースで目にします。どうして戦争なんかするのかなあ。
まさにその疑問の答えを探したいと思って、研究者になったのです。私が大学に入った頃は、いわゆる冷戦が終わり、これから先の世界は平和になるのではと期待されていました。ところが、実際にはそうならなかった。
テレビやネットで戦争のニュースを見ていると、悲しくなります。戦争して得している人なんて、一人もいないと思うんだけど……。
その通りですね。もし何かを少し得られたとしても、比べものにならないほど多くの犠牲を払うことになります。冷静に損得で考えれば戦争なんてしないはずなのに、実際には世界のあちこちで争いごとが絶えない。本当に不思議で仕方がない。だから、なぜ戦争が起きるのかを突き止めたいんです。
でも戦争って国同士の争いですよね。国の考え方を知るにはどうすればいいんでしょうか?とても難しそうです。
少し考えてみましょう。国の考え方というけれど「国」そのものが何かを考えるわけではないですよね。考えているのは国のリーダー、つまり「人間」です。結局、国同士の争いと言っても、それを仕組んだのは人間だし、実際に戦っているのも人間です。
それなら余計に不思議。どうして人間同士で争うんだろう?
でも、僕もときどき友だちとケンカするからなあ。
ケンカしたときって、その後どうします? 今まで仲良しだった友だちと、ずっと仲たがいしたままだと悲しいですよね。
そんなの私は嫌だな。ケンカの理由はいろいろあるけど、とにかく謝ったら話はできるよね。
少し歴史を振り返ってみると、80年くらい前の日本はアメリカと大戦争をしていました。お互いにたくさんの人が亡くなり、日本は原子爆弾を落とされたりもした。そのアメリカが今では、日本にとって一番大切な国のひとつになっています。日本人とアメリカ人が、かつては争い憎しみ合っていたなんて、ほとんど誰も思わないでしょう。
そういえば、ドイツとフランスも昔は争ってばかりいたと歴史の授業で教わったなあ。今ではどちらもEUのリーダーになってるし、争うなんて考えられないかも。
イスラエルで起きているのは、ユダヤ教徒とイスラム教徒の争いです。彼らも少し歴史をさかのぼれば、お互いに共存できていました。争っても、誰も得しないのがわかっていたからです。ところがどちらかが相手を信じられないと思うと、相手も同じように思ってしまう。「相手は違う人間なんだ」と思うとコミュニケーションが途絶える。人間の不思議なところでです。
よく「話せばわかる」って言うけど、逆に考えれば「話さなければ、わからない」ってことか。
友だち同士なら、どちらかが「ごめんね、あの時こんな風に思ってしまったんだ」と話しかければ、「こちらこそ、誤解してたよ」と話がつながっていき、お互いに納得できる。ところがお互いが集団同士だと、そう簡単には話はまとまらない。だから争いごとは簡単になくならないのです。
でも、戦争なんかしないほうがお互いに得ですよね。ミサイルなんて作っていないで、そのお金を有効に使えばいいのに。
まさにその通り!だから「戦争を起こさせないためにどうしたらいいのか」を考え続けたいし、世界を少しでもよくしたい。そう心から願うから探究をやめられないのです。

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