[佐藤満HomePage]
[「政策過程モデルの検討」目次]
1.はじめに
本稿は日本の政策過程について提示されている幾つかのモデルの検討を行う。まず俎上に載せられるのは村松岐夫の『戦後日本の官僚制』において示された「政策過程−イデオロギー過程」の二分法的モデル(村松1981)である。これに対する二人の批判者のモデル(真渕1981、山口二郎1987)をこれと同時に検討する中で、日本の政策過程のモデルとして、村松モデルのどの点が不十分でいかなる修正を施すべきなのかを明らかにしたい。
各モデルに対して、それぞれが提示している部分的政治過程の概念が一定の基準に照らして明瞭な定義がなされているかどうかを吟味し、さらに一九八五年に村松らが実施した高級官僚に対する意識調査のデータ(1)を用いて、各モデルの語る部分的政治過程がデータから読み取れるかどうかを確認する。そして、データの示している一九八五年の時点での官僚の認識を介した日本の政策過程を捉えるには、いかなるモデルをもってするのがよいのかを検討したい。
その作業を行うことによって、官僚意識調査データが描き出している政策の現場にいる官僚の認識を通じた政策過程像と、モデルが前提にしている「現実」との差異も見えてくると考えられる。これは手元にあるデータの限界を明らかにすると同時に、モデルに対してもその「現実」の証拠を求めるということになるであろう。政策過程研究は、おそらくこうしたモデルあるいは理論的仮設の提示と経験的証拠によるその検証により発展するものである。
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