佐藤満HomePage] [「政策科学と政治過程論」目次

政策コミュニティ


 この点に関していえば、カッツェンシュタインやヘクロウの政策ネットワーク(Katzenstein)、イシュウネットワーク(Heclo1978(3)という議論が思い起こされるが、特定の政策の形成、執行に際してはその政策に通じた議員、官僚はもちろん、利益集団関係者も加わり、いわゆる専門家達が一種の団体精神を共有し、国家アクターと社会アクターとか、立法府、行政府、外郭団体とかの線引きを越えて政策の形成・執行に関して緊密な相互作用をするということである。「鉄の三角形」の議論に似たところもあるが、政策の形成から執行までを貫く視点を持つことで、ここでいうコミュニティもしくはネットワークははるかに大きなものである点が異なっている。
 サバティールの整理では理論フレームとしてのネットワーク論には触れずに、事実として存在している政策コミュニティを強調する。そして、そうした政策コミュニティの存在を強調した研究として、執行の研究、アジェンダセッティングの研究(4)などをあげている。政策決定過程を時間軸の中央に据えるならばそれぞれ、決定後の過程と決定前の過程へと研究の視野を広げたものであるが、それらは漠然と決定過程と語られていたものにたいして時間軸上の区分を持ち込むことで、焦点を絞り込み細密な情報収拾を可能にしたものであったと言える。そうした視点を持つことで、政府機関をまたがって存在する政策コミュニティ、もしくはネットワークが見えてくるのである。
 政治過程の研究が政策の視点を取り込んで政策過程の研究へと進むとき、こうした政府機関をまたがった政策コミュニティや下位システム(官僚、議員、利益集団の指導者、リサーチャ、専門家のレポータからなる)を理解することが求められるであろう。

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