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講師:一橋忠之/京都放送局アナウンサー 講師:一橋忠之/京都放送局アナウンサー

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記者紹介

記者 松島理菜 立命館大学産業社会学部
現代社会学科
メディア社会専攻

D-PLUS
マネジメントチーム
3回生 松島理菜
5月16日(金)

第5回 スポーツを伝える。

 今回の講師は、スポーツの実況やキャスターとして活躍する、一橋忠之アナウンサー。「スポーツを伝える」をテーマにお話ししてくださった。

講義概要

 講義冒頭、一橋アナは5月12日に発表された23人のW杯代表メンバーについて触れながら、選考について話した。日本代表のように、ふるいの網目が大きければ大きいほど、網に引っ掛かるには大きな丸である必要がある。しかし、必ずしも丸でなくても、どこか尖っている部分があれば網に引っ掛かる可能性がでてくる。尖っている部分というのは、他より秀でたキラリと光る部分という意味だ。学生に自分の好きなものを挙げてみようと声をかけ、紙に書きだしてらった上で「尖がり(好きなこと、得意なこと)を伸ばしてほしい」と述べた。

 試合中継やスポーツニュースというのは、生きていくうえで絶対に必要な情報ではない。しかし人々からの需要は確実にある。例えば五輪やW杯。日本以外で開催される大会では、試合時間が日本時間で深夜になることも多い。しかしリアルタイムで応援するためにテレビを観る人は多い。真夜中であっても、多くの人々が盛り上がり、共感しあえるのがスポーツの醍醐味だという。
一方サッカーやバレーボールなどの国内で人気の競技以外は、五輪以外であまり見る機会がないことも事実である。メダルを獲れば注目してもらえるだけに、五輪をはじめ大きな大会であればあるほど何としてでも勝ちたいという気持ちが選手たちに目覚める。
そこで出てくるのがドーピング問題だ。どこからがドーピングかという議論や、より厳しくなっているドーピング検査の現状について、一橋アナは具体例を挙げながら話した。

一概にスポーツの話と言っても、伝えられることはそれにとどまらず、スポーツを切り口として政治や経済、様々な分野とつなげることができる。一橋アナはスポーツ以外の分野にも自分の枠を広げていくことで成長を試み、より意味のある内容を伝えられるよう努めているという。
また、勝敗以外にも伝えられるメッセージがスポーツにはある。選手たちは勝てなかったとしても次の試合に向けてもう一度立ち上がる。勝てないまでも敗れない。チームメイトと共に、苦しい状況を乗り越え、一歩ずつ勝利に向かっていく。そんな選手たちの姿を伝えることも重要である。

講義の終わりにはインタビュー形式で学生からの質問も受け付け、時間いっぱいスポーツの魅力について語った。

感想

 どこからがドーピングか。その議論の中で一橋アナが例に出したのは、ブレードランナーと呼ばれる南アフリカの義足ランナー、オスカー・ピストリウスであった。彼はパラリンピックだけでなく、オリンピックにも出場し他の選手とも肩を並べて走っている。そしてオリンピックで彼が活躍したのは400M。断定はできないが、膝から下、疲れがたまらない足にとって、距離が長い方が有利であるという論が挙がっている。足が不自由であるため義足を使用しているが、それによって運動能力が向上するということがあり得る。これから先、さらに技術が発達すればより重要な議論になるだろう。義足、義手、あるいは視力や聴力を補うための眼鏡や補聴器、何を基準にどこまでを良いとし、どこから先はいけないのか。
私自身、小中高とバスケットボールをやってきたが、膝の怪我に悩まされる日々であった。両膝の手術に踏み切り、人工靭帯で固定しているため、「どこからがドーピングか」という議論を聴き、はっとさせられた。当時の自分は「みんなと同じようにコートでプレイがしたい」という一心であったが、では“みんなと同じ”の基準は何なのか、今まで考えたこともなかった。医療技術も日々進歩している。義足と同じように、ドーピングの議論に挙がる日も近いかもしれない。
スポーツの魅力を語る一橋アナの言葉を聴き、部活に明け暮れた日々を思い返した。嬉しいことや楽しいことよりも、辛いことや苦しいことの方が多かったように思う。それでもなおバスケを続けた理由を挙げるのであれば、「バスケが好きだから」ただそれだけであり、出会えた仲間は一生の宝物である。
バスケを始めなかったら……違う競技を選んでいたら……。考えたことは幾度となくあるが、いつでも辿り着く答えはひとつであった。「現世はもうバスケに出会ってしまったのだから仕方ない」 そう、私もスポーツの魅力にとりつかれた1人だ。そしてきっと、ある競技と巡り合って虜になるのも、試合を観て興奮するのも、懸命に闘う選手たちを応援したくなるのも、理屈ではなくて本能である。
ついに開幕したW杯。世界中がサッカーで盛り上がる1ヶ月が始まった。多くの人々がスポーツに魅せられる予感。遠き地ブラジルのピッチを駆け回る選手たちに届くよう、日本からエールを送りたい。

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