2008年度研究会報告
第4回(2009.3.30)
テーマ | Die Phänomenologie und die Kategorien der Erfahrung 「現象学と経験のカテゴリー」 |
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報告者 | ラズロ・テンゲイ(ドイツ・ヴッパータール大学教授) |
報告の要旨
2009年3月19日(木)14時より、立命館大学創思館カンファレンスルームにて、ラズロ・テンゲイ氏(ドイツ・ヴッパタール大学教授)をお招きして講演会が開催された。演題は『現象学と経験の諸カテゴリー』である。司会を和田渡氏(阪南大学教授)、通訳を田口茂氏(山形大学准教授)にそれぞれ担当して頂いた。
テンゲイ氏は、フッサールが、何か新しいものが意識に不意に降りかかるような受動的な経験を考察していたことに注目する。そうした受動的な経験とは、何らかの対象に意味を付与するような意識の能動的な作用に先立つ経験である。例えば、「思いつき」は、自己の中で自然に何かが生まれてくるような経験であり、自発的に何かを求めていく事態ではない。我々は、「思いつき」によって、新たに何かを意味付けていこうとする際のきっかけを受け取るのである。不意に、自然に生まれてくるこうした経験の探究を視野に入れることで、氏はフッサール現象学に新たな展開の可能性を見出すのである。
当日は他大学からも多数の参加を頂いた。講演終了後の質疑応答では、テンゲイ氏には多彩な質問が提出され、活発な議論が展開された。テンゲイ氏がそれぞれの質問に誠実に応答していた姿が深い感銘を残した。
黒岡佳柾