2015年度研究会報告
「グローバル化とアジアの観光」研究会(2015.10.17)
テーマ | 「イリオモテヤマネコをめぐる人びとの生活から見る世界自然遺産」 Rethinking the World Nature Heritage from the view of Local Resident's Daily Life over Iriomote Wild Cat |
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報告者 | 古村学氏(宇都宮大学国際学部) |
キーワード
世界自然遺産、西表、イリオモテヤマネコ、日常生活、グローバルとローカル
Key words
World Nature Heritage, Iriomote Island, Iriomote Wild Cat, Daily Life, Global and Local
報告の要旨
西表島は、日本における次の世界自然遺産候補「奄美・琉球」の重要な構成地のひとつである。
現在、世界遺産登録に向けて、西表島では国立公園の拡大など整備が行われており、シマの人々の関心が高まりつつある。
この西表島の社会において、世界自然遺産登録がどのようにとらえられているのか、さらには、どのような意味を持つのかを考察することが本報告の目的である。
とくに本報告では、人びとの日常生活の中におけるイリオモテヤマネコを中心とした野生生物とのかかわりに注目することにより、
外部からもたらされる自然保護が島の社会に与える影響を見ていきたい。
これは、自然保護というグローバルな価値観が、シマの生活に埋め込まれたローカルな価値観へ与えてきた影響を見ることへとつながる。
そのうえで西表島社会の一つの姿を明らかにしていきたい。
テーマ | 「インドネシア・バリ州における世界遺産登録」 World Heritage and Tourism Development in Bali |
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報告者 | 井澤友美氏(立命館大学国際関係学部) |
キーワード
インドネシア、バリ、世界遺産、国際協力、スバック
Key words
Indonesia, Bali, World Cultural Heritage, International Cooperation, Subak
報告の要旨
インドネシアのバリ州で初の世界遺産となる「バリ州の文化的景観:トリ・ヒタ・カラナ哲学に基づくスバック灌漑システム」が2012年に登録された。
スバックとは、稲作のための灌漑組織を指す。
バリは、インドネシアを代表する国際観光地に発展した。
観光開発が盛んになる一方で、かつてバリの経済成長を牽引してきた農業セクターは衰退の傾向にある。
バリの観光資源はバリ・ヒンドゥーを基軸とした文化であるが、それは農業と深い関わりをもつ。
よって、スバックに基づく農業の弱体化はバリ文化の衰退、果ては観光セクターの減退をもたらすという懸念の声につながっている。
このような課題に直面するバリでは、世界遺産登録がスバック・システムを保存する最後の手段になるとして期待が高まっている。
では、実際にはその登録は地元にどのようなインパクトをもたらしているのであろうか。
それは世界遺産条約の理念や地元の期待に沿うものであるのか。
世界遺産登録後のスバック・システムはどのような状況にあるのであろうか。
本報告では、筆者のフィールドワークに基づき、世界遺産登録後のスバックの保存問題を分析する。