2008年度研究会報告
第5回(2009.3.29)
テーマ | 『自由論』におけるシェリングの人間性概念 "Schellings Humanitaetsidee in der Freiheitsschrift" (Schellings idea of humanity in his writing "freedom, 1809") |
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報告者 | エルケ・ハーン(ベルリン・シェリング研究所主任研究員) |
報告の要旨
回復研講演会では、エルケ・ハーン博士(ベルリン・シェリング研究所主任研究員)をお迎えし、「『自由論』におけるシェリングの人間性の観念」と題して、ご講演いただいた。今回の講演会の開催にあたっては、日本シェリング協会に共催いただいた。
この講演でハーン博士は、人間性の根本を「自由」としてとらえ、しかもそこに人間の有限性と「悪」の問題を見たシェリングの哲学を解説しながら、人間の理性的ふるまいが歴史的には疎外された世界を生みだしてきた経緯をシェリング哲学の観点から描き出し、シェリングの哲学において「愛」の思想が、これらの疎外を生みだした有限な人間理性を越えるものとして語られていることを明らかにした。今からちょうど200年前に出版されたシェリング『人間的自由の本質』が、環境問題や労働問題など多くの問題を抱える現代の人間の在り方をするどく予見するものであったことが、聴衆に感銘を与えた。
講演終了後、シェリング哲学の研究者から多くの質問が出され、講演会は活気のあるものとなった。
加國 尚志