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本学総合科学技術研究機構客員協力研究員・塚本敏人先生が本学部教授・橋本健志先生らと取り組まれた研究成果が「Scientific Reports」に原著論文として掲載されました。

 本学総合科学技術研究機構スポーツ健康科学研究センター客員協力研究員・塚本敏人先生(早稲田大学スポーツ科学学術院講師)が、本学スポーツ健康科学部教授・橋本健志先生らと共に取り組まれた研究成果が「Scientific Reports」に原著論文として掲載されました。

https://www.nature.com/articles/s41598-023-48670-9

 運動誘発性疲労の原因など、「乳酸」は悪役として誤認されてきました。近年では一転、運動時の重要なエネルギー基質であり、運動の健康増進効果をもたらすエクサカイン(運動をした時に、様々な臓器が産生する生理活性物質の総称)でもあるといった乳酸の好適な作用(用量依存)が明らかにされています。本研究では、静的休息を挟んで運動を反復したとき、運動によって増加する血中乳酸濃度がどのような影響を受けるのか検証しました。
 一般的な運動処方として、1日の中で数回に分けて運動を行うことが推奨されています。しかしながら本研究では、静的休息を挟んで同じ中強度の有酸素性運動を反復した場合、1回目の運動と比較して、2回目の運動によって増加する血中乳酸濃度が低くなることを明らかにしました(研究1)。これは、運動時に供給される乳酸が好適に作用する臓器(脳や心臓など)において、その運動効果を減弱化させる生理現象であるかもしれません。
 健康増進のための運動処方として、体重減少などを目的とする有酸素性運動と筋量増加などを目的とするレジスタンス運動の双方の運動様式に取り組むコンカレント運動プログラムがあります。我々は、研究1の知見を受けて、有酸素性運動を実施した後にレジスタンス運動を行うと、レジスタンス運動によって増加する血中乳酸濃度も低くなるのではないかと仮説を立て、その検証を行いました(研究2および3)。もしこの仮説通りであれば、コンカレント運動の実施順序(有酸素性運動→レジスタンス運動、あるいは、レジスタンス運動→有酸素性運動)が、血中乳酸動態に影響すると考えられました。しかしながら、レジスタンス運動前に有酸素性運動を実施してもしなくても、レジスタンス運動によって増加する血中乳酸濃度は同じ水準でした。なお、有酸素性運動前にレジスタンス運動を実施してもしなくても、有酸素性運動によって増加する血中乳酸濃度も同じ水準でした。つまり、コンカレント運動のように、異なる様式の運動に取り組む場合、運動を繰り返しても乳酸産性能には影響しない可能性を明らかにしました。
本研究は、一般的な運動処方の良い効力を少しでも引き出す理論構築のための基礎研究として、重要な意味を持つと考えられます。

The lactate response to a second bout of exercise is not reduced in a concurrent lower-limb exercise program
Tsukamoto H, Suga T, Dora K, Sugimoto T, Tomoo K, Isaka T, Hashimoto T.
Scientific Reports. 13, 21337, 2023.
doi: 10.1038/s41598-023-48670-9

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