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2017年度公務研究科シンポジウム「自治と地域創生」を開催しました

2018年1月14日(日)、朱雀キャンパス1階多目的室にて、2017年度公務研究科シンポジウム「自治と地域創生 -Think Globally, Act Locally-」を開催しました。学内外から130名を超える、非常に多くの皆様のご参加がありました。このシンポジウムは、「中央」と対置される「地方」ではなく、「地域」での取り組みや自治のあり方について「神山と学ぶ」ことを大きなねらいとしています。それは、ポスターやチラシ(リンク先を参照)に記されているように、徳島県神山町・認定NPO法人グリーンバレーの活動を通じて、地域づくりの「ノウハウ」ではなく、その背後にある「思想」について考えることでもあります。シンポジウムの冒頭では、パネルディスカッションのコーディネーターを務める立命館大学名誉教授(初代公務研究科長)の水口憲人先生から、以上のようなシンポジウムの趣旨についてご説明いただきました。

続いて、認定NPO法人グリーンバレーの大南信也理事長より、「日本の田舎をステキに変える! ~徳島県神山町における創造的過疎の取り組み~」というテーマで基調講演が行われました。「創造的過疎」の基本的な考え方や「神山プロジェクト」の取り組み、サテライトオフィスの各事業や移住者の多様な営み、神山町創生戦略の策定等についてのご講演を通じて、新たな人材の集積が地域内にサービスを生み出し、それが農業と結びつくことで「地域内経済循環」が創出されている神山「地域」の現状をお話しいただきました。また神山町では、「まちを将来世代につなぐプロジェクト」などを通じて、現在進行形で「可能性が感じられる状況づくり」が進められています。

大南理事長の講演に引き続き、大阪市立大学名誉教授の加茂利男先生より、「世界から地域をながめ、地域から世界を考える」という論題で基調講演が行われました。従来の「田園回帰モデル」と「神山モデル」の対比や、戦後の「地域づくり」が神山と同様にハウ・ツーではなく信念や思想によってなされてきたこと、「地域から世界、世界から地域」という思考のフィードバックがグローバル時代の地域づくりにとって必須であること、「思想」の担い手である「異質な人」の集積が創造を生み、それを可能にする「寛容さ」が重要であることなどについてご講演いただき、また、人口減少とグローバル化の中での「現代地域づくりのディレンマ」についてもご指摘がありました。

そしてシンポジウムの後半では、お二人の基調講演を受けて、水口憲人先生をコーディネーター、大南理事長、加茂先生に加えて公務研究科教授の久保田崇先生、同助教の苅谷千尋先生をパネリストとしたパネルディスカッションが行われました。まず、苅谷先生より「地域創生の思想を考えるヒント」として、なぜ神山町が「ステキ」であり、「自由」や「楽しさ」がみられるのかという問いを出されました。先生は、「都市〔国家〕は市民がつくる」というJ=J・ルソーの言葉を導きの糸として、自治を鍵概念におき、またグローバリゼーションや職業倫理という観点も加味して、神山町の取り組みを掘り下げました。続いて、久保田先生からは神山町の取り組みが「人」にフォーカスを当てており、またB級グルメといった「形」から入るものではないことについてコメントをいただき、そして、特に大南理事長の基調講演に対しては、移住者(テナント)の逆指名を行う際の地権者との調整、総合戦略の策定メンバー以外からの反発、アーティストインレジデンスとワークインレジデンスの導入順についてのご質問がありました。

苅谷先生、久保田先生のコメントやご質問を受けて、水口先生のコーディネートのもと、パネラーによるレスポンス、また、フロアからの質疑応答が行われました。パネルディスカッションの最後には、水口先生より高齢者との関係や都市的なものに対する「余白」、「共鳴板」としての神山といった観点から、結びの言葉がありました。

また、シンポジウムに引き続き生協ラウンジにて「交流会」が行われ、シンポジウムのご登壇者をはじめ学生や教員、自治体関係者など多くのご参加があり、院生が自治体職員から研究に関するアドバイスをいただくなど、リラックスしながら、しかし知的な刺激を得られるような交流がなされました。この交流会は公務研究科院生が中心となって進められ、神山町の「フードハブ・プロジェクト」の商品や大南理事長、加茂先生のご著書がプレゼントされるなど、非常に楽しい一時となりました。

公務研究科シンポジウムは来年度も開催されます。その際は、またご来場の皆様と「聴きあい、話しあい、ともに考える」そして「響きあう」機会にもなりますことを、楽しみにしています。