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工藤啓氏(認定NPO法人育て上げネット理事長)をお招きして、合同リサーチ・プロジェクトを開催しました

2018年6月28日(木)、朱雀キャンパス307教室にて、認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長の工藤啓氏をゲスト講師としてお迎えして、合同リサーチ・プロジェクトを開催しました。

工藤氏は2004年にNPO法人育て上げネットを設立し、若者の就労支援、経済的自立への支援に取り組んでおられます。人口減少社会において希少財になりつつある若年世代への支援は、社会投資としても大きな意味があります。工藤氏は、誰もが無業になる可能性があるにもかかわらず、一度、無業状態になると抜け出しにくい「無業社会」の現状や、求職活動の有無や就職を希望しているか否かによって若年無業者には異なるタイプがあること、無業である理由や無業者の置かれている状況などについて、データやご経験を通じてお話しくださいました。そして、若者へのこれからの支援として、相談を経て支援が始まる前の段階での、要支援者の「来られない」を前提とした支援が必要であることをお話しになりました。

また、NPOとして活動する際には、支援が必要な当事者のみならず、活動を支援してくれる「第二顧客」の獲得が大事であることに言及されました。工藤氏は、感情に訴えて共感を得るだけではなく、データを示し、論理的な説明を通じてアプローチすることで、企業からの支援など、活動への賛同者・支援者を増やしてきたことを述べられました。さらに、質疑応答などを通じて、公的機関との連携に際しては予算の使途が決まっており、個別対応が難しくなるといった事情が生じることや、若者支援における高齢者の役割などについてもお話しいただきました。

講義の後半では、工藤氏より「今後の働き方」や「新しい就業支援のあり方」について問いかけがなされ、院生はグループに分かれてそれらの論点について話し合いました。SNSなどを利用した働き方について、経済的自立やコミュニケーション能力などの観点から、それぞれに意見が示されました。即座に多くの収入が得られないとしても、新しい「稼ぐ手段」を知り、働く自信をつけるといった点に視野を広げるならば、それらの「新しい働き方」には可能性がみられるのではないでしょうか。

工藤氏のお話からは、若者支援への強い「情熱」と同時に、状況を把握・分析し、支援を集め、NPOを経営していく「冷静さ」の両方を感じ取ることができたと思います。公務研究科は、修了時に学生が身につけておくべき能力として、社会や人間の行動を観察・分析・理解できる「基礎体力」や、「公共問題」に向き合う「志」など4つの項目を掲げています。院生の皆さんが、それぞれに感じたことを活かして、修了までの時間を有意義に過ごしつつ、これらの能力を獲得されることを期待しています。