オープンゼミナールで
「AI兵器の脅威と国際法における
今後の課題」を発表

渡辺 亜海さん、有馬 秀斗さん
国際関係学部 3回生(西村ゼミ)

2019年度オープンゼミナールの発表で関心を集めた「AI兵器の脅威と国際法における今後の課題」。国際法を専門分野とする西村ゼミのチームです。このテーマを選んだ理由や、オープンゼミナールでどのようなことを学んだかについて聞きました。

自律型AI兵器の「責任の所在」について
国際合意をはかることが今後の課題

最初に、お二人が国際法のゼミを選んだ理由を教えてください。

有馬最初は国際文化研究に関心があったのですが、基礎科目で幅広く学ぶ中で、世界を形作っているハード面について深く知りたいと政治に興味を持つようになりました。2回生の時に政治関連の科目を履修しているうちに国際法と出会い、興味を持ってこのゼミに入りました。

渡辺私はもともと政治に興味があったので、政治関連の科目を中心に履修していたのですが、国際政治の問題は結局ルールの問題ではないか?と考えるようになり、国際法に興味が湧きました。国ごとに国民性も文化も異なり、国家のように取り締まる警察もいない中、それでも各国が守ろうと努力しているルールである国際法の持つ意味を探りたくなったんです。

オープンゼミナールに向けてどのような準備をしましたか?どのような発表をしたのですか?

有馬まずはテーマを決めようと、たくさんの案を出し合いました。国際法にはどうしても堅苦しいイメージがあるので、できるだけ身近な話題で、国際法に関係あることをテーマにしたいというのが共通認識としてありましたね。

渡辺ちょうどその頃、ドローンの遠隔操作によってサウジアラビアの石油施設が攻撃されるという事件があったんです。それでAI兵器に関する国際法はどうなっているのだろう、という疑問からテーマが決まりました。

有馬次に、地域ごとに分担してAI兵器に関する情報を調べていきました。最終的にはレジュメ2枚とポスター1枚にまとめなければならないのですが、調べる範囲は広くして、その後トピックを絞るという方法をとりました。その中で、人の命令なしに作戦を実施できる「LAWS(自律型致死性兵器システム)」に注目しました。

渡辺私たちは、AI兵器使用の最も大きな問題点は、人が命令せずとも作戦が実行されるために「責任の所在が不明であること」ではないかと考えました。殺人の責任は殺人を犯した人間にあります。しかし、AI兵器は人間のように責任をとることはできないからです。

有馬AI兵器開発に関する国際法を作ろうとする動きは以前からありました。対人地雷など非人道的な効果を有する特定の兵器の使用を禁止・制限する「CCW(特定通常兵器使用禁止制限条約)」の枠組みでLAWSを規制しようというものです。2019年にLAWS規制の指針を盛り込んだ報告書が採択されましたが、法的拘束力がないなど、今もさまざまな課題が残されています。

渡辺私たちは、国際法の観点から、条約の法制化において、まず「責任の所在」を明らかにすることが重要ではないかと考えました。AI兵器の作戦によって非人道的なことが起こった場合、責任を取るのは兵器開発者なのか、所有者なのか。この問題についてまだ国際的合意がとれていないことが今後の課題ではないかと結びました。

とても興味深い内容ですね。準備を進めるにあたって大変だったことはありますか?

渡辺実はこの時期、ゼミ生全員が法学部と合同で行う国際模擬裁判の準備も行っていたので、ものすごく忙しかったんです。SNSよりも直接顔を合わせて話し合う方が結局は効率的だと感じたので、ゼミ終わりや昼の時間になんとか集まって進めていました。

有馬AI兵器はまさに今起こっている問題なので、環境問題などに比べると、書籍も判例も少なく、資料探しが大変でした。逆に言えば、自分たちもよく知らないことをテーマにしたことによって、調べていく中で学ぶことができたのは有意義だったと思います。

渡辺授業の中では、今まさに動いている国際法を扱うことはほとんどないので、難しい反面、とてもいい学びの機会だったと思います。先生も、国際法の雑誌に関連の記事が載っていれば教えて下さるなど、さりげなくサポートしてくださいました。

西村ゼミ 有馬 秀斗さん(左)、渡辺 亜海さん(右)

国際法は堅苦しいものではなく
身近な問題に関して今現在も動いている

オープンゼミナール当日の手ごたえはいかがでしたか?

有馬企業の方をふくめ、さまざまな方が来てくださって、質問もしてもらえました。質問によって自分たちが見落としていた点に気づくなど新たな発見もありました。私たちにとっては当たり前のことでも、他の分野の人にはわからないことも多くあるということにも気づかされました。

渡辺思ったよりも興味を持ってもらえたと思います。他のゼミはソフトな内容が多く、やっぱり国際法は内容が硬いかな?と思ったのですが、「国際関係学部らしい内容でしたね」というコメントもいただけたのは嬉しかったですね。細かい内容まで知っていただけなくても、国際法は今現在も動いているということを少しでも感じてもらえる発表になったかなと思います。

有馬AIは現在進行中で、まだ結論が見いだせていないテーマです。だからこそ、発表を聴いてくださった方は今後の動向にも注目していただきたいと思っています。そういう意味では「今後どうなるんでしょうね」というコメントをいただいた時は、意図が伝わっていると嬉しく思いました。

渡辺条約の締結には、定義を決め、合意を結ぶことが大切なのですが、この問題に関しては国ごとの技術の進歩に差がありすぎて、国家間の合意がとれない状態になっています。従来とは違う新しい国際法の作り方が問われているのではないかと思いました。そのことも伝わっているといいなと思います。

オープンゼミナールに参加して良かったと思いますか?

渡辺はい。ゼミ同士のつながりができた良い機会でした。法学部との合同ゼミで国際模擬裁判に取り組んだ時、本当に学ぶことが多かったので、学部内のゼミ同士、たとえば国際政治のゼミと国際法のゼミでコラボができたらいいのではないかとも思いました。

有馬ゼミで取り組んだことをゼミの外で発表する機会があまりなかったので、今まで少し内向きになっていたかなということに気づくことができました。他のゼミの発表を聴くことで、発表内容や見せ方など学ぶことも多くありましたし、興味の幅も広がりました。

オープンゼミナールの経験は、ゼミの学びにもつながると思いますか?

有馬これから卒論を書くにあたって、テーマの選び方、文献の探し方などで参考になると思います。私は国家と個人の関係に興味があるので、これからさらにテーマを絞って研究を進めたいと思っています。

渡辺オープンゼミナールを経験したことによって、これまでは国際法に関して過去のこと、細かい法の解釈ばかりに目を向けていたということに気づきました。今は、もっと視野を広げて国際法を見ることが必要だと思っています。卒論では、国連総会でも採択された「平和への権利」という主張について考察し、個人の人権を保障する国際人権法の分野でそれがどのように評価され、今後どのように扱われていくのかについて、より深く研究したいと考えています。

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