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2006年4月に開設された立命館小学校は意欲的な学習方法で話題を集めています。今回のインタビューでは、立命館小学校の特徴的な学びである「辞書引き学習法」の第一人者であり、2006年4月より立命館小学校教頭になられた深谷圭助先生に、立命館小学校の学び、その学びの特徴についてお話を伺いました。

立命館小学校教頭
深谷圭助 先生

温故知新

立命館小学校では「温故知新」を大切にし、それを学びへの取り組み方の一つのキーワードとしています。電子情報ボードやタブレット型コンピューターなどのハイテク機材だけでなく、紙の辞書や百ます計算など、昔から変わらないものの両方を目的に応じて取り入れているのが特徴です。例えば、電子情報ボードは紙で教材を作るより準備も簡単で、なによりリアリティがあります。テンポよく映像やデータを示すことで、児童が興味をそらすことなく、集中して授業を進めることができるのです。授業とは目的があって、その目的にアプローチしていくものです。児童に対して授業の目的をはっきりと示すためのツールとして、立命館小学校ではハイテク機材と昔から使っている教材の両方を活用しているのです。

 

基礎の重要性

読み、書き、思考力、分析力などの基礎的な力をつけるためには、日々の取り組みが不可欠です。立命館小学校では、その基礎的な力を鍛える方法として、「辞書引き」 や「百ます計算」といった従来の小学校教育と変わらないものも取り入れています。しかし、それを徹底的に行なうのが特徴です。

朝の「モジュールタイム」という時間では、脳の活性化のために音読や百ます計算といった基本的なことを繰り返します。脳を十分にウォームアップさせた状態で授業に望むことにより、児童の集中力や吸収力が向上します。辞書引きでは、なにか言葉を調べたら辞書に付箋をどんどんつけていくことを約束としています。多い児童では3000枚、少ない児童でも1000枚近くの付箋が辞書に張られていますね。

児童は、付箋が増えていくことがおもしろくなってどんどん言葉を引いていくようになります。小学校時代の児童というのは、ある意味「その日暮らし」です。今を精一杯生きているといっていいでしょうね。「今」に集中しているので、長期的なビジョンや目標はなかなかイメージできません。具体的な目標を定めるのは難しいんです。その点、辞書引きでは「付箋が増える」という目に見えるかたちで、自分のがんばりを表現できるので、児童が精一杯取り組むのです。いきなり大きな段差を上らせるのではなく、小さな段差をどんどん上らせていくことで子供が成長していくのだと考えています。

 

ステップアップ

小学校1年から4年までは、まず小さな階段を上らせるように課題をクリアしてきます。しかし、もちろん長期的なビジョンを持った教育も必要です。その長期的な視点から教育を行なえるのも一貫教育の大きな特徴であり、強みであると思います。立命館小学校では、1年から4年までを第1ステージとして、基礎的な力の育成に注力し、残りの2年間に中学1・2年を加えた4年間を第2ステージと呼んで、自分と向き合うキャリア教育を導入していく予定です。立命館の卒業生には、社会で活躍している方が大勢いらっしゃいます。そのような方々を立命館小学校に招聘して、児童の指導を行っていただきたいですね。それが総合学園としてのメリットだと思います。

 

立命館小学校のこれから

第1期生である現在の3年生が大学に入学するまではまだ時間があります。それまでに、立命館小学校だけでなく学園一体となって「立命館」アイデンティティを作りあげていきたいですね。大学までの一貫教育の第1ステップとして、中・高・大に繋げることのできるような確かな力をはぐくんでいきたいと考えています。

取材・文 辻 健太郎(経済学部3回生)
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