医療の費用対効果を考える

#031
生命科学部 助教村澤 秀樹

 高齢化によって医療費が増大しているといわれますが、その原因は、高齢化よりもむしろ「医療の高度化」にあると考えられます。医療費の増加を抑えるには、最先端の医療技術を取り入れて、質の高い医療レベルを保ちながら「医療の効率性」を高めるしかありません。

 なデータに基づいて医療の効率性を比較するのが、医療の「費用効果分析」です。これは既存の医療を用いたときの生存年数と、新しい(新薬による治療など)を受けた時の費用と生存年数の増加を、生活の質の変化も考えて比較する方法です。これをもとにして、重い病気になったとき、その費用あたりの効果がどの程度なら、薬や治療の支出増加を受け入れた方が良いのかを、科学的に検討できます。高額でも治療効果の高い新薬を選ぶか、従来の医薬品を選ぶか。どちらが経済的でかつ満足度の高い生存期間を延長できるのかを比べることができます。

 「医療の質」をあげることにより、限られた資源(医療人材やお金などの資源)を効果的に使用でき、持続可能な医療制度を構築できるでしょう。そしてそれは、平均寿命をのばすだけでなく健康寿命をのばすことにもつながっていきます。

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