2011年、中東のシリアで紛争が始まりました。「21世紀最大の人道危機」といわれる激しい戦火の下、総人口の半数以上が国内外への避難を余儀なくされ、すでに数十万もの人が命を落としています。
中東の紛争や政治的混乱には、私たちには計り知れない特別な原因があるものと見られがちです。たとえば、イスラームという宗教や大量の石油生産といった、この地域に固有なものに注目することで、中東の政治を理解できると考えられてきました。
しかし、それは本当なのでしょうか。そこで、2017年、シリアとイラクでそれぞれ1000人規模の世論調査を実施しました。そこからは、私たちが抱きがちなイメージからではなかなか見えない、現地の人々の考え方や姿勢が浮かび上がってきました。
これまで中東の政治について一般的に語られてきたことや「常識」とみなされてきたこととは異なる姿をとらえる―― 一見、異質に見える中東の紛争の原因やメカニズムも、案外この地域に固有なものではないものかもしれません。そして、それこそが、中東政治を「よりよく」理解する鍵となるのです。