」とされた宗派の言葉を読み解き、
知られざる思想に迫る

『崇高なる読誦』La Nobla Leyczon (Mss.C.5.21., Trinity College Library of Dublin)

#091
政策科学部 准教授有田 豊

 中世ヨーロッパで生まれたキリスト教の一派である「ヴァルド派」は、1184年に「(正統から外れていること)」とされてからも、現在にいたるまで活動を続けています。そんなヴァルド派が中世期に書き残した文書の数々は、まだほとんど解読されていません。当時の彼らは、一体どのようなことを考えていたのでしょうか。

 ここで紹介する「なる」という文書は、今から500年ほど前に、ヴァルド派信者たちが、自らの思想を詩の形にして記したものです。今では使われていないアルプス地方の方言で書かれており、辞書も、文法書もありません。そのため、同じ時代にアルプスの周辺地域で使われていた別の言語(中世オック語、中世フランス語、ラテン語など)と比較しながら、一単語ずつ解読を進めました。

 そして分かったのは、中世のヴァルド派信者たちが、「カトリック教会からされている自分たちこそが聖人であり、正当な使の後継者である」と考えていたことです。ヴァルド派は、の記述を非常に重要視する宗派と言われているのですが、肝心の聖書を読み違えていたりすることもわかってきました。このように、ヴァルド派が残した文書をひも解くことによって、知られざる思想が少しずつ明らかになってくることでしょう。

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