太平洋戦争末期、激しい地上戦が繰り広げられた沖縄。70年前、この沖縄の地で多くの人々が亡くなった。今年2月、戦没者の遺骨収集のボランティアに参加し、ガマを塞ぐ岩や土砂を取り除いていた市場涼さんは、土砂の中から兵士の遺品、「灰原」と刻まれた印鑑を見つけた。


遺骨収集では、軍服や万年筆、メガネなど兵士の所持品も発見されているが、その遺品が遺族の元に届けられることは簡単なことではない。しかし、今回、市場さんが発見した印鑑の所有者と推測される兵士の遺族が偶然見つかり、市場さん本人が兵士の甥にあたる遺族の元へ印鑑を届けた。遺品を手にした遺族の方の「これでやっと灰原家も終戦した」と呟いた言葉が市場さんの胸を打った。


遺骨収集を行った場所は、人の手が付けられていないガマだった。終戦から70年が経った現在もこうして放置され、戦没者たちは戦争で命を奪われただけでなく、亡くなった後も誰にも気づかれず、土に埋れ眠っている。そんな現場に直面した市場さんは「未だに見つけられずに眠ったままの方や、どこで亡くなったかもわからず、遺骨さえ戻ってこないご遺族の方のことを考えると戦争は命を奪うだけでなく、残った人々にとっても残酷なものだということが分かりました。」と語ってくれた。

現地では元白梅学徒隊の中山きくさんから学徒隊の役割や防空壕の中で行われていた手術など、生々しい当時の様子をうかがった。そして中山さんは市場さんたちに力強く訴えたという。「戦争は急に起こるものではない、戦争をとめるための行動をしてください」

この活動に参加するまで、“戦争”を“歴史”として学び、戦争について“やられたら、しかたがない”そんな風に考えていた市場さんだったが、この活動を通じて考えが大きく変わったそうだ。「一旦争いがなくなったからといって、ずっと平和が続くわけではないのだと思います。一時的に平和になっても、平和のためのに行動し続けなければ、平和は崩れてしまうし、また争いが始まってしまうのだなと思いました。」また、実際に戦争を経験した人とは戦争の捉え方が全く違い、経験者にとっては「戦争が仕方ないという考えは絶対ない」ということに気づいたという。


戦争を経験した方々も今は高齢者。今後戦争を伝えていく難しさも感じている。中山さんの生の声を直接聞いたからこそ、中山さんの想いを感じることができた市場さん自身も、活動を通して感じた感情が、活動直後に比べて薄れてきているという。「一回聞いた、感じただけでは、その時の感情や思いは徐々に忘れてしまうし、それで分かった気になっているような気がするので、活動を繰り返すことで、より深く感じ、学ぶことができると思っています。」“戦争をしない”この想いを胸に強く刻み、これからも平和のための活動を続けていきたいと語ってくれた。