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2017年度 立命館西園寺塾 7月22日講義「JAL再生と意識改革の必要性」を実施しました。

2017年7月22日(土)
 ・13:00~14:00 講義
          講師:京セラコミュニケーションシステム株式会社
                     顧問 大田 嘉仁
 ・14:15~17:00 ディスカッション


【指定文献】
 『JAL再生―高収益企業への転換』 引頭麻実【編】日本経済新聞出版社
 『稲盛和夫の実学―経営と会計』 稲盛和夫【著】日本経済新聞出版社
【参考文献】
 『心を高める、経営を伸ばす』 稲盛和夫【著】 PHP研究所; 新装版

 

▼受講した塾生のレポート(M.U.さん)
 今回の講義はJALの見事な再生を実例として、急速なAI化やグローバル化といった我々を取り巻く環境が大きくかわりつつある現代において、変化に強くかつ柔軟な対応力をもつ企業に改革する方法について学んだ。
 企業改革には構造改革と意識改革がある。構造改革だけがピックアップされるが、それは一時的な効果を得ても、やがて陳腐化してしまう。理由はいろいろ考えられるが、その後の環境の変化に取り残されてしまう、社員が1回の構造改革に満足してしまい現状に甘んじてしまう、一度の成功体験にしばられ、それが行動規範となり組織が硬直化してしまうなどである。
 むしろ大事なのは意識改革であり、意識改革が成功すれば、環境が変化してもそのときそのときで自分たちで考えて、スピードをもって対応できる企業風土ができあがり、その風土は継続する。
 では、意識改革とはなんであろうか。講義では6つの原則を学んだ。①自社の文化は自社でつくる。②リーダーから帰る、③全社員に一体感をもたせる、④現場社員のモチベーションを少しでも高める、⑤変化を起こし続けることで本気度を示す、⑥スピード感を重視する、である。
 そのなかで自分のなかで特筆すべきは③であった。JAL再生において、全社員に一体感をもたせるため、JALフィロソフィという行動規範を作成した。これを浸透させる過程で、まずは、部門間の壁をとっぱらった。かつ一番効果が大きいと感じたのが、社員共通の行動規範が出来ることで、社員一人ひとりの判断が会社の方向性、あるべき姿に反しない。そのため、社員に大きな裁量を与えることができる。逆に社員も自分で考えて判断する経験をつめる。このことが徹底されることで、段階的に上司に了解をとる、上司を使って根回したり調整したりするといった時間・労力を極力最小化することが可能となり、自分で考えるスピードのある組織となる。こういった組織はルールでがちがちになった、硬直した組織の対局にある。このような企業風土をもつ会社には細かいルールは邪魔になるだけだからだ。
 あわせてその意識改革を浸透させる方法が素晴らしかった。まずトップの意識改革を先行したことである。そしてその方法は短期かつ徹底的であった。トップが本気になれば、その浸透は早い。
 そしてフィロソフィー自体が秀逸であった。決して売上げをあげるためとか、社員に我慢を強いるものではなく、内容は性善説にたった、社員の幸せを第一に考えられたものであることから、社員にも受け入れやすいものとなっていた。グループ学習でフィロソフィーにある行動規範の内容は、会社の経営状況に埋没しがちだが、経営状況に関係なく一所懸命真面目にがむしゃらに働いている社員の普段やっていることをすくいあげるものであり、そういった社員を認めてあげるものでもあったから浸透しやすかったのではないかという意見もあった。そして、意識改革をはかることと並行して社内のシステムも改革している。主には稟議や人事等であるが、社員にとっては身近で大事なことである。会社が意識改革を一方的に図るだけでは冷める社員もいると思われるが、意識改革にあわせて、その効果が最大限発揮されるシステムに変えることで会社の本気度が社員にも伝わる。
 講義の最後は米ギャラップ調査の結果についての新聞記事であった。各国比較のなかで日本は「熱意ある社員」は6%のみであり、139ヵ国中132位という強烈な内容である。自分もつい思うところがあり、下を向いてしまったが、逆に6%しかいないのに日本は先進国の面目を保っているのだから、「まだまだ君たちにはやれる余地があるんだ」と大田顧問に大きく背中を押していただいた気がした。


 


▼受講した塾生のレポート(Y.N.さん)
 JAL更生という事例から、意識改革の重要性と、それが”可能”であることを、教えていただいた。
 指定文献(『JAL再生―高収益企業への転換』引頭麻実【編】日本経済新聞出版社)を読んで、なぜそこまで社員一人一人が変わることができたのか、正直、不思議に思っていた。
 大田先生のお話を伺い、会社更生法の適用や人員削減などを目の当たりにした社員たちは、自身とJALの拠り所、存在意義を感じられる”何か”に飢えていたのではないかと感じた。その”何か”に応えたのが、「人として正しいこと」に基づく共通の価値観=フィロソフィと、それを実行するために社内制度まで変えるという、経営者の示した”本気”だったのだろう。小手先の変更では、社員の心をつかむことはできない。稲盛会長(当時)の「社員への愛」と「絶対性善説に基づく信頼」も、社員たちに伝わったに違いない。
 その先には全社員が一体となった新しいJALがあると信じられたからこそ、一人一人が変わり得たのだと、納得した。「人間の心は変えられる」とおっしゃった大田先生の言葉は、とても重く説得力があった。

 質疑とディスカッションにおいても、京セラの事例や稲盛会長(当時)のお言葉など、貴重なお話を伺った。例えば「ホウレンソウ」に重点を置いた行動規範についての質問に関して、「(ホウレンソウは大事だが)京セラには根回しは全くない」と、きっぱりとおっしゃった。「階層をとばした相談」もOK。
 弊社の働き方改革の一環で、生産性向上の施策を職場で議論しているが、減らしたい負の時間の筆頭が、残念ながら「根回し」「同じ案件を何層にも報告」である。
 京セラの企業風土は、経営者の意思(=フィロソフィ)と、それに矛盾しない社内制度(=組織の主体性と組織間の透明性を支える、アメーバ経営・管理会計システム)の両輪から成っていると思う。とすれば、経営者ではない私自身には何ができるのか。現場からできることはあるのか。
 講義の内容や指定文献を反芻したが、やはり「人として正しいこと」に帰結するように感じた。

 「絶対性善説」と信賞必罰についての質問に関して、なかなか成果が出なくても、稲盛会長(当時)は機会を与え続けたというお話があった。その代わり「不正」は厳しく追及する。ここでの不正は、合法性だけでなく、人として・企業人として「正しくないこと」だと理解した。
 「(階層を重んじるのは)顧客より上司に気に入られたい、叱られたくないという”利己心”である」
 「社員を信用できないなら上司をやめろ」
 「プロダクトアウト型は”意図的”な顧客軽視」
痛烈な言葉である。そしてこれらは、現場リーダーにも通じる戒めである。
 社内制度を変えることは難しいかもしれないが、自分自身が「人として正しいこと」に判断基準を置き、発信し、議論することを、実践していきたいと思う。

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