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2017年度 立命館西園寺塾 8月5日講義「アメリカ海兵隊の知的機動力」「知的機動力経営」を実施

2017年8月5日(土)
 ・13:00~14:45 講義「アメリカ海兵隊の知的機動力」
            「知的機動力経営」
          講師:一橋大学名誉教授
                     野中 郁次郎
 ・14:45~15:35 ディスカッション
 ・15:35~17:00 発表・まとめ


【指定文献】
 『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』野中郁次郎【著】
 『知的機動力の本質 アメリカ海兵隊の組織論的研究』野中郁次郎 他【著】

 

▼受講した塾生のレポート(K.H.さん)▼
 指定文献を読み始める前には、アメリカ海兵隊の存在意義や、第二次世界大戦における日本軍の敗戦原因など、戦争に関する内容かと思いながら読み進めていたが、講義を拝聴してみると、経営論という内容であり、かつ現在我々が企業内において置かれている立場の「ミドル」に関するところは非常に印象深かった。
 仕事においては、とかく形式知化することを求められるが、アメリカ海兵隊では暗黙知を重視する現場マネジメントであり、この暗黙知によるマネジメントはアートであるといった視点は非常に斬新だと思った。形式知化は客観的であり継承しやすく、その反面暗黙知は主観的かつ直感的であることから、細かなニュアンス含めて非常に継承が難しい。それでも本田宗一郎氏はこの両方の相互作用をうまく引き出していたという話しを聞き、両立させることから引き出せる情報をうまく活用できることがマネジメントにおいては重要だということを知った。
 ディスカッションにおいて、我々のグループでは、トップとフロントを結びつけるにはミドルの役割が最も重要であり、その果たす役割によって組織の融合が生まれるといったことを議論した。いつの世も現場では、「そうは言っても上は現場のことをわかっていない」といった批判は表面化せず、社員の腹でくすぶっていることがよくある。そんな中社員に「理解・納得・行動」させるために、単なる伝書鳩ではなく、トップの思いをいかに現場に納得するまで話しをし、また現場の現状を受け止め、それをトップに理解させるといったトップへの教育もミドルとして果たすことで、このどちらからも共感を呼び、思いを共有できる環境になると強い企業文化を形成できる。ただし、これにはトップが実行に向けた仕組みづくり(what、whyの構築)と、やり方を現場に任せること(howの一任)のバランスが非常に重要であり、これさえできれば組織は回るということを学んだ。これをしっかり回していけるようにする為に、ワイガヤやコンパが役立ち、「小さく、速く、行動しながら微調整を」といったことで、より成果を発揮できるようになる。よく組織を回す際に耳にする「PDCA」サイクルよりも「OODA」を回すことが出来た先に、PDCAがあるということも大変参考になった。
 経営においては「二者択一(あれか、これか)」ではなく、「二者両立(あれも、これも)」にシフトできるようになるにはいかにミドルが活躍できる環境を作るか、さらにはそういった人材をいかに育成するかがこれからの時代では大きく問われる。これから自身がミドルとして役割を果たしつつ、普段の忙しさにかまけず、後継者となるミドルの育成をしていくことに時間を割いていくことの大切さを実感した。そういった意味においても、今回の講義は今後の企業人としてどう生きるかを考えるにあたって大いに役立つ内容だった。


 

▼受講した塾生のレポート(T.S.さん)▼
 「主観、五感を大切にする」。私の仕事経験での思いから、昨年から担当している社内意識改革のテーマと、偶然にも一致しており、とても嬉しく、興味深く拝聴した。「人の想い」を置き去りにした仕事が多すぎる、仕事において最も大事にすべき「人」を軽視すれば、絶対良い仕事にならず、よい経営に行きつかないという自分の日々の思いが、今回の講義にとても通じていたと解釈している。自分のアンテナがそこに立っているからかもしれないが、前半の西園寺塾の講義は、必ずと言っていいほど「対話」「共感力」が重要との視点が出てきており、自身の思いを強くしている(ただし、その具体的仕掛け、仕組みには苦慮しているところであるが)。
 近年の日本企業において不足しがちな共感力、人間の感性を大事にする経営。経済成熟による拡大発展の厳しさ、人手不足などから、効率のみを追求する方向へ走り続け、成果主義などもうまくいかなかった。忘れてはいけない家族型経営のよいところを今一度学び直すことが必要ではないかと感じる。あるべき論だけではなく、事実として起こっている現象から掘り起こし、修正を加えていく作業。今回紹介のあったいくつかの企業事例も極めて参考になった。野中先生の書籍でさらに勉強してみたい。若い世代に早くこの重要性を伝え、実践の中で体感させていかないと、仕事の仕方がどんどん閉鎖的になってしまう。コミュニケーション不足、縦割り、プレイングマネージャー化によるミドルの疲弊、若手の冷めた態度など自社特有の課題かと思っていたが、今回のグループワークで他企業でも同様な問題を抱えていることを知った。早急に、いやじっくりと、「チームで」よい仕事をする経営文化をつくっていかないといけない。一方で、効率化は徹底的に追求しなければいけない。時間を使うべきこと、緊急ではなくても重要な事項を定め、ミドル同士が話し合って自らの役割を定義づけ、文化を変えるよう行動、実践し、次世代へつなぐことしかないのではないか。動く人間が複数出れば、少しずつ変化することを期待し、動きたい。
 今回の講義でいただいたキーワードを反芻し、自分なりに理解した形で社内展開により、できる限り具体的な形に落とすよう実践を試みたい。

・数値だけに意味があるのではない。その背後にあるものを理解し、
 次につなげることが必要。
・マネジメントはサイエンスでありアートである。
「あれか?これか?」ではなく、「あれも、これも」、
 矛盾の両極にある背後からあぶりだす。
・存在論を問い続けることで、共通善、文脈が共有でき、進化を生みだす。
・ミドルが声を上げろ!現状を否定し知的論争を起こせ!強い企業文化は、
 必ず強いミドルがいる。
・アジャイルスクラム開発型、ホンダのワイガヤ
 (→チームプロジェクト手法として極めて興味深い、勉強してみたい。)
・PDCAの前にやることがある。See-Thinkを徹底的にやる。
・組織におけるコアスキルを育て、共感できる土台をつくる。
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