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2017年度 立命館西園寺塾 10月14日講義「文化力―日本の底力」を実施しました。

2017年10月14日(土)
 ・13:00~15:00 講義
          講師:静岡県知事
                     川勝 平太
 ・15:15~17:00 ディスカッション


【指定文献】
 『文化力―日本の底力』川勝平太【著】ウェッジ
 『「鎖国」と資本主義』川勝平太【著】藤原書店
 『鉄砲を捨てた日本人―日本史に学ぶ軍縮』
      ノエル ペリン【著】 川勝 平太【訳】中央公論社


 

▼受講した塾生のレポート(M.U.さん)▼
 現職の静岡県知事でもあり、高名な学者でもいらっしゃる川勝先生の講義は、地方都市の首長としての視点から、交通・教育・地方分権・後継者の考え方、そこから癌免疫療法であるオプジーボまで話が広がったかと思うと、そこに留まらず首都移転・4州制、そして学者としての視点で歴史をふりかえったうえで、これからの日本の目指すべき姿をご示唆いただくなど非常に多岐にわたった分野についてご教示いただいた。 
 そのなかで「振り返ること」が「未来をみること」と、一見矛盾するテーマをご提示いただいたうえで、「モノ」を例示されながらこれまでの日本の歴史を対比させて未来の目指すべき姿を示していただいた。具体的には奈良時代は朝鮮半島を経由した大陸文化を取り込み、いれきった時代であり、平安時代はその大陸文化から離れ、国風文化を醸成した時代。鎌倉時代・室町時代は南宋をはじめとして中国文化から南蛮文化まで取り込み、いれきった時代であり、江戸時代は鎖国により国内文化を醸成した時代。それではこれからの時代はどこに向かうべきなのかという課題に対して、明治・大正・昭和は、西洋文化を取り込み、いれきった時代として「東京時代」と位置付け、これからの時代は国内文化を醸成していく時代であるという捉え方である。しかし、それは江戸時代のように内に向かう文化の醸成の仕方ではない。日本式に醸成された文化を世界に発信していく、よりグローバル化を意識された視点であった。その文化は、日本は「和」であり、いろんなものを許す、足していくという寛容の文化であり、「Dreams come true in Japan」(日本に来れば夢がかなう)と言われる国を目指すという一連の流れは非常に腑に落ちた。
 私は長野で3年半、現在は中央に近いがやはり地方の顔をもつ神奈川で現在営業を担当している。投資が少ない地方において、その住民のみを消費者とした投資には限界があるし、特に「箱もの」と言われる地方住民で完結する地方自治体の投資は必ず税金の無駄遣いという批判を受ける。海外の観光客をいかに呼び込むか、いかに地方を活性化させるかは世界にその土地の文化を示していく、開いていくということに答えがあり、そのための投資をいかにつくり込むかといった地方における営業のヒントをいただいたと思う。
今回の指定文献での木綿や香辛料を媒介とした中世から近世の捉え方もそうであったが、講義では紙を媒介としての宗教革命の話をしていただき、先生の「モノ」を媒介として歴史の出来事をとらえていかれる説明は、学生時代に暗記の題材でしかなかった歴史の出来事を肌感覚でイメージすることができた。講義後帰宅して、受験生でもある息子に、講義の受け売りで「モノ」を媒介とした宗教革命や海洋史観に基づいた中世から近世について話してやった。「とてもわかりやすい」と言ってくれた。父親としての株が少しあがったようだ。

 

▼受講した塾生のレポート(A.M.さん)▼
 第二次世界大戦以前までは軍事政策を中心に国家が形成され、最終的には米国との経済力の格差で敗戦に至った。戦後は経済政策に基軸がおかれ、高度経済成長を実現、20世紀終盤には世界経済を席巻するまでに飛躍した。そして現在では、人口減少、内需停滞により、民族としての成長の限界に直面している。
講義では川勝知事から、国の基礎は「力の体系(軍事政策)」「利益の体系(経済政策)」「価値の体系(文化政策)」の3つの体系で構成される、という理論が紹介された。
 経済力と軍事力は国力の両輪であり、両者のバランスが崩れると国としての安定性を失うことは数多の歴史が証明している通りだが、これに文化力も含めて国の基礎と整理する考え方には新鮮な気づきを得た気がした。
 文化のなかには、衣・食・住といった見えるものと、言葉や宗教といった見えないものが存在するという議論があった。確かに日本民族にとって、「見えない文化」のなかには「士道」や「和」、「絆」といった言葉で表される、「信義」「道徳」「受容・寛容」の風潮や、「匠」の技として脈々と承継されてきた技術や芸能、民族として永年育み重んじてきた伝統・慣行が存在する。
 文化には、国民の心の豊かさを醸成し、国力の両輪である経済力・軍事力とともに、国政の安定化をもたらす。それと同時に、民族文化への魅力・憧れが、諸外国からのインバウンド経済を活性化させるとともに、文化の広がりは経済圏の広がりに繋がり、アウトバウンドの経済政策としても有効となる。
 求心力がある文化は遠心力を以って広がり、文明は時空に偏在する、という話もあったが、日本民族が有する文化、特に民族に内在する上述の「見えない文化」には、十分、文明として昇華するだけの魅力と価値があると思う。
 元来日本民族は、応用・受容力には長けつつも、多くを語ることを美としない奥ゆかしさを重んじるが故か、交渉・発信力は得意とはしていないように思えるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催という日本文化の魅力を発信する絶好のチャンスを控えた今こそ、改めて国民一人一人が、我が国が育んできた文化の魅力を認識し、自らの言葉と行動により、また積極的に海外に発信していくことを心掛けていくことにより、我が国が誇る「見えない文化」を「見える化」していくことができれば、さらに遠心力を増して、魅力・憧れの広がりに繋げていくことができるのではないかと感じた。

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