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2017年度 立命館西園寺塾 6月24日講義「目指すべき社会を考える」を実施

2017年6月24日(土)
 ・13:00~15:00 講義
          講師:大阪大学大学院経済学研究科 教授
                     堂目 卓生
 ・15:15~17:15 グループワーク
 ・17:15~17:45 ディスカッション
 ・17:45~18:00 総括

【指定文献】

 『アダム・スミス―「道徳感情論」と「国富論」の世界』 堂目卓生【著】中公新書



▼受講した塾生のレポート(Y.N.さん)▼
 アダム・スミスのみならず、色々な考え方、その考え方が出てきた時代背景を丁寧に教えていただいた。
 「私たちが為すべきこと」についての講義の中で、最も重要=価値があるのは「行い」であるというお話がとても印象に残った。「行い(行動)」を起こすためには、問題を一般化せずに具体化すること、自分の問題に落とし込むことが重要なのだと、改めて感じた。
 グループディスカッションで「目指すべき社会」を構想したが、課題抽出においても社会・国家の問題のレベルにとどまってしまったため、自分たちの行動につながるような課題に結び付けることができなかった。例えば「自由な競争による社会の発展を阻む各国の保護政策」という課題が挙がった。自分の仕事に置きかえてみると、「自由な競争による通信業界の発展を阻む自社製品にクローズした販売戦略」と言えるのかもしれない。今の通信業界においては、明らかに「自社製品にクローズした販売戦略」ではなく「エコシステム構築型」のビジネスが求められており、我々も新しいビジネスモデルを模索しつつある。その時の課題は、エコシステムによるビジョンの構築と、自社の強みを明確に認識した上で、我々の「売り物」を定義することにある。「各国の保護政策」の問題も、自国の強みの認識とそれによる提供物(貢献)を定義することが第一ステップなのかもしれないと思った。
 自分の仕事に置きかえることで、課題がより実感できたと共に、自分が自身のフィールドにおいてやるべきことのヒントを得られた気がする。西園寺塾最初の講義「人類史からフィールドへ」での、「鳥の目と虫の目」のお話を思い出した。問題をグローバルに俯瞰(鳥の目)した上で、取り組むべき課題は虫の目を用いて考え、そして自分が「行動」することを、実践しなければと再認識した。
 また、行動を決める大きな要因として、「真」を追求するとは別の、「命の輝き」に根本を置き本能に根差した意思決定のサイクルをご提示いただいたことや、行動には必ずしも筋道の通るモチベーションがある訳ではないというお話も心に残った。意思をもって行動することの大切さは認識しているつもりだったが、知識を蓄える中で「何かを”感じるから”意思を持つのでしょう」というお言葉は目から鱗だった。 
 「真」の追求のみならず、「善」「美」に対する「感受性」を磨くことも重要なのだと理解した。
 「感受性」を磨くにはどうしたらよいのか、まだ整理がついていないが、頭で考えるのではなく、幅広い興味と、寛容さを持つことなのかもしれないと感じている。



▼受講した塾生のレポート(T.S.さん)▼
  共感すること、されることを中心とした感情、その感情に基づく行動、それら行動がもたらす様々な影響によって経済が動く。ミクロの世界でも、どうすれば財 やサービスが人の気持ちを動かすことができるか、購入に至らしめるか、これらの集合体で経済社会が成立。心理学的、哲学的にも思え、あまり意識していな かったが、社会が共感から始まっているという点、深く納得した。最近よく耳にし、自分もよく口にするが、「共感力」というキーワード、大切にしていきた い。
 今回の講義で示された「弱者を中心に据えた社会の成立」について、自身含め多くのグループが経済成長を目指しつつ両立させる方向でアプローチ した。これまでの資本主義の世界しか想像できないため、このアプローチになるが、経済成長を脇に置いて、人間、人類の幸福を目指す社会という広い視点での アプローチの順序にすると、新しい考え方が生まれるか。ベーシックインカムや社会主義的発想に近づくのかもしれないが、アプローチ方法を変え、発想転換し てみることから始めるべきか。答えはすぐには見受からないが、一方、努力が報われることだけは譲れない。
 様々な価値観を通じて、国という枠を超え てつながるという考え方は新しい発見である。島国の日本人、普段から他国との交流がないから、国という縄張りに縛られ、今までの考え方だけに守られていた ことに気づかされた。これからのグローバル社会では、国という枠(○○人)ではなく、考え方や価値観で共感できることがたくさんある。国家の争いを超え る、変える原動力になるのかもしれない。
 国同士のWIN-WINを目指すことが究極の外交であり、今、グローバルに開かれた公平な観察者を形成す る環境が整ってきている。爆発的に広がる情報を学習や交流によって、様々な価値観に触れ、共感の幅を広げることができる環境はある。一方、あふれる情報を さばききれず、判断できず、かえって自己の世界に凝り固まり閉じる傾向もある。意識的に外を向く姿勢を強くもって、共感の幅を広げる必要がある。
 日本社会はチャレンジと失敗を許容できない、だから自身の失敗を許容できず、動く前に考えすぎる。自分を振り返るとまさにその通りである。自分から変わらな ければいけない。周囲には変えなくてもよいと思っている大勢があるのも確かである。成長が見込めなくなった時代だからこそ、いや昔から普遍的なのか、変化 に価値を置き、失敗は成功の糧とし、仲間とともに、ありたい世界をつくっていく。そんな社会になるよう、子供たちにつないでいく必要がある。子供時代から アクティブラーニングのような学びを習慣化していくことに大賛成。先生から示された「知る」「考える」「話す」サイクルが大人も子供も習慣化し、対話中心 の学びの世界が広がるとよい。現在、組織内で試行を始めたところである。
 過日、デザインシンキングを実践、世界に普及している米国IDEO社から 学ぶ機会があった。まさに、先生から紹介のあった「すぐミーティングする」「まずやってみる」という米国文化と重なった。顧客に徹底的に寄り添い、超多様 なメンバー間で対話を繰り返し、まずはやってみる、失敗の中から最適解を見つけ、ビジネスへ発展させる、このやり方をチャレンジしたい。行動を起こすこと からである。
 これも提言をいただいたが、ありたい社会を考え、これを続け、周囲に広げていくこと、共感から愛着、愛情へ広がることを念頭に置き、 共感を大事にし、まずは身の回りにある場のありたい姿を考え、考える場をつくり、習慣化することを意識したい。その習慣が社会の変化を促すことを期待す る。
 今回の書籍・講義は、経済学的講義かと思っていたが、人間の本性等を考え、目指すべき社会を考えるというアプローチは大切であると感じ、非常に興味深く受けた。その機会をいただいた経済学者の堂目先生に感謝したい。



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