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2008年度研究会報告

第2回(2009.2.21)

テーマ -第1回シンポジウム 『言語に関する間文化現象学 』-
報告者 Ⅰ 亀井大輔(立命館大学)
「言語共同体の可能性」(「Possibility of Linguistic Community」)

Ⅱ 神田大輔(立命館大学)
「言葉と促し」(「Language and Inducement」)

Ⅲ LEE Nam-In(ソウル大学教授)
「言語の様相の現象学」(仮題)
(「Phenomenology of Modality of Language」)

シンポジウム全体の要旨
 

シンポジウムは「言語に関する間文化現象学」と題され、亀井大輔氏(立命館大学)、神田大輔氏(立命館大学)、ナミン・リー教授(ソウル大学)による発表が行われた。

 

亀井氏は、言語に関する間文化的問題として「翻訳」の問題を取り上げた。フッサール、ベンヤミン、デリダのテクストを追うことで、それぞれの翻訳論の輪郭線を描きつつ、母国語と外国語との関係が一義的に決まるとする「普遍的な」言語共同体でもなく、異質な諸言語もその異質性の彼方に同じものを志向するとする「純粋な」言語共同体でもない、ありうべき言語共同体のあり方が模索された。

 

神田氏の発表は、フッサールの言語論の詳細な読解であった。中でも、言語が持つ「動機づけ」の面に焦点が当てられる。動機づけはさらに、意味・存在・行動のそれへと分析されるが、最深部において、言語は、何ごとかを「促す」ことへと収斂する。一つの言語は、この「促し」の何千年もの堆積・連関からなるとされ、文化ごとの伝統をかたちづくる。この発表は、言語現象をその最深部から捉えようとするものであった。

 

ナミン・リー教授は、デリダのフッサール批判に異論を唱え、現象学的な言語論の豊かな可能性に目を向けようとするものだった。リー教授は次の点でデリダを批判する。デリダは「フッサールの言語に関する現象学が一義的に確定できる」と信じている。デリダは、形相的、存在論的、超越論的現象学(さらにこの中に含まれる静態的、発生的現象学)の区別を無視している。その実、デリダの批判は、後期フッサールの自己批判と類似している。こうして、どちらかの優位ではなく、双方の(間文化的)対話によって、一層実りのある言語哲学を構築する可能性が示された。

 

シンポジウム全体を通じて、さまざまな意見、質問、異論が寄せられ、シンポジウム終了後もしばらく続いた。

小菊裕之

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