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2008年度研究会報告

第4回(2008.9.26)

テーマ 「グローバリゼーションと税制
――国際連帯税としての航空券税と通貨取引税を中心に」
報告者 望月 爾(法学部准教授)
報告の要旨

近年、グローバリゼーションが急速に進展するなか、国際的な貧困や格差の拡大、金融経済の不安定化、地球規模での感染症の流行や温暖化の進展など、グローバル化の負の影響が深刻化している。とくに最近でいえば、サブプライム問題に起因するアメリカの金融不安により、投機的な資金が原油や穀物などの商品市場に流入して価格の高騰を招き、途上国の食料支援や世界中の人々の日常生活にも深刻な影響を与えている。こうしたグローバル化の負の影響に対し、国連などの国際機関やNGO、研究者などを中心に国際的な運動として、グローバリゼーションを規制し公平・公正なものにしていこうという動きが積極的に展開されている。

このような動きのなかで、課税を通じてグローバル化の負の影響を抑制し、税収を貧困や格差の解消や感染症の治療などの国際的な財源としてグローバルに再分配する「グローバル・タックス(Global Taxes)」の導入をめぐる議論が活発化してきている。とくに国際的な感染症の治療薬供給の財源として航空券への課税を行う国際連帯税(International Solidarity Tax)や、国際的な金融経済の安定化を図る目的で通貨取引に課税する通貨取引税(Currency Transaction Tax)、地球温暖化防止のため国際的に二酸化炭素等を排出する化石燃料に課税する国際炭素税(International Carbon Tax)については、すでに実現に向けての具体的な取り組みが始まっている。

たとえば、2006年7月にはフランスにおいて、途上国に広がるHIV/エイズ、マラリア、結核など感染症の治療薬の提供の財源として航空券への課税を行う国際連帯税が導入された。チリやコートジボワール、モーリシャスがこれに続き、ブラジルや韓国などの現在9カ国が同様な国際連帯税を実施し30カ国近くの国々が導入を表明している。また、従来から発案者であるノーベル経済学賞受賞者ジェームズ・トービン(James Tobin)博士の名前をとって「トービン税(Tobin Tax)」と呼ばれてきた通貨取引税に関しても、導入に向けて国際的な議論が活発化するとともに、2004年にベルギー議会が通貨取引税法案を可決したのをはじめ、カナダやフランス、イギリスなどの議会でも審議や決議が行われている。さらに、最近では、国際金融の専門家でイギリスのStamp Out PovertyなどのNGOのアドバイザーもつとめるソニー・カプール(Sony Kapoor)氏の提唱する通貨取引開発税(Currency Transaction Development Levy)が注目を集め、導入実現に向けての国際的な議論が進みつつある。

一方、近年わが国においても、通貨取引税や航空券税などのグローバル・タックスの構想が、ATTACやオルタモンドをはじめとするNGOや研究者によって紹介され、市民運動として導入に向けての活動が進められた、2006年9月には「グローバル・タックス研究会」が発足し、政府や政界、メディアに対する働きかけも行われた。当初、日本政府はこうした動きに対して消極的な立場をとっていたが、2008年2月には超党派の議員による「国際連帯税創設を求める議員連盟」が設立され、洞爺湖サミットを前に国際連帯税の導入を求める声が強まった。福田首相も6月の地球温暖化対策に関する指針の中で国際連帯税としての地球環境税の研究を進める方針に言及した。結局、洞爺湖サミットでの具体的な議題とはならなかったが、日本政府として、通貨取引税や地球環境税の導入向けての研究、検討に本格的に着手し、正式に国際的な議論の場である国際連帯税に関するリーディンググループに参加する方針が表明されている。

本報告では、こうしたグローバル・タックスをめぐる最近の動きを紹介したうえで、その実現可能性や今後の課題について検討してみたいと思う。まず、はじめにグローバル・タックスの意義や背景、これまでの議論の経緯や変遷などについて概観する。つぎに、国際連帯税としての航空券税と通貨取引税を中心にその概要と最近の動向を紹介する。そのうえで最後に、グローバル・タックスの実現に向けての今後の課題について検討したい。

望月 爾

テーマ 「グローバル化と人権」
報告者 倉田 玲(法学部准教授)
報告の要旨

内容

倉田 玲

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