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2008年度研究会報告

第1回(2007.6.7)

テーマ 「観光で儲けられるのは誰か:
スラム世帯調査からみた土産物売りアカの生活」
報告者 石井香世子(名古屋商科大学教授)
報告の要旨

報告者がタイ北部チェンマイ市の2ヶ所のスラムで2月と3月に実施した、2週間の調査結果の一部が報告された。調査目的は、「少数民族観光で、少数民族が“稼ぐ”ためには、どのような条件・要件が必要かを分析すること」である。この調査対象はスラム居住のアカ人であり、ビルマからの流入者を多く含んでいる。また、国籍・居住許可証をもたない人もおり、「山地民」のなかでも“下位”グループといえる。この多くが観光関連産業に従事している。調査結果であるが、サンプル数は83世帯、合計382人で、回答者の年齢は17~67歳である。主な職業は花売り・土産物売り・バーベキュー売り・スルメ売り・日雇い・清掃員などであった。収入・学歴・性・年齢・身分証などの属性のクロス集計の結果を考察した結果、高収入職業が一部のクラン(何がしかの血縁関係にある人たち)で独占されているのではないかという点、そして観光関連産業から得られる収入は女性ほど高く、それも若いほど高いということが判明した。活発なコメントと質疑応答が行われた。

江口 信清

テーマ 「ポカラ・TUTUNGA地区のFMFU会員の家計継続調査」
報告者 山本勇次(大阪国際大学教授)
報告の要旨

ネパール・ポカラのもともと不法占拠地区だったTUTUNGA地区の女性マイクロファイナンス・ユニット(FMFU)会員の間で、報告者が3月中旬に個別世帯の家計について実施した継続調査の結果の一部が報告された。会員の間では年金積み立てをする人がおおよそ半数にも上っており、この地域のFMFUが初期の家計の低迷期から発展期に入ったことをうかがわせている。この背景には、会員の家族成員の中東地域への出稼ぎ者の増加とこの人たちによる送金がある。中には女性のドバイへの出稼ぎも見られるが、貧しいものでも出稼ぎにいける背景にはマンパワー会社の存在があるからだ。出稼ぎに行く会員は会員を辞退している。罷免や辞退による成員数の減少は、新たに減った人数分だけ補充されている。FMFUに加わるということ自体に社会的地位の獲得といった意味がある。今回の調査は短期間しか実施でなかったが、今後継続的に実施し、個別世帯にとってのFMFUの意味について詳しく分析していく。FMFU、会員の借金の使途、出稼ぎ、送金などに関連して活発なコメント、質疑応答がなされた。

江口 信清

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