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10.26

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2017

公開合同ゼミ(松尾匡ゼミ・橋本貴彦ゼミ)を開催しました

 20171018日(水)夕方より本学びわこくさつキャンパスにおいて,公開合同ゼミ(松尾匡ゼミ・橋本貴彦ゼミ)を開催しました。この公開合同ゼミでは,松尾匡教授に「問題だらけの経済政策」と題して,いま日本に本当に必要とされている介護や医療,子育てなどの社会的ニーズにこたえるための社会保障増加や,若者を中心としたしっかりした雇用条件の雇用増を目指すための,経済政策の実現可能性について経済学の観点からお話ししていただきました。


まず,1980年代以降の先進国で生じたいわゆる「大きな政府」から「小さな政府」への政策転換は,その論拠となった有名な経済学者のフリードリヒ・ハイエク等の主張から大きくズレたものであったことが例証されました。そもそもハイエクたちの本来の主張は,リスクと責任,決定がうまく一致した意思決定の仕組み(ルール・制度)をつくることであり,1980年代以降の先進国の政策動向とはまったく逆の方向であったことが説明されました。以上の議論は,著名な経済学者の本来の主張をもとに現実の経済政策を再整理・評価した場合の例示でした。


次いで,この社会保障増加の実現可能性について言及がなされました。世界の主要政党の政策を紹介しながら,中央銀行が金融緩和マネーをもちいて国債を買い取り,政府の財源を作る方法が,欧州などの海外の多数の政党(英国の労働党などなど)の政策に盛り込まれつつあることが紹介されました。この政策であれば,失業者を減少させ,雇用を増やす政策も達成できます。そして,今後,政策上の論点となる点は,金融緩和マネーを用いた政策の使い道であり,それぞれ別々の社会像の選択肢があることを示されました。以上の議論は,現在主流となっている経済学を用いて経済政策を組み立てた場合の例示でした。

 

 参加者は学生や教員,職員などで,30名程度でしたが,質疑も活発に行われ,たとえば,社会の構成員のうちのどの立場(階級や階層,属性)にたった研究をおこなうべきかなどが議論されました。参加者からは,著名な経済学者の主張の整理や経済学からみた経済政策の深いつながりなどを感じ取ることができた等の感想がでていました。


企画本来の目的であるゼミ選択や研究テーマの選択,経済学の勉強への関心の高まりにつながったようです。

 

文責 橋本貴彦(立命館大学・准教授)

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