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寺脇ゼミで「演習II」の研究成果報告会を開催しました
私たちのゼミでは、「演習II」の中で取り組んだ研究成果を発表し合う研究成果報告会を7月24日に開催しました。この報告会では、秋学期から新たにゼミに参加する2回生を招き、4回生も含めて50人近い参加者の中で、4つのグループがそれぞれ以下のテーマで研究成果を報告しました。
・地元産ミネラルウォーターに対する消費者評価-地域圏か?輸送距離か?
・スペルト小麦スイーツに対する支払意思額と情報提供効果
・町家・古民家を活用した宿泊施設に対する消費者選好分析
・倉庫のカフェ活用が生み出すアップサイクル価値の計測-アダプティブリユースの促進に向けて-
各グループは5月から6月にかけて学内外でアンケート調査を行い、得られたデータを統計的に分析しました。今回私たちが得た主要な研究成果は以下のように要約されます。
・滋賀県産のミネラルウォーターに対する滋賀県民の支払意思額は、同じ関西圏である兵庫県産、そして隣県である三重県産よりも高くなり、フードマイレージが小さいほど支払意思額が大きくなる傾向が観察された。一方で居住県外では輸送距離の短さ(三重県産)よりも同じ文化・経済圏での採水(兵庫県産)の方が選好され、環境負荷の小ささが常に高い付加価値を生み出すわけではないことも示された。
・古代小麦とも呼ばれる「スペルト小麦」から作られるスイーツに対する支払意思額は、その特性に関する科学的な情報を提供することで上昇することが示された。その後食味情報を与えることで若干金額が低下したものの、それでも情報提供前と比べれば相対的に高い評価が維持されたことから、これらの情報提供はスペルト小麦の市場の歪みを是正し、同時にその市場拡大を促すことが結論付けられる。
・歴史観光地において町家ホテルは普通の現代的なホテルよりも選好され、一棟貸しの町家ホテルに対して旅行者が追加的に支払ってよいと思う宿泊料金は3864円、個室タイプのそれは2324円と計測された。加えて地元食材を使用した朝食を提供するホテルも高く評価される結果となり、旅先の食文化に対する人々の強い関心を確認すると同時に、町家ホテルでの宿泊が食文化の体験に匹敵するほどの価値をもつことが示された。
・倉庫を改築して作られた「THE HIDEAWAY FACTORY 栗東」がもつ広大な倉庫空間は、そこで食事を楽しむ人々に年間約2060万円の便益を与えていることが示された。この金額はインテリアなども含めたカフェ空間全体に対する評価額の約53.6%を占めることから、倉庫空間のアップサイクル価値は極めて大きいことが結論付けられ、同時にそれはこうしたアダプティブリユースを社会的に進めることの正当性を主張する。
質疑では多くの鋭い質問や意見が飛び交い、活発な議論が展開されました。報告会後のアンケートでは、私たち3回生からは
・メンバーと協力して研究をやり遂げることができ、自身の成長を感じた。
・レベルが高いプレゼンばかりで、メンバーの潜在能力の高さを思い知った。
・同じ手法でも説明の仕方に違いがあって大いに刺激を受けた。
・研究目的から調査、分析、結果に至るまでの流れをわかりやすく説明できたと思う。
・他グループのプレゼンをみることで、様々なスライドの作り方や表現方法を学ぶことができた。
など手ごたえや達成感、得られた学びをあげる声が多く聞かれました。同時に
・自分の発表だけで精一杯で、聴衆を気にかける余裕をもつことができなかった。
・もっと聴衆の顔を見ながらプレゼンできるよう次の機会に活かしたい。
・2回生も分析の手法が理解できるようもう少しわかりやすく説明すべきだった。
・思い通りに聴衆とのコミュニケーションをとることができなかった。
など聞き手への配慮を中心に、反省の声も多くあげられました。
一方で2回生からは
・手法や結果の説明が簡潔にまとめられており、2回生にもわかるよう説明いただいたので面白かった。
・聴者の方を向いて説明されていたのが印象的だった。
・どのような問いを持ってどのように研究を行ってるのかがよくわかった。
・質疑の際「なぜ?」や「どのような状況の?」などの質問が多く、納得させられる場面が多くあった。
・質問に対してしっかりと回答されており、研究に対する個々の理解度の高さを感じた。
など私たちのプレゼンに満足してもらったり、質疑の雰囲気に刺激を受けたりした様子がうかがえました。加えて
・先輩たちのように素晴らしいプレゼンができるようになりたいと思った
・自分たちが来年同じように研究をするイメージをもつことができた
・来年のプレゼンに向けて良かったところを吸収したい
・研究の中で置かれる様々な設定に対して一つ一つ根拠を持って取り組みたい
などこれから始まるゼミ活動に向けて前向きに取り組もうとする姿勢もみられました。それぞれの代にとって意義のある時間を過ごすことができたと感じています。
私たちは現在、上記のグループで得た研究成果をもとに個人で論文を書く作業に取り組んでいます。さらにその成果を発展させたプロジェクトを企画しており、秋学期からの「演習III」の中で実践的に取り組む予定です。引き続きゼミ全体で協力して、今後も社会の発展に貢献する研究成果をあげたいと思います。
経済学部3回生 清宮嘉人