WHY?
#01

セントラルキッチン方式を
採用しない外食チェーンが
あるのはなぜでしょうか?

QUESTION

外食チェーンでは、セントラルキッチン(CK)方式が一般的です。CKは、大量の食材を集中的に調理する大規模施設です。各店舗では調理の仕上げだけで済み、厨房施設が要らず人員も節約できるのでコストダウンが図れます。第二に、大量に食材を仕入れることができますので、仕入れ値を安く設定することも可能となります。第三に、各店舗での味のばらつきを防止でき、商品の質を一定に保つことが可能となります。第四に、ある地域に一気に出店することが可能となるので、ライバルに差をつけることもできます。

このようなメリットから、全国展開している外食チェーンでは、ガスト、やよい軒、くら寿司、コメダ珈琲などが主力商品を中心にCKを採用しています。ところが、CKを採用していないチェーンもあるのです。ロイヤルホスト、大戸屋、スシロー、星乃珈琲などです。なぜ上記のようなメリットがあるにもかかわらず、CKを採用していない外食チェーンが存在するのでしょうか?

HINTS 問題文から見るとセントラルキッチン(CK)は
メリットだらけのように見えてしまいます。
ところが、CKのメリットを生かすためには例えば、
以下の諸条件が満たされないといけません。

1. 調理した食材の質を下げずに各店舗に運搬できること。
単なる食材ではなく、半分調理したものを、質を保ちつつ運搬するには時間との戦いです。そのためには技術やノウハウが必要ですが、容易に獲得できる技術ではありません。

2. 高い稼働率が維持できること。
セントラルキッチンでの低コストを享受するためには、稼働率が高くないといけません。たとえば大量の調理した料理を消費できる店舗数を確保しておかねばなりません。

外食(回転寿司)の写真

これらのことから、CKがそのメリットを発揮できるのは、店舗への輸送ノウハウを確立した上で、ある一定距離の範囲内に、ある程度の採算の取れる店舗を維持しておかねばなりません。これには、色々な意味でコストがかかります。

しかも、全国展開するチェーンともなれば、CKにふさわしい便利な土地には他業種の競合者もいますので、郊外で探したとしても安価で購入・賃貸できるとは限りません。採算のとれない店舗がある程度発生すると、黒字店舗も含め、全店舗がその地域から撤退せざるを得ないというリスクも背負うことになります。

一方、CKを使わない方法では、各店舗で調理できる人を育てるのに時間はかかりますし、各店舗に調理設備を据え付けなければなりませんが、小回りはききます。店舗の開設・閉鎖も店舗ごとで可能です。CKのための土地の捜索や確保にも煩わされません。特別な運搬ノウハウを確立する必要もないのです。

したがって、市場が成長軌道に乗っていて、後発でスタートしても十分採算がとれるのであれば、CKを使わずとも全国展開は可能であると考えられます。実際に、讃岐うどん業界のはなまるうどんはCKを用いて、一気に全国に店舗を増やしましたが、後発の丸亀製麺は、うどん職人を養成し、ゆっくりしたペースでしたが店舗数を着実に拡大していきました。

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