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博士課程後期課程6回生 濱野 純さんが日本体力医学会学会賞(JPFSM)を受賞しました!

題目:疲労困憊に至る高強度・短時間・間欠的運動が血漿副甲状腺ホルモン濃度に与える影響

所属先:立命館大学スポーツ健康科学部、コロラド大学医学部

著者:濱野純、清水崇行、街勝憲、Wendy M Kohrt, 田畑泉


 副甲状腺ホルモンが骨吸収を促進することが知られており、中等度の強度の長時間運動中に血中カルシウムイオン濃度が低下することにより血漿副甲状腺ホルモン濃度が上昇することが、運動・トレーニングによる男女とも疲労骨折を引き起こす機序であるという可能性が示唆されている。

 一方、数分以内で疲労困憊に至るような高い強度の運動では、血中副甲状腺ホルモン濃度は増加しないという報告がある。そこで、本研究は、その運動を用いたトレーニングにより最大酸素摂取量および最大酸素借を最大に増加させることが知られている高強度・短時間・間欠的運動(HIIE:タバタトレーニングのための運動)が血漿副腎皮質ホルモンに及ぼす影響を明らかにすることを目的として実施した。7名の若年成人男子が前日から空腹後に2つの自転車エルゴメータ運動を別々の日に行った。HIIEの日には、最大酸素摂取量の170%の強度の20秒間の運動を10秒の休息を挟み、6回から7回で疲労困憊に至る運動(タバタトレーニング)を行った。中等強度運動(MIE)日には、最大酸素摂取量の70%の強度の運動を60分行った。HIIE後の最高血中乳酸濃度は、15.2 ± 1.3 mmol/lであった、一方MIE日 は、2.2 ± 0.9 mmol/lであった. HIIE日において血漿副甲状腺ホルモン濃度は有意に低下した(運動前: 30 ± 5 pg/ml, 運動終了後10: 22 ± 4 pg/ml, p<0.05)。一方、MIE日において、血中副甲状腺ホルモン濃度は有意に増加した。HIIEは、運動後に有意に血中イオン化カルシウム濃度を上昇させたが、MIEでは運動前後で差は無かった。本研究によりHIIE(タバタトレーニング運動)は、血中カルシウムイオン濃度を低下させることにより副甲状腺ホルモン濃度を上昇させないことが明らかとなった。この結果は、タバタトレーニングは、疲労骨折等の骨に悪影響を与えないで、有酸素性および無酸素性エネルギー供給機構を同時に最大に高める可能性のあるトレーニングのための運動であることが示唆された。

 つまり、有酸素性および無酸素性エネルギー供給機構という持久性競技のパフォーマンズに関係の深い体力を高めることをトレーニングの目的とした場合には、従来よりもタバタトレーニングを含むHIIEを増やし、中等強度の持久性運動を少なくすることが、持久性競技者の疲労骨折を防止し、競技力を高める上で重要であることを示唆している。

 

<参考URL

https://www.right-stuff.biz/jspfsm77/award/