RITSUMEIKAN UNIVERSITY 立命館大学 国際関係学部 国際関係学科 グローバル・スタディーズ専攻 10周年記念サイトRITSUMEIKAN UNIVERSITY 立命館大学 国際関係学部 国際関係学科 グローバル・スタディーズ専攻 10周年記念サイト

Talks

教員が語り合う、
グローバル・スタディーズ専攻のこれまでとこれから

Talk01イメージTalk01イメージ

Talk01教員たちが語り合う、
グローバル・スタディーズ専攻の10年

さまざまな人・常識・物の見方が学べるGS専攻は
日本と海外で異なる教育のしくみの調整から始まった。

PROFILE

  • ライカイ

    RAJKAI, Zsombor Tibor 教授(ライカイ ジョンボル ティボル)

    京都大学文学研究科博士課程修了。前職:2010~2011年、京都大学文学部准教授。専門分野は社会文化研究、非西欧文化圏の近代化研究、家族研究、東洋史・中央アジア史研究。

  • 安高

    安高 啓朗 准教授

    ウォーリック大学(イギリス) 政治・国際関係研究科博士課程修了。前職:2010~2011年、ウォーリック大学(イギリス)政治・国際関係学部非常勤講師。専門分野は批判的国際関係理論、国際政治経済学。

  • 福海

    福海 さやか 准教授

    バーミンガム大学(イギリス)大学院修士課程修了、ノッティンガム大学(イギリス)大学院博士課程修了。前職:2008~2014年、亜細亜大学 国際関係学部。専門分野は国際関係学、安全保障論。

  • コガ

    KOGA BROWES, Scott 准教授(コガ ブラウズ スコット)

    シェフィールド・ハラム大学(イギリス)大学院修士課程修了。シェフィールド大学(イギリス)大学院博士課程修了。前職: Reuters PLC, Tokyo BroadcastinGSystems (TBS)。専門分野はメディア論、テレビニュースの映像記号論分析。

グローバル・スタディーズ専攻(GS)はどのような狙いで生まれたのか。GS開設時、もしくは初期よりかかわった教員が集まり、GSが歩んできた10年間とこれからについて、思い出や個々の想いなども交えて語り合いました。

GS開設時に実感した、日本と海外の大学教育の違い

GS開設時の印象やエピソードについて教えてください。

  1. 安高
    安高

    GSは国際化を次のステップへ進めるという使命があって始まったのだと思います。全学をあげて海外留学参加者が増えてきていたので、その次のステップとして、大学全体、学部全体の国際化を底上げしていこうという狙いで。

  2. ライカイ
    ライカイ

    GSはG30プログラム(※1)から始まりました。私はその前にすでに他大学で21世紀COEプログラム(※2)やG30プログラムにかかわっていたので、国際関係学部にGSという専攻が開設されたと聞いたときはうれしかったし、良かったと思いました。

  3. 安高
    安高

    ただ、不安はありましたね。英語オンリーの専攻が本当に可能かどうか。少人数の大学院だったらできるかもしれないけど、人数規模の大きい学部レベルで行うのは相当大変だろうな、と。

  4. 福海
    福海

    私はGSに採用された当時、英語で授業をするのが普通でした。日本を離れて9年ぐらい経っていたので、逆に日本の大学教育がどうなっているのかもよく知らなくて。

  5. コガ
    コガ

    私は海外で博士号を取得する年にGSが開設されることを知ったので、日本で仕事をするチャンスになるんじゃないかなと思いましたね。

  6. 安高
    安高

    一番大変だったのは、日本の教育の仕組みの中に、いきなり海外の仕組みをはめ込もうとしたこと。それはやっぱり難しくて、いろんなギャップがあるんですよね。日本の大学と海外の大学では、そもそもの前提から違うわけです。1つの例ですが、日本では、あくまで授業内での学修をベースとして、1人の学生が1週間に講義を10科目受講登録する、といった感じでギチギチにスケジュールを詰めて履修する。そういった状況で、海外と同程度に授業の事前準備や事後の復習をしっかりしてきてくださいね、というのはなかなか難しいんですよね。ただGS開設当時、私たちはそれぞれ海外の大学で教えていたので、各自がその感覚をそのままGSに持ち込んでしまい、結果大きなハレーションが起きてしまった。1つの授業で当然このぐらいの量は授業前に読むだろうと、海外では当たり前と考える量の課題を、どの科目の教員も出すから、学生が課題量が多すぎてパンクしちゃったんです。それでGSの教員間で「どういうふうに授業している?」と聞き合ったり、調整をしたり、GS開設当初はけっこう手探りで進めていました。その作業は大変だったけど、おもしろくもありました。

Talk01イメージ
  1. 福海
    福海

    イギリスでは講義1科目に対してセミナーが1科目というように、講義とワークが1セットになっていて、実質は1週間で6~8科目ぐらい履修する感じです。1科目の課題の量としては、リーディング20ページという課題や、プレゼンの準備、エッセイの提出などもあるので、1週間で10科目も履修する日本の大学で同じような課題量を出してしまったら大変(笑)。学生は寝れないどころか、何にもできなくなってしまいます。

  2. 安高
    安高

    最初はそのギャップがわかっていなかったんですよね。それぞれの教員が自分の授業しか見ていなかったですし。

  3. コガ
    コガ

    日本の大学教育の常識のようなものを知らなかったので、授業は当然これぐらいしないといけない、と思っていました。でも時間が経つにつれ、どの学生も課題をしてこないので何かおかしいな、と(笑)。1週間で学ぶ科目数がぜんぜん違うのに、海外と同じ感覚で課題を出すのは間違っていたって気付きました。

※1 G30(グローバル30)プログラム:大学の国際化のためのネットワーク形成推進のために実施された文部科学省のプログラム。

※2 21世紀COEプログラム:世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援するために実施された文部科学省のプログラム。

多国籍な環境で視野を広げあえる

GSの魅力や良さについて教えてください。

  1. 福海
    福海

    学生が多国籍なのは良いことですよね。日本人だけだと基本的に均質的な考えで、おもしろい答えが出ないことが多くて。例えば、日本以外の国の話を扱うのに、その国から来た人のことを知らずに話したり、勝手な思い込みでアフリカを「かわいそうな国」と捉えたりということを日本人はしがちです。でも、違った目線の人、例えばヨーロッパでもイギリスとハンガリーでは見方が全然違いますし、アメリカで育った人とイギリスで教育を受けた人だと、また全然見方が違います。同じ国籍でもその人が育った背景が違うとけっこう違う。私はIR(国際関係学専攻)とGSとで、まったく同じ授業を行っているのですが、学生たちのレスポンスが違いますね。GSは多様性や学び、見識を深めるという点ではとても豊かです。学生が自分の国のことなど、私たちが知らないことを教えてくれることもあって、クラスメイトが先生みたいなところもあります。

Talk01イメージ
  1. ライカイ
    ライカイ

    こちらも勉強になりますよね。

  2. 福海
    福海

    それから、外国人学生から聞いたことがあるのは、「日本は安全な国だから親が留学に行かせてくれる」って。海外から来る学生の親にしてみたら、アメリカやイギリスと比べた場合、日本が一番安全だからだと思います。もう一つ、アジアから来る学生にとっては、日本が一番近くて費用が抑えられるからというのもありますね。

  3. ライカイ
    ライカイ

    海外からGSに来る学生は、まず日本のカルチャーに興味があるのだと思います。それから、京都というロケーションも大きな魅力ですよね。京都はとてもおもしろい街で、伝統的なものを大切にしながら、モダン的にもしようとしています。

  4. 安高
    安高

    ほかにも、いろんな授業があっておもしろそうというのはよく言われますね。

  5. コガ
    コガ

    GSは10年間の歴史がありますし、英語で学ぶためのちゃんとした学習支援があって、5年、10年先の未来を見据えたプログラムを作っている、というのも良さだと思います。

  6. 福海
    福海

    そのために、大学がとても努力していますよね。教員採用でも、基本的に日本語・英語の両方で教えられる人を採用しているのですが、それは少しでもGSの科目を充実させるため。この10年、そういったことを少しずつ行ってきて、日本語でしか教えるつもりがなかったのに、英語でも教えるようになった先生もいらっしゃったりと、両方の言語で授業ができる先生がほとんどという状況になってきました。

  7. 安高
    安高

    クチコミなどにもそれが表れていますね。卒業した学生が自分の母国、あるいは出身校で「GSは良いよ!」と言ってくれて、そこからまた次の志願者が来てくれるという、良い循環ができたのだと思います。

  8. 福海
    福海

    4年目、5年目あたりから、学力も上がったし、入試の倍率も桁違いになりましたよね。

周囲に触発されて行動力のある学生に

教育環境や学生に変化はありましたか?

  1. ライカイ
    ライカイ

    GS開設当時はまだ学生の数も少なく、学生たちには先輩もいなかったので、学生同士の距離も、私たち教員との距離ももっと近かったですね。1期生が卒業した5年目からは、良い意味で学生たちの世界ができました。

Talk01イメージ
  1. 福海
    福海

    最初の頃はノウハウがないので教員がリーダーにならないといけませんでしたが、最近はオリター(※3)が機能してきたのかもしれません。

  2. コガ
    コガ

    学生の人数が増えたことで、一対一のコミュニケーションの時間は減りましたね。

  3. 福海
    福海

    出身国の構成の変化で、また変わってくると思います。同じ国の出身者が多いと、その国の出身者で集まってしまいがちです。

  4. 安高
    安高

    そうですね。母国のコミュニティを大事にしようとする人と、自由になりたい人との間に軋轢が出てくるかもしれませんね。

  5. コガ
    コガ

    属性を超えられる学生は、国籍関係なく活発に交流しますが、人数が増えるとやっぱり国ごとのコミュニティができてくる。それをいかに壊すかが、学部全体の今後の課題だと思います。

  6. 安高
    安高

    あとは、わりと学生もGSをうまく利用しているというか。日本は相対的に学費が安いし安全なので、学生はGSを一つのステップにして、次、大学院に進むときはさらに成長できる海外の大学院へ行くケースも多い。つまり、GSに行けば、その先の進路もちゃんとあるという認識をされているのだと思います。

  7. コガ
    コガ

    ステップアップできる場所として認められているというのは大きいですね。

  8. 安高
    安高

    それから国際学生に影響されて、日本の学生もけっこうおもしろいことをしたりしていますね。一年休学してミャンマーに行った学生もいました。日本の常識の中だと、どうしても「なぜそんなことするの?」という雰囲気があると思うのですが、そういうリミッターがあまりないのがGSの良いところじゃないでしょうか。

  9. 福海
    福海

    どちらかというと、昔の日本の学生みたいな人がGSにはいっぱいいるんですよね。私も大学生はバックパッカーになるものだと思っていましたし、実際、いろんなところに一人で行きました。最近、そういう学生がすごく少ないと思っていたら、GSにはけっこういた(笑)。「本当にそこへ行くの?」みたいなところへ行く学生もまだまだいますし、行くつもりはなかったけど、周りの友達の話を聞いて行こうと思ったとか、GSで知り合った誰々の国を見たくなったとか、そういった行動力が他に比べるとGSの学生にはあるんじゃないかなという気はします。

※3 オリター:新入生の学生生活の支援を行う団体および学生のこと。立命館大学では学生の自主活動として始まり、1991年度から「オリター・エンター活動」として大学が支援している。

GSらしさを、大学全体のメインストリームに

今後、GSはどのように変化・発展していくと思いますか?

  1. コガ
    コガ

    学生は変わらなくて良いと思うけど、カリキュラムの構造をもう少し…。可能かどうかはわからないですが、海外のように課題をもっと与えていいような構造に変えてほしい。要するに科目数を少なくして、1つの科目を深く学ぶ方法に変えられないか。難しいとは思いますが、まだ希望は持っています。学生たちが自分の興味のある分野にもっと集中できるような構造にできればと思います。

Talk01イメージ
  1. ライカイ
    ライカイ

    日本から見る国際化、グローバル化に重点が置かれている部分はこれからも変わらなくて良いのですが、いろんな国の授業を増やしたいですね。そうすれば、本格的な意味でのグローバル・スタディーズになります。

  2. コガ
    コガ

    科目を増やそうとしていますね。

  3. 福海
    福海

    逆方向(笑)。

  4. ライカイ
    ライカイ

    それはこれから議論を…(笑)。やはり、グローバル化は多くの国の視点から語るものです。海外から来る学生でも日本人学生でも、まずは自分の国を発見すること。大学までの教育で教えられていないことがあるので、自国についての知識を強化して、そのうえで他の国について勉強することも必要です。日本から見る国際社会というのは、これからもGSの一つの柱にすれば良いと思います。

  5. 福海
    福海

    私がゼミ生によく言うのは、この大学の、この専攻じゃなかったら私は楽しくなかったと思うということ。というのも、例えば日本国籍を持ち、日本で育ってきているけど、ミックスだったり、在日の方もそうなのですが、いま一つうまく日本になじんでいなかったりした人でも、GSに来てみたらいろんな人がいることに気付くと思うんです。韓国や中国の国籍を持っているけど、十何年、他の国で育ったという人は、生粋の韓国人や中国人とはまた違います。どんな属性でもマナーはだいたい同じですが、常識がそれほど常識ではなかったり、変わっていると思っていた自分の考え方が、意外と他の地域では普通なんだと気付いたりする。それで大学が楽しいと思えるなら良いことだし、さらに他の人からさまざまな影響を受けて学ぶことがもっと増えたら良いと思います。だから、多様性や多人種、最近はトランスジェンダーなどもありますが、いろんな人が来てくれて、GSがみんなが楽しいと思える場所になるとうれしいですね。

  6. 安高
    安高

    そう言えば、当初、危惧されていたほど国籍の偏りはなかったですね。GSができる前は、東アジアからの学生、とくに北東アジアの学生が多いだろうと考えられていたようですが、いざ、ふたを開けてみると、全大陸から来ていますね。

  7. 福海
    福海

    しかも、どんどん国籍が増えてきています。

  8. 安高
    安高

    だから、楽しい(笑)。いろんな人がいるのが普通で、いろんな常識がある、そういうところであり続けてほしいですね。さらに、そのGSらしさみたいなものが大学内の他学部にもう少し波及してほしいし、大学全体にも広がれば良い効果があるんじゃないかなと思います。あくまでGSは特殊…という扱いではなく、これがむしろ普通であり、メインストリームになっていくような仕掛けができれば、とは思いますね。あとは、ここで国際関係学を学ぶ意味を感じてもらいたい。日本的な、東アジア的な世界の見方を学ぶカリキュラム設計にはなっているのですが、いろんな国からの見方も意識しながら、常識的とされる物の見方を絶えず見直していくことができれば、研究はもちろん、学生がそれぞれ世界に巣立っていったときに有用になるはずです。そのような授業ないしカリキュラムになっていけば、GSはこれからもおもしろくなると思います。

  9. ライカイ
    ライカイ

    グローバル人材という言葉をよく聞きますが、主に英語化というような狭い意味で使われています。しかしGSでは、英語「で」物を見るように教えています。つまり、「マインドの国際化」が一つの大きなポイントなのです。日本人学生はとくに、自分の国のどこがユニークなのか、他の国と違うところや共通点など、どんな特徴を持っているのかを正しく理解する力を身につけてほしいです。ただ英語で話せるだけではなく、そういう力も身につけた真のグローバル人材に育ってほしいと思っています。

Talk01イメージ

Talks トップに戻る

トップに戻る

PAGE TOP