RITSUMEIKAN UNIVERSITY 立命館大学 国際関係学部 国際関係学科 グローバル・スタディーズ専攻 10周年記念サイトRITSUMEIKAN UNIVERSITY 立命館大学 国際関係学部 国際関係学科 グローバル・スタディーズ専攻 10周年記念サイト

Talks

教員が語り合う、
グローバル・スタディーズ専攻のこれまでとこれから

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Talk02学外から見た、グローバル・
スタディーズ専攻の個性と魅力

国内にいながら多国籍の学生が学びあい、
刺激し合う中で多くを吸収する。

PROFILE

  • 河村

    河村 律子 教授(学部長)

    京都大学農学研究科農林経済学専攻博士課程。専門分野は農業・食料経済学、農村開発。

  • 雨河

    雨河 祐一郎 准教授

    アイオワ州立大学社会学研究科および持続的農業大学院プログラム(共学位) 農業・食料・環境専攻博士後期課程 修了。前職:2011~2012年、マラヤ大学(マレーシア)人文社会科学部ジェンダー研究科講師。2012~2014年、同大学理学部生物学研究所講師。2014~2018年、九州大学農学研究院助教。2018年4月より現職。専門分野は農業・環境社会学、東南アジア地域研究(タイ)。

  • 越智

    越智 萌 准教授

    ライデン大学(オランダ)法学修士課程修了。大阪大学大学院法学研究科博士後期課程修了。前職:2019年、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 研究戦略センター主任研究員。2019~2020年、京都大学白眉センター/法学研究科特定助教(白眉研究者)。2020年4月より現職。専門分野は国際法、国際刑事司法。

  • スミス

    SMITH, Nathaniel M. 准教授(スミス ナサニエル マイケル)

    イェール大学 人類学博士後期課程修了。前職:2011~2013年、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(アメリカ)東アジア言語・文化学科国際交流基金ファカルティフェロー、2013~2021年、アリゾナ大学(アメリカ)東アジア研究学部助教授。2019~2021年、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科客員研究者。2021年4月より現職。専門分野は文化人類学:ナショナリズム(主に極右政治活動)、都市学、日本研究。

グローバル・スタディーズ専攻(GS)は学外からどう見えていたのか。近年、GSに着任した教員が、他との教育環境の違いを振り返るとともに、学部長と一緒に守るべき伝統や今後の取り組みなどについて意見を交わしました。 インタビュー:2021年10月26日

日本人と留学生とが一緒に学べる斬新さ

GSに対しての、第一印象はどうでしたか?

  1. 雨河
    雨河

    前任の九州大学農学部ではG30プログラム(※1)のコーディネーターをしていましたが、GSもG30プログラムと関係があったことを着任してしばらくしてから知りました。すぐに気づかなかったのは、九州大学農学部のプログラムは参加学生が4~7人の小さなものだったのに、GSはもっと人数の多いプログラムだったからです。GSにきて初めて、日本人学生と外国人学生が一緒に学ぶところで教えることになり、それが非常に新鮮でした。

  2. 越智
    越智

    G30プログラムが終わったあとどう残していくか、大学ごとにいろんな継続の仕方があったと思うのですが、GSのように長期化したプランとして落ち着いているところはめずらしいのではないでしょうか。また、GSにはアジア諸国、特に東南アジアや南アジア出身の留学生が他の大学の類似の学部に比べて多いように思いました。それからGSには、両親は日本人だけど海外で生まれ育ったという学生や、日本生まれ日本育ちだけれどインターナショナル・スクールで教育を受けてきた学生も多くいます。GSは日本出身のご両親からも信頼されているのだと思いました。

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  1. スミス
    スミス

    私は早稲田大学のアジア太平洋研究科で修士課程を取ったので、その頃に別府にできた立命館アジア太平洋大学は知っていました。だから立命館という名前を聞いたとき、別府の印象が強かったですね。あと、先ほどおっしゃっていた、立命館のG30プログラムを知ったのは、前任のアリゾナ大学で助教授を務めていたときです。院生の一人が国際教育の在り方について調べていて、論文指導に当たる中で、私もこのプログラムについて知りました。

  2. 河村
    河村

    そもそも、皆さんがGSの教員に志願されたきっかけは何ですか?

  3. 雨河
    雨河

    自分の専門が、国際開発や環境問題を扱う境界的な分野なので、国際系や社会学など、片っ端から応募していました。

  4. 越智
    越智

    私も出せるところは全部。

  5. 河村
    河村

    たぶん、国際関係学部は、一つのことだけ、例えば経済学だけを教えられる人ではかえって駄目なんですね。もう少し広く柔らかく、他のことを考えながら教えられる人でないと合わない。だからこそ、そういう多方面から考えるマインドを持つ人は他のところには引っかからないけれど、ここにはピタッとはまる(笑)。

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  1. 雨河
    雨河

    そうですね。大学院時代に在籍していたオレゴン大学の国際学研究科は、学際的プログラムだったものですから、国際学の授業以外に、政治学や経済学、人類学などあちらこちらの授業を受けていました。

  2. スミス
    スミス

    河村先生のおっしゃる通りで、自分も興味の幅が広いほうだと自覚しています。教える側としては、それぞれの学生の持つ興味を生かして何かしらの学問に導いてあげたい。そういった幅広く取り組める教育がいいし、自分の性格にも合っていると思います。

  3. 越智
    越智

    お二人の先生と同じで、私もいろんなことに手を出していて。大量虐殺などの国際犯罪のことを研究していたので、国際連合学会や刑法学会、アフリカ学会といったさまざまな学会にも顔を出して、多角的に一つの問題に取り組みたいと思っていました。

※1 G30(グローバル30)プログラム:大学の国際化のためのネットワーク形成推進のために実施された文部科学省のプログラム。

環境が異なる留学生との学びで成長できる

GSの魅力や良さについて教えてください。

  1. 雨河
    雨河

    前任校では教えていたのが留学生のみだったのですがアジア系ばかりでした。それに比べて、GSは欧米やアフリカ、ラテンアメリカなど、学生の国籍に多様性がありますね。また、前任校では留学生にアンケートのようなものを取っていたのですが、日本人の学生と一緒に勉強できないのが寂しいと書いてあるんです。やっぱり日本に来たからには、日本人の学生と一緒に学びたいのに、それがまったくできない。でもGSであれば、普通の授業で外国人学生も日本人学生もお互いの意見を聞けたりします。例えば、アフリカ出身の学生が参加していた人口論の授業のときに、日本人の学生がアフリカの人口を抑制するために、ファミリー・プランニングをもっと行うべきだというプレゼンテーションをしました。すると、アフリカのルワンダの学生が、そういったことを享受できるのは、特権というかお金があるからできることだし、それにある種の先進国の押し付けじゃないかという考えを述べた。これはなかなかしびれる議論になってきたな、と思いましたね(笑)。日本人の学生にとっても、外国人学生と一緒に勉強できる環境というのはすごく自分を伸ばせるところがあると思います。だから、少し英語ができる学生が、他の国際系の学部に進学した場合とGSに進学した場合では、卒業するときに吸収してきたものがだいぶ違うと思うんですよね。知識の量はわかりませんが、アクティブ・ラーニングを通じて得た積極性や、自分から課題を設定してそれに答えていく力、さらにグループワークを行う機会も多いと思います。それが、GSならではの強みなのかなというふうに思います。

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  1. 越智
    越智

    いまの話に付け加えたいと思ったのが、GSには両親が違う国籍の学生が多くいますよね。なかには、自分のアイデンティティがどちらかとくに決まってない学生がいて、そういった学生は2つの国の視点から話ができるのを強みとして生かせている感じがします。こういったことができるのは、GSではグルーピングがそんなに強くなくて、国ごとで固まっていないから。国籍や出身関係なく仲良くなれるし、話し合える環境があります。

  2. スミス
    スミス

    そうですね。だから日本人学生も、さまざまな国の英語に触れることができる。

  3. 河村
    河村

    スタンダード英語じゃなくてね。

  4. スミス
    スミス

    インターナショナルスタンダードな英語になりますね。

  5. 河村
    河村

    それからゼミについても一言。GSの良いところは少人数教育なので、普通の授業でもディスカッションやプレゼンテーションができます。一般的に大学の授業は教員による講義形式のものが多く、それに対してゼミはグループディスカッションなどを通して自分の研究を作っていきます。だからゼミが特殊なものとして存在しているのですが、GSの場合は全部がゼミのようなものなので、開設当初は「ゼミって何?」となりました。2017年度入学までの学生はゼミが必修ではなく、実際、ゼミを履修しない、あるいは履修しても卒論を書かずに卒業する学生が一定数いたのです。でもやっぱり、自分の研究を作る日本的なゼミがGSでも機能したほうがいいし、卒論を書くことは意味があるという考えから、2018年度入学生からゼミを必修としました。

国際的な視点や、世界に対する好奇心を育てたい

皆さんが考える「グローバル人材」とは? GSでどんな人を育てたいですか?

  1. スミス
    スミス

    世界に踏み出していかなくても、国内でも文献や資料などを生かして、国際的な視点を持てる人を育てたいですね。GSなら、留学しなくても4年後にいろんなノウハウを身につけられると思います。

  2. 越智
    越智

    グローバル人材になるためには、異なる文化、と言ってしまうと狭いのですが、違う文化の人たちとコミュニケーションが取れることと、好奇心が絶えないことが重要だと思います。相手に興味を持つという姿勢が大事ですし、コミュニケーションを一度失敗しても諦めずに、相手のことに興味を持って掘り下げていく。それは、情報収集とつながる部分があるのですが、世界に興味がある、好奇心を持っている学生を育てたい。その好奇心を育てるにはどうしたらよいかということは、つねに考えながら授業をしています。

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  1. 雨河
    雨河

    育っていってほしいのは、国籍にとらわれず相手を「個人」として見られる人ですね。ちなみに私の妻はフィリピンの人なのですが、普段、あまり外国人だと意識して接していません。理念的な話ですが、日本では、外国や外国人を見るときに、それぞれの国の政治や経済といったフィルターを通して色々な属性をつけて見てしまいがちです。それはそれで、集団を理解するうえで重要なことだと思いますが、実際には同じ国や地域の中でも、人柄や考え方の個人差がかなり大きかったりします。当たり前のことですが、一人ひとり、みな個性のある人間なんだということを忘れないようにしてほしいです。

  2. 河村
    河村

    GSの卒業生がグローバルに働いているかですが、外資系の企業ばかりに行っているわけではありませんね。留学生には外国の大学院に進学する人が多くいますが、日本人の学生は国内の一般企業に就職している人が多いようです。IR(国際関係学専攻)を含む国際関係学部全体において、国際機関への就職というのは一つの大きな目標ですが、学部卒ではそもそも行けません。基本的に大学院卒でないと採用してくれませんから。一方、IRの学生のなかには、一般企業に就職後、マスターを取って国際機関へ進んだ人が、私が知っているだけでも何人かいます。きっと彼らは学部時代に、留学生や海外留学の経験がある人など、いろんな人から刺激を受け、国際的な感覚を植え付けられたからこそ、頑張れたのだと思います。GSであれば、4年間でさらに多くの刺激を受けられるはずです。学生だけでなく教員も、外国籍の教員や、今回お話を聞いた先生方のような多様なバックグラウンドを持った教員が多い学部です。GSでいろんな人の経験を見聞きして、その中で揉まれる。もちろん、講義やゼミも重要ですが、GSに所属している「人」から受ける刺激が、彼らの何よりの糧になっていくと思います。

コロナ禍によって生まれた柔軟性のある教育

今後も残したいと思うGSの良さや、今後、新たに取り組みたいことを教えてください。

  1. 越智
    越智

    少人数制は残してほしいですね。それからゼミも。私自身、学生時代にゼミを経験して、すごく温かいアットホームな空間が、家族以外の人たちとの間にできるというのは良い経験だと感じました。日本式のゼミの在り方は残したいと個人的には思います。

  2. スミス
    スミス

    赴任してまだ半年なのですが、その中でも言えることがあります。それはコロナによって、やむを得ずWeb配信型の授業になったからこそ、生まれた可能性があるということです。今回であれば、入国できない留学生もいましたし、何か理由があって実家に帰っている人もいました。授業にもよりますが、こういった学生たちであっても、インターネットを利用することで授業が受けられることを、私たちは知りました。今後この経験を生かして、いろんな人が学び続けられる柔軟性のある教育環境を作っていけないかと考えています。

  3. 越智
    越智

    そうですよね。GSだけじゃないと思うのですが、今回のコロナでは、日本に戻れない学生や留学生が多くいました。セーフティーネットとして、オンデマンド型授業はとても役に立った印象があります。それともう一つ、今後も続けてほしいのが、学生に対する事務室の方の手厚いケアです。GSには多様なバックグラウンドの学生がいるわけで、中にはきちんと情報を得ることができなかったり、受け取り方が日本とは少し異なる学生もいます。こういった学生にリマインドメールを送るなど、事務室の方の丁寧なケアは、すごく重要だと感じています。このノウハウが、人が変わっても受け継がれているのはすばらしいことです。

  4. 雨河
    雨河

    スミス先生から配信型の授業の話がありましたが、オープンゼミナール大会(※2)に参加するプロジェクトを機に、ゼミの学生たちは国内外のNGO・NPOにオンラインでインタビューを行いました。インタビューのためにメールをたくさん送っても返事がほとんど返ってこないことや、返事をくれる相手への感謝の気持ちなど、学生たちはこの体験を通じて多くのことを学んだと思います。このときに得た経験を生かして、自分の卒業研究でもインタビューをやりたいという学生が出てきました。オープンゼミナールや卒業研究のテーマ次第なので、毎年できるわけではないのですが、オンラインでのインタビューは今後も便利なツールとして学生たちが使っていってくれたらいいなと思いました。

  5. 河村
    河村

    皆さんのお話を聞いて、いままで話題には出ていないことなのですが、GSの今後を考えるとき、GSとIRの関わりがもっと増えるといいなと思っています。2回生全員が受講するGSG(グローバル・シミュレーション・ゲーミング ※3)は、IRとGSが混ざる授業ではあるのですが、こうした経験がもう少しあっていいのかな、と。IRの学生はほとんどのGSの授業を受講することができますし、課外活動でも一歩踏み出せば同じ学部で学ぶGSの留学生ともすぐに友達になれる環境がありますが、まだまだ一部の学生しかチャレンジしていないようですので、少し物足りなく思っています。同様に、GSの学生、とくに留学生にとってIRの学生との交流が増えることで、日本での経験が豊富になると思います。雨河先生がおっしゃったオープンゼミナールへのGSのゼミの参加が増えてきているように、今後さらにGSの発信の場が広がっていくと思います。学部にとってGSの重要性はこれまで以上に高まっていくでしょうし、それを学部全体で推進していければいいなと思っています。

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※2 オープンゼミナール:国際関係学部が行うポスタープレゼンテーション大会。ゼミに所属する学生が、日々の研究成果を学内外に発表する。

※3 GSG(グローバル・シミュレーション・ゲーミング): GSとIRの学生たちが、実際の国際課題を解決するために模擬的に国際交渉を行う授業。

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