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RBS通信

2024.10.24

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【報告】海外フィールドワーク 鳥貴族のシンガポール進出戦略を探る

プレゼンテーション終了後、大倉社長をはじめとする
エターナルホスピタリティグループの経営陣とともに
記念撮影。

経営陣への提案

上旬、RBS(立命館大学ビジネススクール)経営管理専攻の学生9名が、日本の人気焼き鳥居酒屋チェーン『鳥貴族』のシンガポール市場進出をテーマにフィールドワークを行い、その成果を株式会社エターナルホスピタリティグループの大倉忠司代表取締役社長CEOをはじめとする経営陣に発表しました。

プレゼンテーションでは、シンガポール市場の詳細な分析に基づいた提案が行われました。70枚にわたるスライドには、データを基にした市場分析や消費者調査、競合店との比較分析に加え、具体的な戦略提案が盛り込まれていました。学生たちは、シンガポールで近年高まる『本物の』焼き鳥と居酒屋体験へのニーズに着目し、鳥貴族の顧客体験を再現する戦略を提示しました。鶏肉の調達ルートの確保から品質管理、従業員教育まで網羅し、均一価格の実現に向けた具体的な価格設定も提案。さらに、詳細な立地情報を基に、ターゲット顧客層を段階的に拡大させていく出店戦略を示しました。

大倉社長は「非常に内容が濃く、予想以上に学びが多かった」と学生たちのプレゼンテーションに驚きを示されました。また、海外進出を担当する清宮俊之取締役COOからも、「出店戦略が現実的で、ペルソナ設定によるイメージづくりの重要性を再認識した」と高く評価されました。学生たちは、果敢な挑戦が鳥貴族の海外進出に役立つ成果につながったことを実感し、深い達成感を得ました。

プレゼンテーションに挑む学生たち
プレゼン後、大倉社長(左)と清宮取締役(右)から
講評を受ける

「海外フィールドワーク」の目的

今回のフィールドワークは、異文化理解を基盤にした問題発見・解決能力を養うことを目的に、マーケティングを専門とする小菅竜介教授の担当のもと、エターナルホスピタリティグループと連携して実施されました。経営管理専攻のマネジメントプログラムの社会人学生5名とキャリア形成プログラムのストレートマスター(主に学部卒業後すぐに進学した学生)4名が参加しました。

授業の進行は、事前にデスクリサーチを通じて仮説を立て、現地調査でその仮説を検証し、最終的にエターナルホスピタリティグループの経営陣に提案を行うという流れでした。事前調査では、政府統計やSNSの分析とともに、シンガポール在住経験のある日本人へのインタビューを行い、より具体的な仮説を練り上げました。

現地調査での試行錯誤

調査の初日、シンガポールの街中でのインタビューは予想以上に苦戦しました。学生たちは通行人に声をかけるも、立ち止まってもらうことさえ難しく、想定していたデータ収集が進まない状況でした。しかし、チーム全員でその場で戦略を練り直し、座っている二人組や休憩中の人々にターゲットを絞ることで、徐々にインタビューが進むようになりました。言語の壁や文化の違いに戸惑いながらも、少しずつコミュニケーションのコツをつかみ、消費者から得られる情報の質が向上していきました。

さらに、夜遅くまで現地の焼き鳥店やホーカー(シンガポールの屋台街)を訪問し、試食を通じて消費者の嗜好や競合店の雰囲気を把握し、そのデータを体系的に分析しました。限られた時間と予算の中、毎晩異なる店舗を回り、シンガポール外食市場の多様性を深く理解していきました。

現地の消費者に直接インタビューを行う様子
現地のホーカーを調査する様子

企業訪問で得た学び

今回のフィールドワークには、複数の企業訪問が用意されていました。サントリーグローバルスピリッツでは、食事と飲酒を分ける傾向のあるシンガポールの文化に、鳥貴族の居酒屋スタイルをどう適応させるかが課題として浮かび上がりました。

また、コワーキングスペース「One & Co」では、現地で活躍するプロフェッショナルたちから、鶏肉の調達や品質管理、原価構造、不動産契約や立地選定といった具体的な論点についてアドバイスを受けました。特に、質の高い鶏肉の供給を安定的に確保しつつ顧客視点で価格設定を行うことが、鳥貴族のシンガポール進出にとって大きな鍵であることを学びました。

さらに、サンテック・シンガポール国際会議展示場では、多民族国家においてハラル対応を行うことの意味や具体的方法について学びました。

サントリーグローバルスピリッツで現地の飲酒文化を学ぶ
サンテック・シンガポール国際会議展示場で
ハラル対応を学ぶ

消費者との対話にもとづく洞察

企業訪問での学びを踏まえ、学生たちは現地の消費者との直接対話を通して、より深い理解を得ることに努めました。当初、異文化にいかに適応すべきかを意識していた学生たちですが、シンガポールの消費者が求めているのは「本物の」文化的体験であることに気づきます。特に、あるメンバーが行ったマレーシア人消費者との対話から、シンガポールでも日本の居酒屋体験が受け入れられつつあることを確信しました。この発見から、「異文化だからこそ本物が受け入れられる」という洞察が得られ、提案の核となりました。

実践的な学びと今後のキャリアへの影響

このフィールドワークは、異文化環境での実践的経験を通じて、学生たちが成長する絶好の機会となりました。高いプレッシャーの中でも、各自が自身の強みを発揮し、チーム全体で大きな成果を収めました。特筆すべきは、実務経験豊富な社会人学生に劣らず、ストレートマスターの学生もリーダーシップを発揮し、鋭い洞察力でチームに大きく貢献した点です。教室では得られない経験によって、RBSでの学びがさらに深まりました。

この経験を通じて、学生たちは将来のキャリアに対する視野を広げ、国境を越えたビジネス展開や国際的なキャリアに対する意欲を強めました。現地の文化やビジネスに直接触れ、多様な人々との交流から刺激を得たことで、自らの前に想像を超える挑戦の場が広がっていることを実感したのです。

参加学生の学びと気づき

最後に、参加した学生たちの声を紹介します。

キャリア形成プログラム

LIU Ziyang

鳥貴族でのアルバイト経験とシンガポールでの現地調査を通じ、理論と実践が結びつき、視野が大きく広がりました。熱意を持ってチームで議論を重ねたことで、予想を超える豊かな提案内容を生み出せたことは、大きな自信につながりました。

高橋 周

海外での実地調査や大倉社長の前での発表という経験は、人生経験を豊かにしてくれました。今回、チームリーダーとして進行管理や調整を学んだことを生かし、今後、リーダーシップをさらに磨いていきたいと思います。

森川 雄太

データの解釈だけでなく、その背後にある消費者の文脈を自らの足で確認し、理解する重要性を学びました。これによって、データをより深く活用する力が身についたと感じています。

赤塚 一輝

シンガポールの文化に触れることで、日本で生まれ育った自身の『当たり前』に気づき、理解を深めることができました。この知見は、今後、海外とやりとりをするうえで重要な役割を果たすと思います。

マネジメントプログラム

辻井 宣行

海外、特にアジア市場への進出を目指している自分にとって、このフィールドワークは大変貴重な学びの機会でした。実際に現地に足を運び感じ取ることで、視座が格段に高まりました。

三浦 朝子

一次情報収集の能力を高め、予期せぬ状況にも柔軟に対応する力を養うことができました。インタビューの工夫を重ねながら活動を進める中で、他のメンバーの判断力や行動力からも多くを学びました。

高橋 賢

事前調査した時と現地調査した時の肌感の違いに驚きました。徐々に情報がつながり全体像が見え、現実的なマーケティング戦略を構築できたことは今後の自社ビジネスにも活きるはずです。

今岡 慎太郎

現地調査や企業訪問、他の受講生との対話は貴重な経験でした。多様な価値観に触れることで自分の強みと弱みを理解し、キャリアの選択肢も大きく広がったと感じます。

戸軽 勇気

マーケティングには苦手意識がありましたが、現地でのインタビューを通じて、自然な会話から消費者理解を深めることができ、自信につながりました。他のメンバーとの議論からも多くを学びました。

エターナルホスピタリティグループ本社での集合写真