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RBS通信

2025.12.24

記事

働きながら、全国から。「私らしい学び」のデザイン~観光マネジメント専攻(TMP)在学生インタビュー~

「今の仕事を続けながら、本当に大学院で学べるのだろうか」
「地方在住なので、通学の負担が大きいのではないか」

社会人が大学院進学を考えるとき、多くの方がこうした不安を抱きます。 しかしながら、立命館大学ビジネススクール(RBS)観光マネジメント専攻 観光事業マネジメントプログラム(TMP)には、場所や働き方の制約を前提にしながら、自分なりのスタイルで学びを続ける院生が数多く在籍しています。 本企画では、教員の石崎教授をナビゲーターに、

・地方在住でオンライン受講中心の笠原さん
・遠距離通勤+オンライン・対面を組み合わせたハイブリッド受講の長谷川さん
・近距離通学で対面受講中心の塚越さん

という受講スタイルが異なる3名の院生にお話を聞いてみました。 院生それぞれの「時間割」や「1日のスケジュール」を手がかりに、仕事と学びを両立する具体的な工夫を見ていきます。

ナビゲーター

石崎 祥之教授(立命館大学ビジネススクール 観光マネジメント専攻専攻長)

キャリアを中断せずに、観光マネジメントを深める

企業の人事担当者の方からは、
「有望な社員に大学院で学んでほしいが、転勤や業務を考えると送り出しにくい」
というご相談をいただくことがあります。

RBSの観光マネジメント専攻では、対面とオンラインを組み合わせた「ハイフレックス」形式を導入しており、必ずしも転勤や休職を前提とした通学は必要ありません。
今回ご紹介する3名の院生も、阿蘇(九州)、関東圏 、関西圏と、それぞれ異なる場所から講義に参加しています。
「今の仕事や生活を大きく変えずに、どのように学びを組み込んでいるか」。その具体例が、これから大学院での学びを検討される皆様の参考になればと思います。

今回登場いただく3名のプロフィールと、主な受講スタイルは次の通りです。

3名のプロフィールと学び方

笠原 綾さん(M1(1回生))

・居住地/勤務地:熊本県阿蘇市在住・勤務(環境省 自然系職員(レンジャー))
・主な受講スタイル:オンライン中心+定期的に対面参加
・履修の目安:1クォーターあたり週3科目程度を履修

長谷川 功さん(M1(1回生))

・居住地/勤務地:横浜在住、水戸勤務(鉄道グループ会社・観光・宿泊・MICE関連)
・主な受講スタイル:オンラインと対面のハイブリッド
・履修の目安:1クォーターあたり週3〜4科目を履修

塚越 美由紀さん(M2(2回生))

・居住地/勤務地:関西圏在住・勤務(旅行会社 商品企画等)
・主な受講スタイル:対面中心+必要に応じてオンライン
・履修の目安:M1では週4科目、M2では週2科目に調整

3名ともフルタイムで働きながら、平日夜や週末を中心にTMPで学んでいます。 共通しているのは、「自分の働き方や生活リズムに合わせて、オンラインと対面の比率や科目数を調整している」という点です。

トピック

1.なぜ今、TMP(観光事業マネジメントプログラム)で学ぶのか

まずは「科目等履修」で試してみる、あるいは正規生として一気に飛び込む

TMPで学ぶ3名の入学経緯は、「科目等履修生としてスタート」したケースと、「最初から正規生として入学」したケースに分かれていました。
笠原さんと長谷川さんは、科目等履修生として、入学前に少ない科目数からスタートしています。
科目等履修生制度を利用した理由としては、

「仕事と両立できるか、自分にとっての負担感を確かめたかった」
「授業の雰囲気や、オンライン・対面の授業運営を実際に見てから決めたかった」

といった声が挙がりました。
皆さんがお仕事をしている中で、TMPで学ぼうと考えたきっかけは何でしょうか。

笠原さんは、環境保全と観光の両立に関心を持ち、国立公園の管理等を行う環境省職員としての経験に観光の視点を加えたいと考えていました。

「まずは1科目受けてみて、『このペースなら続けられそうだな』と感じられたので、本格的に入学することを決めました。」

長谷川さんは、学部から観光を専攻し、卒業後20年以上観光業界で働いてきました。

「20年前に学んだことを、今の観光トレンドに合わせてアップデートしたいと思いました。久しぶりの勉強なので、最初は1科目だけ様子を見るくらいが自分にはちょうどよかったです。」

一方で、塚越さんは、旅行会社で旅行商品の企画を長年担当してきました。

「現場で培った 『勘』に頼ってきた部分を、理論で整理し直したいという思いがありました。私の場合は、早く体系的に学びたい気持ちが強かったので、科目等履修を経ずに最初から正規生として入学しました。」

このように、まずは科目等履修で小さく試してみる方法もあれば、目的が明確な場合には最初から正規生として飛び込む選択肢もあります。仕事との両立に不安がある方にとって、科目等履修は現実的な一歩になっているようです。

2.仕事と学びをどのように両立しているのか

科目数の目安は「週3科目」――取り過ぎには要注意

働きながら学ぶうえで、多くの院生が悩むのが「週に何科目とるか」という問題です。3名の経験から見えてきた現実的なラインは、週3科目前後でした。

◆ 笠原さんの場合
笠原さんは、自身の経験をこう振り返ります。

「最初は意気込んで週4科目取ろうとしたのですが、仕事との両立を考えると、一つひとつの学びが薄くなってしまうと感じました。予習・復習の時間をしっかり確保するためにも、私の場合は週3科目が適正だと判断しました。」

あるクォーターでは、次のような科目構成で履修していました。

笠原さんの履修例(あるクォーター・週3科目)
曜日・時間帯 科目名 受講形態
月曜 夜 リーダーシップ オンライン
土曜 午前 企業財務 オンライン
土曜 午後 ホテル・リゾート企業のマネジメント オンライン

平日は仕事を優先しつつ夜に1科目だけ、週末に2科目をまとめて受講することで、無理なく学びの時間を確保していることが分かります。

◆ 塚越さんの場合
一方、最初から正規入学でスタートした塚越さんは、M1の春学期にあえて週4科目に挑戦しました。

「私も週4科目履修した時は、正直いっぱいいっぱいで、授業内容の消化が追いつかないと感じることもありました。ただ、私の場合は『1年目に頑張って単位を取り、2年目は研究に集中する』という戦略だったので、大変でしたが何とか乗り切りました。」

1年目の春学期には、次のような科目を履修していました。

塚越さんの履修例(あるクォーター・週4科目)
曜日・時間帯 科目名 受講形態
水曜 夜 サービスイノベーション 対面
木曜 夜 ビジネスエコノミクス 対面
日曜 午前 マーケティング 対面
日曜 午後 アカウンティング 対面

コア科目を集中的に履修したうえで、M2では科目数を週2科目程度に絞り、リサーチプロジェクト*に充てる時間を増やしていくという「メリハリのある計画」を立てている点が特徴です。(*演習科目「リサーチプロジェクト」では、各自の研究課題やテーマについて調査・研究を行い、最終的にレポートにまとめます)

◆ 長谷川さんの場合
長谷川さんは、履修ペースを決める際に「2年間無理なく続けられるかどうか」を最も重要視しています。

「学びたい科目はたくさんありますが、『このペースなら2年間続けられる』というラインを意識するようにしています。」

あるクォーターでは、次のような科目構成で履修していました。

長谷川さんの履修例(あるクォーター・週4科目※プレゼミは任意参加)
曜日・時間帯 科目名 受講形態
月曜 夜 リーダーシップ オンライン
水曜 夜 MICE企業戦略 オンライン
日曜 午前 観光産業における情報・デジタル技術 オンライン(時々対面)
日曜 午後 交通ビジネス オンライン(時々対面)
日曜 夜(隔週など) 石崎ゼミ(プレゼミ) オンライン(時々対面)

オンラインを軸にしながら、ゲスト講師が登壇する回やプレゼンテーションの回に合わせてキャンパスに足を運ぶことで、遠距離通勤でも過度な負担をかけずに週3〜4科目を維持しています。

以上3名の履修経験から、自分なりの「上限」を見極めつつ、学年や仕事の繁忙に応じて科目数を調整していくことが、働きながら無理なく学び続けるためのポイントと言えます。とくに、「まずは週3科目程度からスタートし、自分に合ったペースを探る」という考え方は、履修計画を立てる際の一つの現実的な目安になります。

クロストーク風景
フィールドワークの様子(長谷川さん)

3.三者三様の1日のスケジュール

ここからは、平日・週末の「1日の時間の使い方」に注目します。
3名に作成してもらった「ある1日のスケジュール」をベースに、特徴的な工夫を紹介します。

◆ 地方在住 × オンライン中心

朝型+近距離通勤を活かした学び(笠原さん)
笠原さんは、阿蘇で環境省の自然系職員として働いています。自家用車通勤(片道15分)のため、通勤中に本を読むことはできません。そこで、出勤前の朝時間を学習のゴールデンタイムにしています。

「夜はどうしても残業が入ったり、体力的に厳しい日もあるので、朝に30〜60分だけでも読書や課題の時間を確保するようにしています。」

土曜日に授業をまとめて入れ、平日は可能な時期だけ夜にオンライン授業へ参加。地方在住で移動時間がほとんどない利点を活かしつつ、無理のない朝型のスタイルを確立しています。
履修科目には観光政策や地域マネジメントに関する科目も多く、自然保護と観光振興の両立をテーマに学びを深めています。

(笠原さんの1日のスケジュール)

クロストーク風景
クロストーク風景
◆ 遠距離通勤 × ハイブリッド

通勤時間をインプットに変える(長谷川さん)
水戸勤務・横浜在住で、片道約2時間の通勤がある長谷川さんは、勤務形態によって学習モードを切り替えています。

・テレワークの日:18時に業務終了後、そのまま自宅からオンライン授業へ
・出社の日:行き帰りの電車・新幹線の時間を、読書や授業の復習にあてる

「長距離通勤は大変ですが、『ここは必ず本が読める時間』と決めることで、かなりのインプットができます。スマホではなく、本をカバンに入れておくのが自分なりのルールです。」

週末に対面授業があるときは、大阪に前泊し、授業前後にクラスメイトと情報交換をすることも楽しみの一つです。

「普段オンラインで話している人と実際に会うと、関係性が一気に深まります。せっかく大阪まで行くので、『学びの旅』という感覚も大事にしています。」

履修科目としては、MICE戦略や観光政策論など、現在の業務と関係の深い科目を選び、実務での企画や提案に活かしています。

(長谷川さんの1日のスケジュール:出社日/テレワーク日)

クロストーク風景
クロストーク風景
◆ 近距離通学 × 対面重視

朝型+キャンパス・自習室の活用(塚越さん)
関西圏在住でキャンパスへの通学がしやすい塚越さんは、対面授業を基本としつつ、朝時間と週末を使って学習時間を確保しています。

「平日は朝少し早く起きて、出勤前に課題や文献を読む時間を取っています。夜は授業に集中したいので、細かい作業は朝に回すようにしています。」

授業でのプレゼンテーション前など負荷の高い時期には、週末に図書館や自習室を活用します。

「毎週ずっと勉強ではなくて、『この週末はしっかり集中、次の週末は家族との時間を優先』といったメリハリをつけるようにしています。」

塚越さんは、旅行会社での旅行商品の企画経験を踏まえ、マーケティングや消費者行動の理論をリサーチプロジェクトで深めており、学びと実務が行き来する形で学修を進めています。

(塚越さんの1日のスケジュール)

クロストーク風景
クロストーク風景

4.全国から学ぶハイフレックスの実際

TMPの多くの授業は、教室での対面参加とオンライン参加を同時に行うハイフレックス形式で実施されています。3名とも、この形式をそれぞれの形で活用しています。

◆ オンラインで学び、対面でつながる(笠原さん)

笠原さんは、オンライン中心でありながら、「7回中*1回は必ず対面で参加する」というマイルールを実践しています。(*1科目200分×7回)

「講義の内容自体はオンラインでもしっかり理解できます。ただ、授業が始まる前の雑談や、終わったあとに先生に少し質問する時間は、やはり対面の方が取りやすいと感じます。そこで、『各科目につき1回は対面で受講する』と自分で決めました。」

オンラインでインプットの効率を高めつつ、対面で関係性とモチベーションを底上げする。この組み合わせが、地方在住で学び続けるうえでのポイントになっているようです。

◆ 内容と仕事の状況に応じて「使い分ける」(長谷川さん)

長谷川さんは、オンラインと対面を使い分けています。

「日々の講義やディスカッションはオンラインが中心です。一方で、ゲスト講師が来る回や、重要なプレゼンの回は、できるだけ対面で参加するようにしています。」

仕事の繁忙期はオンライン参加を増やし、余裕がある時期はキャンパスに足を運ぶなど、「その時々の業務状況に合わせて最適な組み合わせを選べる」点が、ハイフレックスのメリットだと感じています。

◆ 対面派でも、オンラインがあるから続けられる(塚越さん)

塚越さんは、基本的には対面参加を重視しています。

「対面授業だと、先生やクラスメイトの表情や反応が分かるので、議論にも入りやすいです。休み時間の何気ない会話から、新しいアイデアをもらえることも多いですね。」

一方で、体調がすぐれない日や在宅勤務の日などには、無理をせずオンラインに切り替えています。

「以前だったら、『今日は行けないから欠席』で終わってしまっていたと思います。今は、オンラインがあるおかげで、『無理をしなくても、学びの流れにはついていける』という安心感があります。」

教員側もオンライン参加者に積極的に発言を促すなど、授業の運営面での工夫が進んでいます。「教室にいる学生だけが議論を回す」のではなく、「オンラインも含めて一緒に議論する」授業設計が増えてきている点は、3名とも共通して指摘していました。

クロストーク風景
対面受講の様子(塚越さん)

5.学びは仕事にどのように活きているのか

TMPでの学びが現在の仕事にどのようにつながっているのかについても、3名にうかがいました。 旅行会社で働く塚越さんは、マーケティングや消費者行動の理論を学ぶことで、これまでの経験を言語化できるようになったと感じています。

「なぜこの商品が売れたのか、なぜうまくいかなかったのかを、仮説を立てて説明できるようになったのは大きな変化です。」

観光業界で長く働いてきた長谷川さんは、MICE戦略や観光政策の科目から得た知見を、社内での企画や新規事業の検討に活かしています。

「学部時代の知識を、今の状況に合わせてアップデートしている感覚があります。社内で話をするときに、理論や他地域の事例を踏まえて提案できるようになりました。」

国立公園の管理をしている笠原さんは、観光を通じて地域に「稼ぐ仕組み」をつくる視点を得たといいます。

「自然を守るだけでなく、観光をうまく組み合わせることで、地域経済にも貢献できる可能性を感じています。TMPの学びは翌日からすぐに業務に活かせることも少なくありません。学びを今後のプロジェクトにも反映していきたいです。」

いずれのケースでも、学びが「仕事とは別の活動」ではなく、日々の業務や将来のキャリアと地続きのものとして位置づけられていることが分かります。

クロストーク風景
オンライン授業の様子

【Column】まずは「科目等履修」から始めてみる

TMPでの学びに関心はあるものの、

「仕事と本当に両立できるのか不安」
「いきなり2年間の入学を決めるのはハードルが高い」

と感じている方も多いのではないでしょうか。
そのような方に活用していただきたいのが、科目等履修生制度です。 科目等履修生制度では、「正規入学前」に1科目から受講することができます。 授業の雰囲気や、オンライン・対面の運営、自分の生活リズムとの相性を実際に試したうえで、本格的な進学を検討することができます。 今回ご紹介した笠原さんや長谷川さんも、最初は科目等履修生として受講し、「これなら仕事と両立できそうだ」「もっと学びを続けたい」と感じてから、正規入学に進んでいます。 科目等履修で修得した単位については、一定の条件のもとで、正規入学後に単位として認定されます(詳細は募集要項をご確認ください)。 「興味はあるが、いきなり2年間コミットするのは不安」という方は、まずは科目等履修から一歩を踏み出してみるのも一つの方法です。

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専攻長からのメッセージ

あなたに合った「学びの形」を、一緒に考えます

今回ご紹介した3名は、居住地も業種も働き方も異なりますが、共通しているのは「今の仕事を大切にしながら、自分なりのペースで学びを続けている」ことです。
TMPのハイフレックス環境は、「オンラインがあるからこそ学べる人」と「対面でこそ力を発揮できる人」のどちらも受け入れる設計になっています。どのスタイルが正解ということではなく、ご自身のライフステージやキャリアに合わせて、最適な学び方を一緒にデザインしていくことを大切にしています。
「業務が忙しいから」「地方在住だから」と、学び直しをあきらめかけている方も、まずは科目等履修生として一歩を踏み出してみてください。私たちは、皆様が「働きながら、全国から」学ぶチャレンジを、全力でサポートしていきます。

(観光マネジメント専攻 専攻長 石崎 祥之教授)

取材日: