分析対象も決まり、いざ録画である。録画はNHKと民放5局(日本テレビ、フジテレビ、テレビ東京、テレビ朝日、TBS)とテレビ和歌山の午前8時から翌午前1時までの17時間行った。録画するために、1局あたり3人必要で、ゼミ生全員が分担して録画した。ひとりでも失敗したらこの分析はできなくなってしまう。それだけ、録画は重要なことなのである。
カレー事件初公判報道を分析するために、ゼミを4つの班に分けた。番組全体の構成や番組の中でのカレー事件報道の構成を分析する構成班、カレー事件報道をテロップや「音」など技法から分析する技法班、人物の描かれ方から分析する人物班、番組のスポンサーCMを分析するCM班である。各班ともそれぞれのテーマに沿って分析していくのだが、まず、映像を文字化していくことから分析は始まる。感覚的に分析するのではなく、客観的に分析する必要があるからである。映像や、音声、テロップなど、番組やCMを構成している要素を、ビデオテープを繰り返し見ながら分析シートに書き取るのである。一つのニュースがどれだけの長さで報道されているのかを把握するために、ストップウォッチやビデオカウンターで時間もチェックした。秒単位の細かい作業だけに、これが一番大変であった。
最初は、ゼミ生の間でもやり方が統一されておらず、やり直すこともしばしばあった。分析シートへの書き出しが終わったら、今度はそれを図表化していく作業が待っていた。得られたデータを効率よく分析するために、視覚的に判断できる図表は不可欠だ。それでも、パソコンに長けた人ばかりではない。すべての図表をパソコンでつくることができず、帯グラフの外枠や文字だけパソコンでつくり、それを切り貼りする地道な作業を繰り返した班もあった。 |